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「毒になる親」を読んで

2024/12/11

毒になる親 – 1999/3/1 スーザン フォワード (著), 玉置 悟 (著), Suzan Forward (原名)
毒になる親

「毒になる親 著:スーザン・フォワード 訳:玉置悟」を読んでみた。
……二十年ほど前だったかな。一度読んだけど、読み直すために借りてみた。さすがにもう書庫入りしてた。すごくいい本なのにな。貸出率は低いのかな。

・はじめに
『毒になる親』の説明とこの本で出来る事が書かれてる。毒になる親に育てられた子供が大人になってから起きる問題をこれでもかと書かれている。
『自分をよく見てみよう』にチェックリストがある。長いので少し省略しながら書く。

21-25p
(1)あなたが子供だった時
1.あなたの親は、あなたの人間としての価値を否定するような事を言ったり、(略)終始批判ばかりしていたか。
2.あなたの親は、あなたを叱る時に体罰を加えたか。(略)
3.あなたの親は、しょっちゅう酒に酔っていたり、薬物を使用したりしていたか。(略)
4.あなたの親は、いつも精神状態が不安定だったり、身体が不調で、(略)あなたをいつもひとりぼっちにして放っておいたか。
5.あなたの親は問題を抱えており、あなたは親の世話をしなければならなかったか。
6.あなたの親は、(略)あなたに対して性的な行為をしたことがあるか。
7.あなたは親を怖がっていることが多かったか。
8.あなたは親に対して腹を立ててもかまわなかったか。(略)

(2)大人として現在のあなたは、
1.異性関係を含み、いつも人との関係がこじれたり、(略)争いになるか。
2.(略)親しくなりすぎると、その相手から傷つけられたり関係を切られたりすると思うか。
3.(略)人との関係では悪い結末を予想しているか。人生全般についてはどうか。
4.自分はどんな人間か、(略)といったことを考えるのは難しいか。
5.自分の本当の顔を知られたら、人から好かれなくなるのではと思うか。
6.何かがうまくいきはじめると心配になってくるか。(略)
7.理由なく、無性に腹が立ったり、悲しくなったりすることがあるか。
8.何事も完全でないと気がすまないか。
9.リラックスしたり、楽しく時間を過ごすことが苦手か。
10.(略)人によくしようと思っているのに、気がつくと「まるで自分の親みたい」に行動をしていることがあるか。

(3)現在のあなたと親の関係
1.あなたの親はいまだにあなたを子供のように扱うか。
2.あなたが人生において決定することの多くは、親がそれをどう思うだろうかということが基本になっているか。
3.親と離れて暮らしている場合、親に会うことになっているという時や、親と一緒に時間を過ごした後で、(略)はなはだしい反応がでるか。
4.あなたは親の考えに反対するのに勇気がいるか。
5.あなたの親は、(略)あなたを自分の思い通りに行動させようとするか。
6.(略)
7.(略)親が不幸だとしたら、それはあなたのせいだと思うか。(略)
8.あなたが何をしても親は満足しないと思うか。
9.あなたはいつの日か親が変わってくれる時がくると思っているか。  ――25p

(1)は3,4,5、7……が思い当たるような。6は少し変形かな。裸の写真を撮られたけど、それは売るためでもなくて単純に『成長の記録』を撮りたかったのだろうなと。ただ、胸が膨らみ始めた時期だったし、写真屋で現像するタイプのカメラだったから今思うといろいろアウトだな。8に関しては、無理だったし、今になって少しだけ自分の感情を言ってみたら、数倍になって返って来た。
(2)は2,3、4,6,8、9……かな。3は悪い結末ではなくて、人間関係が続くものだという信頼が出来てない。学年が変わると終わるみたいに、社会に出ても数年で終わる関係だと思って生きてきた。6もうまくいきはじめると心配というより、『いま死にタイ(全て終わらせたい)』という気持ち。
(3)は1,2,4,5,6,7,8……あれ?ほぼ全部じゃん。3は離れている時は、家に帰るのが憂鬱(寝る場所がない)で、部屋に帰ったらがっつり寝た。家に私の寝場所ってなかったのよね。今も、弟が帰ってきたら私の寝る場所がない。家に住んでいる私がベッドから追い出されるから、夜ずっと起きてて、弟が起きてきたらベッドで寝る。うちには子供の数のベッド(寝場所)がなかった。大家族あるあるだと思う。

