新聞に載ってたので、今年も読んでみたのです。
感想です。
一つ目「ブルームーン」
ゲイバーで働く伯父さんと主人公の交流のお話し。主人公が成長して伯父さんとの関係も少しずつ変わって行く。
淡々としていたけど、何となく『誰もが感じる家族への反発』とか、『ちょっとした歪み』は好き。
ただ……オチが……。
私の好みの問題だろうけれども、かなりガッカリしてしまった。
でもたぶん、現実ってこんなもので『小さな赤ちゃんが家族の心を繋ぐ物語』で〆られていた。
女が子供を産めば、物語は閉まるのね。
二つ目「庭」
初老の女性のお話。健康を損ないながらも、なんだか気がつけば『生き物に囲まれた生活』になっている。
淡々としているけれども、『生き物』との出会い方とか、そこにまつわるエピソードとかが面白いなと思った。
季節感もあって、最後まで楽しく読めた。
三つ目「ヒメウツギ」
戦時中に、死体回収をする人のお話。主人公も自分の子供を亡くしている。
正直、共感点が少なくて、死体回収もあまりピンと来ないので、最初は『よく分かんない話だな』と思いながら読んでいた。
けど、最後の『妻の涙』で、なるほどこの物語は「喪失感」の物語だったんだと判った。
子供を亡くして泣かなかった妻が、最後の一人となった子供が川に落ちて死にそうになった事と、助けようとした夫(主人公)が死にそうになった事で「死」の実感がわいて、「もう、子供たちが居ない」と理解した。
というラストのシーンで物語が理解できた。けど、逆にいうと、ラストだけしかよく判らなかった。
なので、ラストに辿り着くまでが、ちょっと辛かった。何を読んでるのか、判らなくなって、何度読み返したか。
3つのうちでは「庭」が一番好き。