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「機械じかけの猫(上)」を読んで

2024/01/23

機械じかけの猫〈上〉 単行本 – 2000/7/1
トリイ ヘイデン  (著), Torey Hayden (原著), 入江 真佐子 (翻訳)


「ひまわりの森」に続いて、機械じかけの猫を読んでみた。

ひまわりの森が戦争や家族のしがらみなど、読んでいて重くてしょうがなかったのに比べて

軽い。

まるでファンタジーを読んでるような感じだった。儀式や階級や神様……とてもわくわくした。


主人公は精神科医ジェームズ。患者の男の子コナー。コナーの母親ローラ。ローラの頭の中のトーゴン。トーゴンの世界『森』

話は、主人公のいる現実とトーゴンの世界『森』を行ったり来たりする。世界はほとんど交わる事が無く、話が進んでいく……と思っていたのに
ローラが成長したら、少しだけ現実と森が交わった。


話の核として出て来てるコナーがなんだか、蚊帳の外みたいな感じだなと思った。けれど、最後でローラの話になった。ローラの知り合いが「あの方はあなたのことをもうすべて、̪知ってらっしゃるはずだから」と言う。あの方というのは教祖と呼ばれる人。


コナーは「猫は全てを知っている」と毎回繰り返していた。なんだか、関係あるのかなー?と思った。


ちょっと気になった部分。

「わたしには痛みを感じないために体と精神を分離するという大人の技術をすでに習得した人が見えるのです」

「だれでもときには空想の世界に住みたいと思うものさ、ローリー。でもそれは大人のやり方じゃない」


上のセリフはトーゴンのもの。
自分は大人か子供か迷っている人にかけた言葉。
下はローラが自分の父親に森の世界を説明した後に、父親からかけられた言葉。
父親はローラの言う事を「空想」と切り捨てた。


トーゴンの言葉は一理あるなと思った。確か、成人の日辺りの新聞に「大人って何?」みたいなものが書いてあったけれど

「痛みを感じない人間が大人」というのは、確かにそうなわけで……正確には「痛みを表さない」だけれども。


そして父親の言葉。
「空想の世界に住まないのが大人」
大人の定義って色々あるなと思ったのです。


ローラは「現実とは何?」という疑問を問いかける。その為のトーゴンの物語という事を忘れそうになってしまう。
コナーはどんな現実を見ているのか。コナーの妹のモーガナも現実なのか空想なのか、よく判らない世界の話をする。大人たちはそれを「空想」と決めつける。
特にローラがそれを「空想」と決めつけてしまった事にはちょっと驚いた。
ローラは子供ではなくて、大人なのだと再確認してしまった。


上巻を読んだ限りでは「空想の世界に住む子供」と「現実(だと思っている)の世界を生きている大人」のお話しなのかなと思った。


下巻でもっといろんな事がはっきりするんだろうなと、楽しみにしてるのです。


……340ページを二週間で読めた――。今回こそ、返却期間の延長しなくて済んだ。下巻も順調に読めるといいな。

機械じかけの猫〈上〉 単行本

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