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「学校では教えてくれない生活保護」を読んで

2024/03/10

学校では教えてくれない生活保護 (14歳の世渡り術)
– 2023/1/21 雨宮 処凛 (著)

学校では教えてくれない生活保護 (14歳の世渡り術)

「学校では教えてくれない生活保護 著:雨宮処凛」を読んでみた。

生活保護について知りたかったので、読みたかった本。もっと専門的なのかなと思ったけど、意外といろんな事例が書かれていた。

目次ごとに見ていく。

本を読む前にどんな本なのかが『はじめに』だけを読んである程度わかる。生活保護への誤解を数値を基に紐解いて、まずは『まっさら』な状態で読んでもらいたいのかなと思う。
とにかく、『コロナ』でいろんなことが変わったし、誰でも生活保護を必要とするかもしれない。

第1章 今、生活保護をめぐって起きていること 

21年度に起きたクリニック放火の事件の話から始まっている。拡大自殺と言われるようになる事件。犯人は何度か生活保護の相談をしていたが受給には至ってなかった。
その後も生活保護を知っていたり、利用していたらという事件の事例が続いて書かれていた。
または利用していても餓死しているという事件。餓死事件のいくつかは私も記憶している。立て続けだったことも、その後のバッシングも覚えている。当時は芸人の親が生活保護だからどうだというのだろうかと思ったけど、あれは芸人バッシングではなくて生活保護のバッシングだったのか……と読みながら思った。
そして、DaiGo氏の発言。
これは読んでるブログの中にその話題があって検索してみたくらいだ。ただ、この時は『まだこんな事を言ってる人間がいるのか』と思ってしまった。コロナ禍で誰もが貧困に陥ってる時代によく言えるなと。
生活保護に関する事件とバッシングについてわかった。

第2章 生活保護ってどんなもの?
Q&A形式で疑問に答えている章。答えているのはホームレスに生活保護を与える為に奮闘した弁護士さん。すごい。
家や車があって(条件付き)も受けることができるというのは、本当に心強いなと思うけど……大半の人間はそんなものは知らないし、役所の言うままに『そうなんだ』と思うしかない。

第3章 韓国の生活保護~政府の大キャンペーンで利用しやすい制度へ~
韓国羨ましいいいいいという章。政府が『困ってるなら使おう』とお勧めするなんて。
問題点がないわけではないけど、少なくとも水際作戦で生活保護にたどり着けもしない日本と比べれば、『たどり着ける』という点ですごい。

第4章 ドイツの生活保護~ケタ違いの使いやすさ
ドイツ羨ましいいいいという章←同じ。 基本的に申請者を疑わないというのすごい。
こちらもこちらで、問題点はあるけど日本よりはマシに見える。

第5章 外国人は生活保護の対象にならないの?
日本の話に戻る。外国人は対象外らしい。『永住者』『定住者』の資格で準用。

外国人を都合よく利用した歴史もちゃんと書いてあって、本当に日本政府は奴隷制度の制定には余念がないなと感心してしまう。日本人すら派遣法で奴隷化してきたのだもの。外国人はさらにいわずもがな……みたいな底辺競争の制度しかないのか。
さらに外国人は医療費も400%取られる可能性があると書いてあった。可能性なので実際は金がない外国人は最低限の医療でさっさと放り出す。

外国人は生活保護を受けやすいというデマについても書かれていたけど、本には数値が書いてあって、「そんなことはない」となっていた。

生活保護は弱者のものなのだから、弱者になりやすい属性の人間の利用が多くても不思議ではないという事を皆が理解したらいいと思う。


第6章 貧困と生活保護の30年
30年近く支援に関わってきた人の話。
1990年代は人がバタバタ死んでいて、野戦病院みたいだったというのが衝撃的。30年かけてホームレスの人を生活保護に結び付けたり、扶養紹介をなくしたりという奮闘が書かれてる。扶養紹介が消えた(しなくても大丈夫になった)のは彼らのおかげだったのだなと初めて知った。
他にも知らなかったいろんな事が書かれていた。

段ボールハウスが繋がる光景を私も覚えてるので、あの異様な空気は知ってる。今は見なくなったし、もっとわかりづらい貧困になったのも分かる気がした。


おわりに
未来は今よりもよりよくなってほしいという事が書かれていた。私もそう思う。



だけど……この本は『都会』の話だよね。と思うと悲しくなってしまった。
支援が充実してるのも、生活保護を変える努力をしてるのも『都会に暮らす人の視点』でしかされてない。もちろん、人がたくさんいて貧困者も多いからというのは分かっている。だからこそ、地方での現実とは合致しないと思えてしまう。

ここからは一部フェイクを入れて周囲であった話を書く。


私の幼馴染Aさんの話。彼は妻がいて、子供が2人いる。
持ち家で田んぼを数枚持っていて、はたから見ると順調そうだったが田んぼはいくつかを人に任せて収益ゼロ。勤めていた会社も心身を壊してやめた。
経緯は知らないが、会社を辞めた後でローンを組んで家の建て替えをした。その後農業(営農)に専念してみるが赤字続きでうまく行かない。

次第に困窮して生活保護を考えるも家や田んぼがネックになって申請は出来ない。心を病んで妻と別居するようになった。その間は派遣などで働き、ネットカフェに寝泊まりをしていたらしい。

Aさんは離婚して家も田んぼを売ると言い出し、営農の仕事もやめた。
家と土地の値段は二千万。妻子供はまだ家に暮らしていて、いきなり出ていく事は出来ないし、しない。

おそらく、Aさんは本当にお金に困っていたのだろう。心身をどんどん病むくらいには。しかし、妻にはその理解ができずAさんを攻める言動が増えたのだと思う。Aさんの収入がないので妻は子どもたちの為に朝から真夜中まで身を粉にして働いているし、妻もお金の心配を常にする状態になったのだと思う。

Aさんは家土地を売って自己破産宣告をして、生活保護を受けるらしい。この場合は建て替えてローンがある事が生活保護受給が出来ない理由だったのだろうと本を読んで思った。
では、妻子供はどうするのだろうと思う。妻がそれを嫌がったのかは聞いていないので分からないが、おそらく生活保護で大学はいけないという点を嫌がったのではないかと思う。Aさんはそれを気にしない人間だったが、Aさんの妻は教育にある程度熱心だったからだ。


家はある。土地もある。でも、田んぼは赤字でやってられない。兼業でなければできない。田舎の現実は『土地家屋がある』『金がない』
そして、おそらく『土地家屋があったら、生活保護は受けられない』という思い込みがますます、生活保護を遠ざける。相談する場所もない。


本には最後に相談番号やサイトがあったけど、正直、これだけなのか……と思ってしまった。
究極的には地方住まいの人は、東京の支援団体に連絡を取って東京で生活保護を受けた方がいいのかもしれない。と、いうのをどこかでも見かけたような気がする。
地方に住んでいて、支援や理解を求めるのは難しい。

移動のお金を何とか手元に残して東京へ。
それこそ『自治体ガチャ』だなと思うけど、生活保護受給率が低い場所は生活保護への理解もそれだけ低いと思っていい気がする。

もっと公平に『どの自治体でも同じ対応必須』ぐらいにならないかなとは思うけど、その理想は遠いなと思う。日本は広いから。



生活に困ってる人にはこの本を。支援団体の人たちの話がたくさん書いてある。
『生活保障は権利です』という本。

『学校では教えてくれない生活保護』