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「恋がたきはおしゃれなユーレイ」を読んで

2025/06/27

恋がたきは・おしゃれなユ-レイ (ふーことユーレイシリーズ 3)  – 2001/4/1
名木田 恵子 (著), かやま ゆみ (イラスト)

恋がたきはおしゃれなユーレイ 改訂版 (ふーことユーレイシリーズ 3)

「恋がたきはおしゃれなユーレイ 作:名木田恵子 画:かやまゆみ」を読んでみた。

ふーことユーレイシリーズ3冊目……。2冊目は図書館になかったので諦めたけど、話の中にちらっと前回の話が入っていて、そういえばそういう話だったようなと思い出す。

やっぱり好きだなぁと思う。主人公は小学生で別に恋愛至上主義でもない。ただ『好きだから会いたい』けど『ユーレイだから簡単には会えない』状況にやきもきしている。だってさ「和夫くんが好き」っていうだけで恥ずかしいなんていうピュアさ……いや。私の中の泥臭さに慣れた感覚だと、もうピュアすぎて私もそう言うのに純粋にドキドキしてた時期があったんだなぁと思ってしまう。

でも、今の作品ってこういうのに「大人の泥臭さ」がこびり付いていて嫌なんだよな。
これを「ほら、こういうのがピュアだろ」っていうもので差し出されるのは違うから。ピュアな二人だろキュンキュンするだろみたいなものが見えた時点で『萎える』

この時期の児童書にはそういう泥臭さもない。純粋に子供は『そういうもの』だし、大人も「そうだよね」と思って眺めるだけ。そういう淡々とした背景のもとに描かれてるので過度に「ほら、キュンキュンしろ」という嘘くささがないのがいい。

ただふーこと和夫くんはこういうキャラでこういう子供たちなだけ。で、それを読んでた当時の子どもたちもそういう子供たちだったんだよな。
だから、『好き』がそのまま『会いたい』という意味でしかないし、『なるべく長い時間一緒にいたい』というものでしかない。別にそれ以上の何かなんて存在してないのが良いんだよな。

毒された昨今の作品を読んでると、ホント今の自分が毒まみれで感覚狂ってしまう。

前置きが長くなってしまった。


物語は、恋のライバル吉川苑美(よしかわそのみ)が、ふーこに嫌がらせをするために梅原さんを使ってあれこれと意地悪をする。苑美は和夫に「自分を選んで」と迫り、ふーこの半ボタンのペンダント(守護霊和夫との繋がり)を奪っていく。悲しみに沈んでいたふーこだけ苑美の生前の事を知り、和夫の気持ちがわかってしまう。
苑美のお墓参りの帰り道で事故にあったふーこを苑美が助け、ペンダントも返す。和夫はふたたびふーこの守護霊に戻る。
というもの。

これ、苑美がわけありだったのは覚えてたけど詳しいことは忘れてしまってて、読み直して改めてだから私はこの作品が好きなんだなぁと思ったのを思い出した。
2冊目はそれほどでもなかったけど、3冊目のこれは私の好みにヒットしたのよね。特に苑美の生い立ち。
母親に捨てられて養護施設で育って、そこを飛び出したところで事故にあったので、しばらく身元不明として誰なのかわからなかったというもの。……これ、もしかして似た事件があったのかなと今なら思う。

で、こういう話が入ってるからこのシリーズを続けて読もうって思った気がする。
ただ、私が最初に読んだのはこの本じゃなくて、次の『ユーレイ城・ミステリーツアー』だったけど。一冊目、二冊目はそうでもないなーどうしようかなーって思っちゃったのよね。それが三冊目でこれだから、続けて読もうに変わった。


苑美はいじわるだけど、好きなキャラだなと思う。そして、だからこそ突き放せない和夫くんもいい性格してると思う。……ただ、もう少し年を取ってたら、この対応だとダメだろって突っ込みたくなるけど。小学生だから『どっちもむげに出来ないどうしよう』でも、どうにかなる。高校生くらいで同じことをしてたら、優柔不断すぎるだろという突っ込みを入れたくなりそうだ。

小学5・6年という年齢設定がちょうどよくて、この判断やこの行動でも「優しい」になるんだよな。


少し気になった部分。
「ふーこばっかりヘンなめにあって、おかしいよ。先生に相談したほうがいいんじゃない?」86p

こまったちゃんがふーこを心配して言った言葉。これ、ほっとする。先生をちゃんと頼れると示してあるの良いなと思う。最近の児童書、真面目なキャラが「先生なんて役に立たない」ってバッサリ切ってたのを見て、リアルだけど児童書がそれでいいのか??とも思うんだよな。大人が書く児童書が大人批判をしてるのはシュールすぎる。


「関係ないよ」
「関係あります!大事なママの娘でしょう。」117p
元気のないふーこを心配したママを突き放しても、ママはちゃんと「大事な娘」と言い張る。この辺りのシーンも好き。ママはふーこを心配して、先生にまで連絡を取って、先生も梅原さんという子とトラブルがあるのは把握してる……っていうのが、先生だよねと思う。
こういう大人と子どもの関係がしっかりしているのも好きだし、家族も先生もちゃんと存在しているというのがわかるのが好き。

なんていうか、抑えるポイントをしっかり押さえた児童書ってこういうのだよねって思っちゃうんだよな。ちゃんと大人は子どもを見ている。そういう安心感があるから、子供はめちゃくちゃなことをしつつも、絶対越えちゃいけないライン(ふ―この場合は、死んで和夫に会いたいというものだけど)は越えないんだよな。

懐かしいと同時に私の中のいろんな原点が見える気がする。読み直してよかった。
ごちそうさまでした。


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