これ書きながら、昔もこの感想を書いたような気がする。でも、親と離れて過ごしてたから『まぁ。いっか』って思ったし、深く考えなかった。離れてると毒は薄まる。そして、忘れてしまう。……今、一緒に暮らしてる。毒が強すぎて死にそう。

第一部 「毒になる親」とはどんな親か
一章 「神様」のような親
自分にとって都合の悪い行いを罰する親の話。
『このように、親がどれほど”有毒”でも、幼い子供はこの世にひとりしかいない父や母を自分にとって最も大切な存在であると考えるものだ。』35p

私、赤ん坊の頃……たぶん生後数か月とかそういう時期だと思うけど、父にお風呂に沈められていたらしい。私だけではなくて、父は私たち兄弟、全員をそうやってお風呂に入れてた。最初に赤ん坊の身体を洗って、次に自分の体を洗う間は湯舟に沈めておく。父にとっては慌てて洗うからすぐに引き上げていたし、死んでいないから大丈夫と思ってたらしく、私たちが大人になってから「赤ん坊は沈めても大丈夫」と偉そうに言っていた。

これ、父にとっては『赤ん坊に記憶はないから、平気』とも思っていそう。私、記憶があるのよね。同じく下の妹も記憶らしきものが残ってると言ってた。でも赤ん坊の記憶って大人と違って『言語化できるようなはっきりしたもの』ではなくて、感覚。
この場合だと『水に沈められた恐怖』が一番強い。私はその他にも『一番信頼していた人間が、私を水に沈めたという恐怖』が残ってる。はっきりと『誰がそうしたか』というものが残っていなかったから、ずっと「母が私を沈めていたのではないか?」と思ってた。
父の言葉で、父がそうしていたということが分かったけど……これがわかんなくて『一番信頼してる人は私を殺す(傷つける)』という漠然とした恐怖みたいなものが私にはずっとあった。こういうのってすごく厄介で、好きな人が出来てもその人に対して安心できなくなるのよね。好きで信頼が増せば増すほど、不安も増えるという地獄を味わった。もちろん破綻した。
ついでにこれ、母に『私を沈めたことがあるか』は聞けなかった。あったとしても「そんなことしたことない」って答えるだろうし、何より「私がそんな事をすると思ってるなんて酷い」と言われるのがわかってたから。一緒に『誰がそうしたのか』を考えてくれないのはわかってたから。

親(神様)は気まぐれに子供を殺す力を持っているという事をもっと自覚した方がいいし、子供も気まぐれで自分は殺されるんだという事に気がついた方がいい。親子の関係ってそういうものだし、その力関係に一切気がついてないどころか『子どもは親のいう事を聞いて当たり前』の親ほど毒親の資質がある。ということが本にも書かれている。
親の都合で水に沈められてる私は充分、毒を吸い込んでる。

二章 義務を果たさない親
48-49p
1.親は子供の肉体的なニーズ(衣食住をはじめ、体の健康に必要としていること)に応えなくてはならない。
2.親は子供を、肉体的な危険や害から守らなくてはならない。
3.親は子供の精神的なニーズ(愛情や安心感、常に注目していてやることなど、心の面で必要としていること)に応えなくてはならない。
4.親は子供を、心の面でも危険や害から守らなくてはならない。
5.親は子供に道徳観念と倫理観を教えなくてはならない。 ――49p
これらの義務を親は果たさなければならない。

