伝記・人間にまなぼう 3 単行本 – 1992/4/1 木暮 正夫 (著), 岩淵 慶造 (イラスト)
「伝記 人間にまなぼう3『怪談』をかいたイギリス人 小泉八雲 文:木暮正夫 絵:岩淵慶造」を読んでみた。
小泉八雲の人生をわかりやすく書いてある。児童書なので文字が大きく、言葉の説明もたくさん入っていて読みやすかった。
タイトルは『イギリス人』だけど、父親がイギリス人で母親がギリシャ人。
父親が軍医でイギリスがギリシャを支配するためにやってきて、母親と出会った。けれど、母親側の親族は快く思っていないので、大反対された。二人はその地域から離れた場所で結婚して子供を成したが、父親は軍の命令でイギリスに戻ってしまう。
やがて父親はまた別の場所へ行くことになり、母親だけが父親の実家で暮らすことになるが、異国に馴染めず、ラフカディオを置いてギリシャに帰ってしまう。ラフカディオは父親のおばであるサラ婦人に引き取られる。
父親はさっさと再婚して、母親もラフカディオに連絡を取らないまま再婚していた。ラフカディオはサラ婦人に愛されていたが、厳しくしつけられてもいて、寂しさを抱えていた。
さらにこの後、サラ婦人が騙されて財産をなくし、ラフカディオは学校に行けなくなり、アメリカに行けと言われたから、行ってみたら頼れる人もいなく無碍に扱われた……と散々な目にあう。一時は家もない状態だったが、ワトキンに出会い、住処を得て仕事にもありつけるようになった。
という話だった。この後は、出版社の仕事を得て、日本に来て、怪談をまとめる。
この辺りも色々あるけれど、家なし状態には戻らないのでそれなりに上手くいっていると言っていいのだと思う。
こういう支配しに来た人間が現地の女とって色々ありそうだし、子供は『ハーフ(ダブル)』なわけで、それだけでも身の置き所ってなさそうだなと思う。
子ども時代のエピソードが失明した事とサラ婦人が破産してしまった事ぐらいなのも、思い出したくもないものが多いのかな。
故郷と呼べるようなものがもてないなら、『全く見知らぬ土地』の方が中途半端な偏見もないからマシだったろうし、その『見知らぬ土地』として日本にやって来たんだろうなと。……でも、行き当たりばったりでやって来たと書いてあったから、チャレンジャーと思った。ただ失うものがないから出来た事でもあるんだろうな。身寄りがないというのは孤独だけど、逆に言えば自分のやりたいように何でもできてしまう。良くも悪くも。
だから逆に、妻子を持った後は冒険みたいなことはしてない。堅実。さらには妻子のために日本国籍すらとっているのすごいなと思う。これも身寄りがなかったから出来た事なのかもしれないけど。親がいたら、国籍を捨てるのはできないだろうし。こういうのって親戚一同が一番うるさいんだよね。
なるほどなと思うと同時に、たぶん子供時代は地獄のような日々だったのだろうなと想像してしまう。書いてないけど、書いてないことが『語りたいと思えるものがなかった』のかなと。
でも……なんで日本?とは思う。他の地域でもよかったような。出会ってしまったのがたまたま『日本』だっただけで、他の地域に出会っていたら、そっちに行ってそうなのかも。
それもまた運命と言えば運命なのかな。
この時代には少し珍しい男性な気もする。国籍まで捨てる男性が、他にいたのだろうか。
小泉八雲の事が読みやすくて、わかりやすく書いてある。児童書ありがたい。
ごちそうさまでした。