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「太陽諸島」を読んで

2024/03/23

太陽諸島 – 2022/10/20 多和田 葉子 (著)

太陽諸島

「太陽諸島 作:多和田葉子」を読んでみた。

三部作の三冊目。

読めば読むほど、分からない。いや。読めば読むほど、夢の話を聞かされてるのかなと思う。物語が繋がらない。

話としては、日本を探しに船に乗ってバルト海を巡る旅の物語。

なんで、バルト海?しかも行き先が大陸方面なので、どう頑張っても船を降りてロシアに行かなければいけない……のに、ビザがない。どうしようという話で終わった。


バルト海周辺の国々とロシアの関係性について時々出てくるけど、全体的にふわっとした夢なのかな?というシーンが入り込んでくるので、『どれがフィクションで、どれがノンフィクション情報』なのかが分からない。いや。小説を真に受けるな。全部創作だと言われたら、そうなのかもしれないけど。ロシアとバルト海周辺の国々の関係性が分からないので、分からない。

三冊読んで結局、日本がどうなってるのかは分からない。つまり、そこは主題ではない。という事だけは分かった。
6人の関係性を楽しむ物語だったのかなぁとぼんやり思うけど、正直、私は6人の関係性はよくわからない。友情……というのだろうか。『旅は道連れ世は情け』みたいな関係性だなとは思うけど、それは日本の感覚で海外だとまた違うのだろうか。そういう説明もなかった。

ただ思いつくままに言葉が投げられ、それについての感想が語られ、現実かと思えば夢のようなよくわからないシーンが差し込まれ、わからないままに終わる。三冊目は旅物語で立ち寄った都市の説明などがあるので……その辺りに興味がある人は楽しいのかもしれない。

私には無理だった。もう少し、わかりやすい物語が欲しい。
思わせぶりな言葉はたくさんあったけど、頭に残したい言葉でもなかった。二冊目でめげたのが大きいのかもしれない。無理。

この作者さんの作品はもう読まないリストに入れておくのです。



:追記:
他の人のレビューを見てると日本がディスられているようで嫌という意見があった。
ああ。これだと思った。
別にこの作品が日本をディスっているとは思わない。『知らない国の事はいろんな物事がごちゃ混ぜになって伝わる』という事象は往々にしてある。
日本にいたら、ドイツもスウェーデンも西側の国でごちゃ混ぜに考えるようなものだ。
この三部作はその辺りを面白おかしく書いている。たぶん、面白いと思う人たちはそこが面白いのだろうとやっとわかった。

でも、この物語は『日本にいる外国人』の物語にもなりうる。そんな視点で読む人はいないだろうと思うけど。つまり、私にとってこの本に書いてあることは『目新しい事』ではない。弱者に関する情報は薄く浅くだが取り入れてるし、日本にいる外国人がどんな扱いを受けるかもある程度知っている。
『子供の頃は「不法滞在の外国人」と聞くと、遠い国の悪い人の話だと思っていたが、今は、自分自身がすぐにそうなってしまう。』という文章が一冊目にあったような気がする。

でも、そこに視点が行く人はどれだけいるだろう。
海外にいる日本人視点で終わっていて、言葉がどうのこうのと言ってる割には問題の深堀はない。
二冊目に至っては、差別問題が露骨に出ていたというのに何の問題にもなっていない。三冊目では、ロシアと周辺国の話になっているが、主人公には何の絡みもない。

夢として書くならとことん夢として、問題提起するならとことん問題提起を。
と、私は思ってしまうので、『現実の問題を絡めつつ、ふわっとした夢の物語』というのは私の一番大嫌いな物語だなと思った。

衝撃的と思われるモチーフだけちりばめて、宣伝文句にするのは商売の常套手段と言われたらそれまでだけど。

『太陽諸島』


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