『親が自分の責任を子供に押しつけている家庭では、家族のメンバー間の役割の境界線がぼやけ、ゆがめられ、あるいは逆転してしまっている。』49p

これを読みながら、妹の彼氏(結婚相手)に「未成年と付き合うってどういうこと?」と詰め寄ろうかと思ってたのを思い出す。それを友人に話すと「それは親の役目」と窘められたけど……。うちの親がそんなのするわけがないし、妹が勝手に部屋を抜け出して夜中にいなくなっていても何も言わなかったのよね。親曰く「言っても聞くものではない」って事だったけど、高校生が夜に出歩くのに『何も言わない親』ってそれはそれで、問題。
で、どうなったかというと、『親は私が出歩いてるの気がついてなかった』と妹は思ってた。思わず「そんなわけないでしょ」と突っ込んだのは私。この問題、親からは「あんたが言っておいてよ」って丸投げされてたのよね……。私が背負う問題でもないよね。なんで、まだ未成年だった私に丸投げされてたんだろう。

『彼は喜怒哀楽の感情をはぐくまれることなく育ったので、それらを上手く表現することを覚えなかったのだ。』54p

私、中学の時に教師から登校時『能面みたい』だって言われた。高校に入ると、『真っすぐ正面だけを見ている』とも。これね。まっすぐ見てるんじゃなくて、何も見てなかった。車や人を避けるくらいには意識を残してるけど、残りは妄想と思考の暴走に費やしてた。現実逃避って表情からガリガリ削っていく。で、怒られた時には笑っちゃうのよね。これ、恐怖で顔が引きつるから口角が上がるだけで、笑ってるわけではない。だから、怒られたときほど無表情を意識して作ることになる。生きるの辛くなるのはこういう部分もある。

三章 コントロールばかりする親
子供をコントロールして、自分の要望を通す親の話……毒親ってほとんどこれだと思う。褒めるでも貶すのでも方法は色々あるけど、子供が成人後も『コントロール』を続ける親は危険。ただ、成人後は親元から離れるとコントロールされているかわからなくなることもある。たまにある親の要望には応えるのは当たり前と子供自身が思うから。逆に同居が続いて親から離れられないとそれが、コントロールなのかの見分けがつかなくなる。「一緒に暮らしているならそれくらい当たり前の範囲」と思ってしまうから。どちらにしても『コントロールされているのか』に気が付けるかどうかは難しい。

『子供がしたいことをしていると自分が置き去りにされたような気分になり、子供が離れていくことに脅威を感じるため、そういう子供を自分勝手だといって責める。』70p
子供に対して「裏切者」という親は毒親だと思っていい気がする。子供に対して「裏切者」という時、それは『自分の親に対しての言葉』だと思うのよね。だって、「わが子すら信じられない人生」を送る羽目になってるのは親の責任だから。たいていの場合、子供は裏切ってない。
私も言われた。家を出る時、母親に「裏切者」って。さらに結婚もせず子供も持たない私に父親も「お前は親を裏切ってる」って言ってた。『結婚して子供を産むまともな人間を育てた』って親は思いたいものなぁと思いながら聞いてた。まともに育ててないのに、『勝手にまともに育つ』と思ってるの怖い。

四章 アルコール中毒の親
アルコール中毒(又は薬物中毒)の親を持つ子供の話。
『親に問題がある家庭ほど子供は心の支えを必要とするのに、その子供は親から心の支えが得られないという矛盾に陥る。』92p
毒親は『子供を心の支え』にするという事がこれでもかと繰り返し書かれてる。うちの母親、アルコール中毒だったのかなと考える。今も飲酒量が多いけど、うちは父親も母親も飲酒量が多くて『何がまとも』なのかわからない。やっと今、両親揃ってヤバかったのでは?と思い始めてる。毎日の飲酒……アルコール度数40度近くというのが当たり前すぎて、そういうものだと思ってる。
成人後に「ウィスキーが好き」というと驚かれたけど……いや。ここは「缶チューハイの甘いのが好き」というのが普通の女子だったのだろうか?うちの親がウィスキーを飲んでたから、それしか知らないって言うだけで、別にウィスキーが好きだったわけでもない。

その環境にいると『普通(大半の人)』の感覚がわからないって、こういうことなのかな。
でも、飲んで暴れるとか暴力を振るうということはなかった。絡んでくるだけ。「歌え」と言ってきたり、いきなり抱きしめてきたり……。ちょっと迷惑だけど、特別困ることもないので、問題とは思ってなかった。でも、愚痴聞き相手になってたし、慰めるのも私の役目だったし……そういう点では負担だったな。

