まどさんからの手紙 こどもたちへ 単行本
– 2014/3/21 まど・みちお (著), ささめや ゆき (著)
絵本「まどさんからの手紙 作:まど・みちお 絵:ささめやゆき」を読んでみた。
子どもたちへのエールの絵本。
だけど、私はモヤっとしてしまった。
悪い事が書いてあるわけではない。でもね。でも……と思う。
『げんきいっぱい やってください』
という言葉が繰り返されていて、これが子どもたちへのエールという事はわかる。
子どもたちの幸せをみんなが……地球が宇宙が望んでいるという壮大な言葉はわくわくもした。
その後に戦争や絶滅していく動植物の話になり
『いまの おとなの ちからでは それらを なおしきれないのです。せかいじゅうの みなさんのような こどもたちが はやく おとなになって こうしたことを なおして ほしいのです。』
この辺りはちょっとなと思う。『いまの おとな』への絶望をふわりと感じてしまう。この手紙を書いた時点で『まどさん』は84歳。もう自分が出来ることはないとも思ってたのかもしれない。もしくは、その世界の荷担をしたという後悔もあるのだろうか。
今の大人たちだけの力では足りないというなら、まだわかるけど、今の大人の力ではなおしきれないから、『君たちが早く大人になってくれ』というのはどうなのだろう。
その後も手紙は続いていて、「全力で頑張って、楽しんで」というメッセージになっている。
公開する予定のなかった手紙だから、おかしな部分も混ざってしまってるのかもしれないし、基本的にはやはり『子どもたちへのエール』という事も分かるのだけど、やはりモヤっとする。
大人たちのツケを子供たちに払わせているような気になってしまう。
でも、その『ツケ』がもうどうしようもないくらいに膨れ上がっていているような気もする。大人たちはずっと、その『ツケ』を次代に回してきて、そろそろそれが、どうしようもないくらい膨れ上がっているのでは……と思う。
この手紙が書かれたのが1994年。30年前。
でも、まだに戦争は続いている。『はやくおとな』になることすらなく死ぬしかない子どもたちがいる。
そして、異常気象が人々を襲ってもいる。戦争と異常気象で食料が手に入らない地域がある。そんな地域では子供たちが餓死している。
日本でだって災害が増えている。
30年前よりも悪化していく現状をまた『次の子どもたちに』託すなんていうのは、悪夢でしかない。
この手紙は今の時代には使えない。そして、大人が『早く大人になって問題解決してくれ』と子供に言うのもダメだと思う。
『今』問われているのは大人たちの方で、子どもに託している場合ではない。
30年前とはもう、違うのだと思う。
あとね。今の子どもたちって、賢いからこの文面は『ズルい大人』だと思う可能性もある。
情報過多の今の時代、子供の感性ってホント怖いくらい『大人びて(余計なことを知りすぎているともいう)』るんだよね。こういうの純粋に信じる時代は終わってる気がするな。
手紙が書かれた当時はこの文面でよかったとは思うし、『まどさん』にもエールの意思しかなかったのはわかるけど……時代が変わると意味も受け取り方も変わってしまう。
うだうだ書いちゃったけど、最後はエールの部分を抜き出す。
『じぶんが なりたいような おとな だいすきな おとなになるのです』
そうなれたらいいんだけどねと思ってしまう。30年前子供だった私ならば、素直にこの言葉を受け取れただろう。でも、30年で世界は変わってしまった。悪い方向へと随分傾いてしまったように思ってしまう。