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「もう家には帰らない」を読んで

2024/12/26

もう家には帰らない: さよなら日本一醜い親への手紙 – 1998/3/1 CreateMedia (編集)
もう家には帰らない: さよなら日本一醜い親への手紙

「もう家には帰らない 編:Create Media」を読んでみた。

「日本一醜い親への手紙」の2冊目。
この本は虐待の悲惨さを減らして載せたとあるので、中身はそれほど悲惨な虐待の話はない。もしかしたら、虐待の部分だけ削除されてしまってるのかもしれないけど。
全文はサイトでとなっているけど、発売が1998年でもう四半世紀も前なのでさすがにサイトが消滅していた。つまり、全文を見ることはできない。

すると、なんていうか……なんで、この程度でこんな話になってるの?みたいな……宙ぶらりんな手紙にみえるものがいくつかある。
もちろん、『子供にとっては重大なこと』だったのかもしれないけれど、文章が簡略過ぎてよくわからない。あとは、恨み言だけの手紙も。

13の「どんどん楽に……」はアダルトチルドレンの知識を得たら自分が抑圧されてたことを知った。私はどんどん楽になってるという手紙だけど、具体的に何があったかがない。
47の「昭和一ケタ生まれ」は愚痴を言われたことはわかるけど、それにしては恨みの言葉が強くて『他に何かあったのだろうけれどさっぱりわからない』事になっている。

44は『ペット』という題で『もうしわけありません。立派なペットになることができませんでした。』
これではただの反省文で自己満足でしかない。もちろん、読む人が読めば『それだけ追い詰められている』ことは伝わるだろうけれど、この本は『世間にはこんなに子供に恨まれるような親がいる』という事を示したい……のだと思うので、この手紙の文面では伝わらない。
45は『ただの中年ハゲ』という題で『あなたのことをこう思うようにしたら、気がラクになりました。「ただ同じ家にいるだけの中年ハゲ男」』
こうなるともう、ただの悪口で恨みですらもない。思春期特有の親への嫌悪感にしか見えない。

そんな中でも気になった手紙。
78の『家に帰るのがいや』はすごく冷静だと思う。大学で『心理、法学、哲学、そして権利。砂に水がしみこむように理解していった。(略)子供の権利条約に罰則が欲しいくらい、悲惨なことだ。』子どもの権利条約まで知ってるのすごい……と思ってしまった。この文章のラストは『そんな子供たちと手を取り合って、ともにこの時代を歩いて行けたら、わたしの、がんばって生きてきた意味がそこにあると、信じられるような気がする。』になってる。他の手紙は親への恨みか、それでも憎めないという親に対するメッセージだったのに、この手紙は『自分と同じような虐待にあった子供たちと共に未来を歩きたい』というポジティブメッセージ。すごいなと思ってしまった。

もう一つ96の『あのA少年と同じ』の中の『少なくとも私が小学校六年間自閉症でずっと苦しんだことについては、アンタにも責任がある。私は、あのA少年と同じ神戸の相談所にも、お袋に連れられて何回か行った。アンタは何もしてくれない代わり「こいつはまだ学校でものを言わんのか? どんなしつけをしとるんじゃ!」とお袋をなじった。』
最初はサカキバラ事件の??と思ったけど、特にそこは関係なかった。それよりも『自閉症』と書いてあるけれど、これは『場面緘黙症』の間違いだろうなと思う。喋らない=自閉症だと言われていた時代なのか、たまたまこの手紙を書いた人が勘違いしていたのか……わからないけど、手紙の文面を見ても自閉症とは違う気がする。何より『小学校六年間』と期間が限定してるのも自閉症ではあり得ないと思うから、やはりこれは『緘黙症』だろうな。

最後に企画者の言葉がある。「心の中の親殺し」のためにも親への手紙は必要だったというもの……いや。ただの悪口になってる時点で、思春期の反抗期でしょと言われて終わりだけど。
「普通の親」が子供を壊すとあるけど、仮にそうだとするならば社会システムがおかしいだけ。『子どもの権利条約』では子育てをする親を国は支援することになっている。

『子どもの権利条約』に基づいて、『子育てには何が必要なのか』を親にしっかり伝える必要が国にはある。社会としては国に『ちゃんと子育て環境を整えろ』という声を届けることが必要。子どもの権利条約……読むと良いよという気分になった。

この本はお勧めしない。『毒になる親』には親に相対するための手順も書いてあるので、できればそっちをお勧めする。お勧め本は『子どもの権利条約ハンドブック』』『毒になる親


『もう家には帰らない』