五章 残酷な言葉で傷つける親
言葉で傷つける親の話。……この本にも、身体的暴力に比べると大したことがないと思われてると書かれてたけど、たぶん今も日本では大したことがないと思われてる。
言葉だけだと判断が難しいというのもある。そして「売り言葉に買い言葉だったのでは?」みたいな頓珍漢なコメントもついてくる。ただ、これ……子供の年齢なども含めて考えた方がいいこともあるから、他人からは本当に『見えない』のよね。

でも、親側が「子どものために言ってる」と言い出したら、黄色信号だなと思う。子どものために言ってるのに伝わらないのは『伝え方が悪い』から。そして、親側に『伝え方の知識』が足りないから。さらに言えば、そういう『コミュニケーションの基礎』を大人も学んでないからという社会の責任も含まれると思う。(社会にまで話を広げると、本の扱ってる範囲を超えるので、詳しくは書かないけど)

毒親も問題ではあるけど、そもそも社会にも『子育て』『コミュニケーション』を家庭に丸投げして、『適切な関わり方』をしていないという問題があるのよね。毒親ならぬ、毒の国……みたいなものがあると思う。……でも、それは一旦脇に置く。

そういえば、姪っ子が小さいころ、「走らないで」と言ったら「それは傷つく」と返って来た。その時は余裕がなくて、「走ったら危ないから言ってるの」で終わらせたけど、たぶんもっとちゃんと話を聞いてあげるべきだったんだろうなと思う。
「~~しないで」ではなくて、「ゆっくり歩いて」「かめさんごっこの時間」とか言葉の選び方は色々あるのよね。特に小さい子供ほど『遊びの要素』があった方が面白いので、そういう言葉をもっと獲得しておけばよかったなと思う。そして、そういう「コミュニケーションの知識」をもっと広く教えてほしい。必死にいろいろ探って、「こういう言葉もある」と分かったころには成長してて使えなくなってた。

『親の言葉による虐待は、子供がポジティブな自己像(自分には愛情があり、人からも愛され、人間として価値があり、能力もあるというイメージ)を持つ能力をはなはだしく損なうばなりでなく、将来どのようにして世の中とうまく付き合っていけるかということについてもネガティブな像を作り上げてしまうのである。』129p
これだよねって思う。親の何気ない言葉が子供を踏み潰していくけど、言っている親は『冗談』なんだよね。ブスも料理下手も、可愛げがないも、怖がりのくせにも……。
大人になってびっくりしたんだけど、私ずっと父から「遊園地の揺れる舟、お前はずっと怖がって景色もみなかっただろう」って言われてて、ああ。私をバカにしてるんだなと思ってたら、大人になってから「実はわしも怖かった」って言い出した。は?今まで「お前、怖がりだもんな」って言ってたの何??としか思えなかった。いや。どう考えても『人を馬鹿にする文脈』だと思ってたけど、もしかしてあれも「自分も怖かったけど、そんなことは言えないから、子供が怖がっていた部分だけ話してた」って事なのか??と頭を悩ませてしまった。たぶん、父の中では「自分も怖かった」という文脈で話してるつもりだったんだろうな。……親との会話の難易度が高いと思うのは私だけだろうか。最近、ちらほらこういうのが出てきて、「言葉が足りないし、子供のせいにして自分の弱さを認めてこなかったのに、歳とって気が弱ったからって、子供に慰め求めるのやめてくれ」としか思えないのよね。

六章 暴力を振るう親
暴力を振るう親の話。他の章と話が被る様になってきた。

『近年の調査によると、多くの場合そのようなことはなく、それどころか体罰はおろか普通に叱ることもろくにできないケースすらあることがわかってきた。彼らは自分が親からされたことへの反動で、子供をしつけることができないのである。』147p
これは暴力を振るわれてきた子供たちが大人になって親になった場合の話だけど、他の虐待でも似たようなものだと思う。嫌いな親と同じようにならないように……と思っても、子供に適切にかかわる方法を教えてもらえることもないので、出来るのは『親と同じことをしない』という事だけ。
虐待の影響は根深い。


