「いちばん美しいクモの巣 作:アーシュラ・K・ル=グウィン 訳:長田弘 絵:ジェイムズ・ブランスマン」を読んでみた。
『闇の左手』の作者さんの作品という事で、借りてみた。
シンプルな幾何学模様(クモの巣)の表紙に正直、驚いた。まるで、数学の本のよう。
子供用の絵本……と思ってたので、それにしては絵が複雑で色もシンプル。幼児向けではなくてもう少し大きい小学生くらい向けの絵本……なのかな。
中も思ったよりは文字がぎっしりと詰まっていた。
でも、物語は素敵だった。表現も綺麗。
物語の主人公はクモのリーゼ、人間は誰も住まなくなったお城に住むリーゼは一番美しいクモの巣を作りたくなり、奮闘する。他のクモに役に立たないと言われても作り続け、やがて人間がお城に戻ってきて、クモのリーゼは追い出されてしまう。
そして、外の世界で『いちばん美しいクモの巣』を作り上げる。
というあらすじ。
『宝石のように輝くクモの巣を作りたい』
王様の住むお城だったので昔は宝石が輝いていたから、リーゼはそう思う。昔の栄光と今のクモの巣だらけの現状を比較して書かれている。描写の一つ一つが綺麗で素敵すぎる。
力作のクモの巣はクモたちには不人気でも人間には緻密で美しく興味が惹かれるもので、取られてしまうのだけど……人間とクモの関係もいいなと思う。
そして、クモがちゃんと『蜘蛛』なので、目が八つあって、丸まって死んでしまうわと思ったりするの……しっかり、蜘蛛してると思ってしまった。いや。クモなのだけど、こういう話って擬人化されてるのが多い気がするので。カッコ書きで蜘蛛の目は八つと注意書きがあるのもいい。
最終的に朝露に蜘蛛の巣が光って『宝石のよう』になるのも素敵だった。
もちろん絵も緻密で幾何学的な感じがして楽しめた。キラキラの宝石のクモの巣……。
素敵な絵本。書庫に入ってしまっているのが残念。