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「ロマンチック城ユーレイ・ツアー」を読んで

2025/06/27

ロマンチック城ユーレイ・ツアー (とんでる学園シリーズ 38)  – 1990/12/1
名木田 恵子 (著), かやま ゆみ (イラスト)

ロマンチック城ユーレイツアー ふーことユーレイ (とんでる学園シリーズ 38)

「ロマンチック城ユーレイ・ツアー 作:名木田恵子 画:かやまゆみ」を読んでみた。

ふーことユーレイシリーズ4冊目。
この本、子どもの時にタイトルと絵に惹かれて手に取ったのよね。ふーことユーレイシリーズで初めて読んだのがこの本。西洋のお城に雪の雰囲気がすごく好きだし、『ユーレイ』アイテムも好き。生まれ変わり(?)も好き。この本からふーことユーレイシリーズを集め出した。

ただ、ちょっと恋愛要素が強めなのが常に引っかかってはいた。嫌いではないけど、好きなのは事件と冒険要素の部分。恋愛はおまけみたいな感じ。

さて、物語は、ふーこの叔父(母親の弟)であるトム兄さんからもらった『拾った雪の結晶のペンダント』から始まる。和夫くんはふーこにペンダントは危険だというけど、ふーこはそのペンダントを胸元に当ててみてしまう。あっという間にイギリスの霊界に飛ばされて、ルパートという少年の恋人アリシアの生まれ変わりだと言われてしまう。ふーこはお城に閉じ込められてしまったけれど、和夫くんが助け出してくれる。けれど、ふーこは半ボタンを梅原さんに盗られてしまっていて、和夫くんは守護霊としての役目を果たせなくなっている。ルパートは再びふーこをさらい、和夫くんを拷問すると言ってふーこを脅して結婚しようとする。ふーこは和夫くんを助けるために結婚を決めたけれど、実はアリシアは湖に沈んでいてユーレイにもなれないままでいることを打ち明けられる。湖から引き揚げることが出来るのは生きている人間だけと聞き、ふーこが自ら湖からアリシアを助け出す。

長い。いろいろ事件が起こりすぎていて、簡単に説明できない。最後はルパートとアリシアの結婚式シーンというロマンチックなものになっていた。

でも、これ……かなり身勝手な話なのよね。ルパートはアリシアを助けるために、ふーこと結婚して湖に沈めるつもりだったのだから。湖に沈んだらユーレイにもなれないって言うのに。その身勝手さに和夫くんも怒ってるのだけど……。いや。でもルパートも18歳くらいか?だったら、そんなものだと思ってもいいのか。
最初から、『潜水できる人間に頼む』という選択肢がなかったのだろうか。ユーレイが見える人もいるなら、そう言う人たちに片っ端からとりついて『死体を引き上げろ』というのもありだよな……と大人になってしまった今は思う。正しくない児童書の読み方……大人っていやね。

あと、真面目な話として、子供は体温が高めだけど、体温調節は未熟なので冷たい湖に飛び込ませると大人よりも早く体温が下がっていく。まして、水の中なので、あっという間に……。
そして、小学生にできるなら、やっぱり大人に訴えて引き揚げさせた方が手っ取り早い。
さらに言えば、『泳げない』設定があっという間に消えるのもどうかと思う。ここは『ロープでつないで、引き上げる』のが良かったよね。ユーレイだって地上でロープを引っ張ることはできたのだろうから。
細かい点はやや気になるけど……子どもの頃はこういうの思いつかないから、スラスラ読めちゃったんだよな。


あと、この時代のいじめってまだ可愛いんだよなと思ってしまった。
インターネットがないから風評被害がない。この本だと『クラス中がふーこと距離をとる(こまったちゃんは除く)』というシーンもあるけど、せいぜいその程度。クラスの中でしか起きてないから、家に帰ったらいじめなんて忘れられるし、ふーこも強いから結構言い返してる。階段の上から飛び下りさせるというのもあるけど、ユーレイが助けてくれる前提があるから酷いことには見えないんだよな……。エグイけど、物語の中でちゃんと回収されてるからエグミがない。


さらに最後のページにはかやまゆみ先生のあとがきが付いている。ここで、1989年にロンドンに行って、ちょっとした病気になったことが書いてあった。ん?これってあの病気と同じもの?まったく別の??それとも、元々身体が弱かったの??と色々考えてしまった。いや。死の10年以上前だし、たぶん無関係かな。

なんていうか、もう新しい作品は見ることが出来ないけど、こうやって昔の作品の中に生きている姿が残ってるのすごいなぁと思う。
ふーことユーレイシリーズの買った本は全て売ってしまったけど……なんで売ってしまったんだ。私のばかぁぁぁと嘆いてる。今、手に入らないんだよな。いつでも手に入れられるような気がしてたけど、紙の本がこんなに貴重になるなんて思わなかった。

そして、作者の名木田先生のあとがきにはストーリーのアイデアの紹介までしてある。……現代ではこれ完全アウトだし、作者側がアイディアを見たくないって言ってるんだっけ。あとがきで「こんなお手紙嬉しい」みたいなことをほのぼの書いてあるの、時代だなぁと思ってしまった。

良くも悪くも変わっていく時代を感じる。

また、作品とは無関係なことの方が多い気が……懐かしすぎてあれこれ書きたくなってしまう。こんなに好きだったんだなぁと改めて思う。
ごちそうさまでした。



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