裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち 単行本
– 2017/2/1 上間陽子 (著), 岡本尚文 (写真)
「裸足で逃げる 著:上間陽子」を読んでみた。
今までと同じような貧困や虐待などの本と思って読むと……中身があまりにもからっぽで唖然としてしまう。私が今まで読んできた本は実態を書いた後に著者の『社会に対する視線や社会に求める支援、また当事者たちの苦悩や苦痛、読者たちに訴えたい事』のようなものに続いていた。
この本は本当に『インタビューしたことを書いてある』『インタビューの時の状況と著者の心境を書いてある』だけで、その次の話がない。
6つのインタビューが載っているけど、何を目的にインタビューをしてるのか分からない。ただ『子どもの頃の話や、今までの事を聞くだけ』で、それをただ書いてあるだけ。
あとがきに『私も子供時代は沖縄で暮らした』『貧困の子がいたけど理解できなかった』と書いてあったけど、じゃぁ。今、理解してるのかというと首を傾げる。
ただ、『自分はそうじゃなかったから、理解できない人たちを研究したい』という事は分かった。『語るだけで救われる』みたいなことも書いてあって、いや。それは友人や身近な人間がやる事で、大学にいる人間がわざわざそれをやるのは嫌味だぞと思ってしまった。で、やる事と言えば活動団体への『ささやかな寄付』……何言ってんだ? 貧困者にインタビューして本を書いて『ささやかな寄付?』新しい貧困ビジネスの形か?
生活保護申請に付き合ったけど追い返されたとか……だからそこは、追い返されないだけの知識武装をして一緒に付き合うのが大学教授のやる事じゃないのか。何のための付き添いだったの?
未成年者に付き合って中絶の病院へ行けば、『ちゃんと本人に説明をしてくれるいい看護師さんがいた』……。いや。大学の権威を振りかざしてる人間と、妊娠した未成年がいたら大学の権威の大人に話を通そうとする人間の感覚はある意味、普通。そこでちゃんと『本人に説明してください』と説明するのがあなたの役目では?
相手を『嫌な人間』という前に、橋渡しの言葉や態度を相手にしっかり示したのだろうか?と首を傾げたくなる。
『大学の権威を一切使わずに未成年者に付き添った』という話ではないよね?絶対そこで、話が通った事例があると思うんだけど。そういうこと自覚してるのだろうか?
話が、『インタビューした相手に起きた事』『インタビューした相手に対して思った事』で終わってるので、最終的に……だから何だというんだと思ってしまった。
あと、どの話も『頑張っている女の子』の話になってるのもおかしい。そんな状況にしてしまう環境因子はどこにあって、少しでもこの状況を変えるにはどうしたらいいか……みたいな話を期待したのにそんな話は一つもない。運よく状況が好転したみたいな事例すらある。
彼女たちに何が必要で、どうしたら好転したのか。社会は彼女たちにどんな理解が必要か……の橋渡し。いや。橋渡しをする人ではないんだな。
ただ『聞いた話をそのまま伝えるだけ』の人か。……それ何の意味があるんだぁあぁぁ。
こんな話で終わるなら、ケータイ小説を読んでた方がまだリアルな貧困が書いてあったと思う。
さらに沖縄の方言で書かれているので、話が入ってこない。リアルを伝えたいのだろうけどそこで伝わるのは沖縄の人に対してだけでは。
こんなに軽くて肩透かしを食らう本だとは思わなかった。
あと。こういう本は一歩間違えると『ただの娯楽作品』になりかねないんだなと。評価がやたらいいけど「こんなひどい現状があるなんて」というレビューを見てると、知らない人が見たらそうなるんだな……としか。
酷い現状にだけ目が言ってるってことは『だから読者は何をしたらいいのか』まで考えてないし、もっと他の事例があるかもしれない。とも意識が行かない。ただの『こんな見たことがない衝撃的な世界があるんだ』というショックに興奮してるだけ。
だから、こういう本はもう一歩『読者と当事者を繋ぐための言葉や章』があるのに……。この本、それがないので娯楽作品に落ちてる。
貧困について考えたい初心者に勧める最初の本としてはいいかもしれない。
『日本の貧困女子』の方がまだ、地方の男尊女卑と絡めてあって分かりやすかった。そして、重かった。
『凍りついた瞳シリーズ(凍りついた瞳2020)』もお勧め。