ひまわりの森 単行本 – 1999/9/1
トリイ ヘイデン (著), Torey Hayden (原著), 入江 真佐子 (翻訳)
トリイ・ヘイデンの「ひまわりの森」を読んでみた。
……500P越えは疲れた。
不思議の国のアリスや13の…物語がテンポよく進んでいったのを思い出した。それに比べると、「ひまわりの森」はテンポが遅い。けれど、トリイのノンフィクションに比べると話が進む感じがした。
戦争を経験して心を傷つけられた女性(母親)を軸に、主人公である娘が振り回される話だった。主人公が自分で動いているように見えて、実は母親に振り回されてる。
ただ、これが『戦争による悲惨さ』なのか、『家族のしがらみ』なのかは分からなかった。
私はどちらかと言えば、『家族のしがらみ』のように見えた。
母親の経験は確かに『酷い』のだけれども、主人公の娘の視点から見るとそれは『呪い』にしか見えない。だから、『呪い』が解けて物語が終わる。
『呪い(幻影)』が溶けた後の『現実』がどれだけ残酷でも、呪いは解けてしまった。
母親は強い勇者でもなければ、か弱いお姫様でもない。下手をしたら魔女だったかもしれないという現実。
『勇者ではなくて人間だった』程度なら、子供の成長物語で微笑ましいけれど『魔女かもしれない』は結構衝撃的。
もちろん作中にそんな言葉(勇者や魔女)は出てきません。私的解釈です。
『家族のしがらみ』という風に読むと、エグイ。
ただ、表面は『戦争の悲惨さ』でコーティングしてある。
なので、「戦争中にこんな事があったんだ」という視点で見る事も出来る。
この本を読んでる途中で、とある記事のゲーム紹介でその名前を知った。
『レーベンスボルン』
ドイツの優生思想に基づく「アーリア人増殖のための収容所」……ドイツは選ばれた人種を集めて子供を作っていた。
この話自体はずいぶん前に聞いたことがあった。収容所の名前までは覚えてなかったけど。
ただ、イメージとしては『了承した人達(妊娠したい人)を集めた場所』だと思っていた。
「ひまわりの森」では、『強制的に』人が集められ強姦され子供を作らされたという事が書かれている。ラーフェンスブリュックという収容所の名前も出てくるけれど、ここでの事はあまり書かれていなかった。
調べると女性の収容所だったらしい。(一部男性もいたとなってた)
他にも色んな地名・国名が出てくるので、それらを調べてみるのもいいのかもしれない。
地図があれば判りやすいのになと思ってしまった。地名だけでは……それ、どこ?である。
カンザスとかテキサスとかノルウェーのウェールズとか…聞いたことあるような気がするけど、地図として頭には入っていない。
ついでに言えば、主人公は『アメリカ』に住んでいる事になっているけれど、戦争の話はヨーロッパの辺りをあちこち移動する。
…どこまでがアメリカでどこからがヨーロッパの話かが分からない。地図が描けない。全て異国の話だと切り捨てるしかない状況。
さらに言語が複数出てくる。英語はもちろんドイツ語フランス語ノルウェー語。……語学堪能すぎると思ってしまう。
が、それらが、どこで使われている言語なのか。ノルウェーに行って使ってる言葉は何なのか謎だ。
主人公はノルウェー語は未熟となってたのに、なぜか意思疎通が出来てる。つたない言葉で何とか伝えてるんだろうか?
日本語しかできない身としては、複数言語習得してる主人公が空の上の存在だ。
そんな感じで『家族のしがらみ』を除けば、知的好奇心を刺激してくれる作品だったと思った。
ひまわりの森 単行本トリイ・ヘイデン作品 感想記事
「ひまわりの森」を読んで
「機械じかけの猫(上)」を読んで
「機械じかけの猫(下)」を読んで
「うそをつく子」を読んで