ふしぎ駄菓子屋 銭天堂10
– 2018/10/15 廣嶋 玲子 (著), jyajya (イラスト)
「銭天堂10 作:廣嶋玲子 絵:jyajya」を読んでみた。
銭天堂2の次、10。短編なので飛ばしても読める。
2と同じく『若い肌』が気になってしまうけど、回数は減っていた。2と違って『迫力ある女性』の表現が多いような気がした。
印象に残ったものから感想。
『コントロールケーキ』だけは、家族の対応が酷いように感じてしまった。家族だから許される……のかもしれないけど、娘まで『痩せて綺麗になりたい』と思ってしまうのは、やはり家族内の対応のせいもあるのではと思う。この辺り、何もなしに『娘が痩せようとするのをやめて良かった』と書かれているのがモヤる。
::あらすじ::母親が銭天堂で食欲がコントロールできる『コントロールケーキ』を買う。どんどん痩せていく母を見て、娘も真似する。それを止めようとして、母親はコントロールケーキの力で娘の食欲を元に戻させる。その話を娘に話し、銭天堂を二人で探すが見つからなかった。しかし、筋肉がついて痩せる事が出来た。
筋肉は重いので痩せはするけど、体重はそれほど減らない。体のラインは綺麗になるけど、体重の数字だけを見てると変わらない。なので、運動で痩せる=体重を減らすを目的にしてると思った通りに行かないかも。健康的になるという利点はある。
『コントロールケーキ』のラストも『健康的にスマートになったからだ。』と書いてあるだけで、体重が減ったとは書いてない。よく読んだら、体重についてはどこにも書いてなかった。……配慮?
『天晴れレモン』
晴れになるレモンの形のキャンディ。雨女で悩んでいる女性が買っていく。友人の結婚式を晴れにしたくて使うが、雨になってしまう。雨になった事で落ち込んでしまうが、友人は彼のマザコンの本性が分かってよかったと主人公を慰める。
雨も悪くないという話。突然のハプニングは人の本性をさらけ出す。
レモンキャンディが欲しくなった。
『家カエル』
ぼぅっと歩いてしまって迷子になる主人公は、家カエルというキーホルダーを買う。遠足で意地悪な子とわざとはぐれて、困らせようとする。家カエルで帰る事が出来ると思っていたが、雨が降り出し山の中で迷ってしまう。一緒にいた子が意外としっかりと準備をしていてくれたので、雨宿りをすることができる。やがて意地悪な子とも合流し、雨が止んで山を下りる。
雨が人の意外な一面を見せてくれる話と言う意味では天晴れレモンと同じ。
天晴れレモンの対になりそうと思った。
『聞き耳グミ』
クラスの女子のひそひそ話が気になる男の子は銭天堂で聞き耳グミを買う。女子たちが話していたのは、自分を好きだという事を知るが、一方は自分を嫌っていることも知る。嫌っている女子に仕返しをして、味を占めた主人公はクラス中の秘密を暴露して、クラスの空気を悪くしていく。やがて、それに気が付いたクラスメイト達は男の子をのけ者にする。気を付けなくてはいけなかったと気が付いた男の子だが、後の祭りだった。自分を好きだった女の子も他の子と付き合ったと聞くが、聞き耳グミの効果が消えてしまう。
人の話って、気になるよねぇ……すごく分かる。暴露はともかく、子どもの頃の小さな気になる事を上手く拾って物語が作られてるような気がしてしまった。
大人になると下手に聞き耳を立てて不安を増やす方が面倒になる。
『アドベン茶~』『やりなおしおこし』
2作続きものの作品。お店に居候していた男の子が、賞味期限切れの商品『アドベン茶~』を他の子供に渡してしまう。
アドベン茶~で怖い世界に行ってしまった男の子。やり直すことを決心した事で、銭天堂のおかみが『やりなおしおこし』を持って現れる。どこからやり直すべきかと考えていたが、母親が後悔していた時間まで戻る事にする。母親は自分のための商品ではなく、親友のための商品を選ぶ。
この10巻はずっと『お店に居候している男の子、健太』が出てくる。最後に商品を買って『なかった事』になるのだけど……そうするとこの10巻のお客様たちはどうなるのだろう。健太に出会ってなかったことになるのか。そもそも、銭天堂に来ていない事になるのか。
時間を戻す話はパラドックスが出来てしまう。
そして、よく考えれば健太はある意味では虐待された子供で『酷い親』だな……という身も蓋もない話にもなるのだけど。うーん。母親が病む理由(自分一人だけが幸せになってしまった後悔)がちょと無理やりすぎる感じがする。父親もそれにうんざりして出ていくって……子供連れて行けと思ってしまうのだけど。病んでる女の元に子供を置いていく神経どうかしてる。
細かい事は考えてはいけない。考えてはいけない。
児童書なのだからそこを突っ込んだら、話が成り立たないというのも分かるけど……モヤモヤはする。