はたらく 単行本 – 2017/10/17 長倉 洋海 (著)
絵本「はたらく 著:長倉洋海」を読んでみた。
写真と文字の本。
『はたらくのは、食べるためだけじゃない……』と思うようになったという話から始まる。
言いたいことはわかる。わかるけれど、資本主義の現代においては「働く=仕事」というのは、「食べるため=金がないと死ぬ」からでしかない。そして、「家族のために働く喜び」も搾取する側にとっては都合がいい。
だから個人的には、大人が能動的にそう思うことは構わないけど、大人が子供に「働くのは食べるためだけではなくて、喜びのため」と言ってしまうのは危険だと思う。
その危険さも理解した上でそれでも『自分はそう思う』のは構わない。
実際に『喜びのために働いている』というのも間違いではないから。
あとは資本主義に飲み込まれている『労働の働く』と『生きるための行動の働く』をごちゃ混ぜに語るのもよくないんじゃないかな。
最初は雪山での水汲みからだけど、家族のためだと思うから頑張れるっていう綺麗ごとにするのもどうかなと思う。だいたいこういうのは『その生き方しか知らない』だけで、『それが幸せ』とか『家族のため』っていうのもそう思わされてるだけなのよね。
でも、それはそれである種の幸せでもあるので、不幸とも言えない。
その後はコーヒーと塩……。経済搾取されてるという話の本を読んだばかりで、すごく微妙な気持ちで読んでしまった。
市場で働く子供たちも。それ、児童労働って言うのでは?
海の魚やジャングルの鳥や木の実、家畜の世話の話は『国にお金をおさめることもないし、学校にもいかない』となっている。そう言う世界なら、子供がやる事は大人になるための準備で「生きるためのはたらき」だと思う。
だから『自分たちが生かされていることを知っている』といい話になってる。
こういう話と労働を混ぜるとおかしくなる。
次は戦争で家や親を亡くした子供の話。だから、混ぜるなと思う。
最後になって著者の「自分は店の手伝いが嫌だった」という話が挟まれている。私は嫌でいいと思う。だって、『お店の事』は大人がやる事だから、子供がやるのは遊ぶこと、世界を観察すること、自分の得意を知る事、苦手を知る事……ジャングルや海の子たちはそいうことを子供の時に学んでる。大人の真似をして、自分が出来ることを知る時間がある。
でも、労働をしている子どもにはそんな時間はない。大人と同じことができて当たり前の世界に放り込まれる。そんなの『嫌』に決まってる。
この本、良いことを書こうとしてあるのはわかるけど、「はたらく」の解像度が低い。
写真だけにしてほしい。写真だけなら『いろんな世界があるんだな』と見ることができるから。
個人的には勘弁してくれ……と思ってしまった本。
子供にはお勧めしません。