七章 性的な行為をする親
性的な行為をする親の話。性的な虐待は他とは少し違う特殊なもの。時にそれを嫌悪したり、快楽に身を任せすぎたりと、バランスが取れなくなることも書かれてる。
ここに『裸の写真を撮ること』も入ってた。母がやったことがこれだったなぁと思う。そして、兄弟間でのレイプの話も……。兄弟って言うか、従姉妹の場合はどうなるんだろう。性的って言うか、身体を撫でまわすとかその程度の話の場合は……と色々考えてしまった。こういうの『程度の問題』を考えちゃうな。

『私がカウンセリングした被害者はたいてい一家のなかで最も健康的な人間だと言うと、多くの人はみな一様に驚いた顔をする。』170p
こういうのは一番弱い人間に負荷が来て、一番弱い人間の精神が壊れてくけど、壊れていく自覚がある人は正気なのよね。怖いのは虐待の再現をしながら、それに気が付かない人たち。時々、ギョッとするようなことを子供にしたり言ってる人を見かけると、この人もそうやって育ったんだろうなと思うようになってしまった。そして、それに気が付かない。大半の人は『気が付かない』し『親は正しい』し『自分も正しい』と思ってる。

妹の子育てを見てると、「カンニングをしてもいい」と子供(小1)に教えてた。母はそんな事を教えてないけど、父は似たような事を教えてた。「気が付かない方が馬鹿なんだ」とも言ってたけど、それも同じ……こうやって虐待は再現されるんだなと思った。


八章 「毒になる親」はなぜこのような行動をするのか
親から教えられた価値観をそのまま再現して、家庭内に持ち込むという話。

『それらは意識の上にも上がっていない隠されたルールであり、「父親よりも偉くなるな」、「母親をさしおいて幸せになるな」、「親の望む通りの人生を送れ」、「いつまでも親を必要としていろ」、「私を見捨てるな」などがそれである。』177p
全部、見覚えがあるルールだなと思って読んでしまった。貯金額は父親を越えちゃダメだと思ってるし、母親は見捨てちゃダメだし、親の望む通りに結婚した方がいいのかなと思ったし(しなかった)、親の体調が悪いって言うから実家に戻って来ちゃったし。
自分の人生があるなんて考えられない。親が死んだら私もやっと死んでいいって思えるんだろうなと思う。

『「毒になる親」は、自分の危機にどう反応するか
1.事実の否定
2.問題のなすりつけ
3.妨害行動
4.三角関係を作る
5.秘密を作る』184-185p
事実の否定というか『話し合いもしない』ことで「それを否定する」のよね。うっかり話の議題に上げたら、「親はそんなつもりじゃない」という結論になる。問題は全て、「自分のせい」といいながら内心は子供のせいだと思ってるとか。
妨害は私が家を出るときの「裏切者」っていう言葉かな。三角関係も心当たりある。父と仲良くしたら、母に嫌われて、母と仲良くしても父はいい顔をしないっていう……合体したまま子供なんていない方がよかったんじゃない?って言ったらダメ?
秘密を作る……は、「誰も信用しちゃだめよ」というものかな。うちの親もよく言ってた。

でも、外の人間に助けを求めた方が、健全な家庭になる。ただ、家庭の外の社会が『家庭を助けるシステム』を上手く作ってるかどうかは別なのだけど。


第二部 「毒になる親」から人生を取り戻す道
九章 「毒になる親」を許す必要はない
赦されるために許すという事をしなくてもいいという話。……これ、以前読んだ時もそうだなと思った記憶がある。なんでこんな事が書かれてるのだろうと思ったけど、多分この章は『キリスト教徒』に向けた言葉なのかなと思う。仏教だと別に悪人を許せとは言われない。『悪人も救われるんだから、一般人も救われる』というものはあるけど、許すではないのよね。でも、キリスト教は『赦しなさい』と言われてる。この本を勧めてくれた知人もキリスト系だったらしいけど、『赦さないとダメだ』という感情に囚われてた。

これ……身も蓋もないことを言うと、『赦しても許さなくても、あなたの苦しみは変わらない』って事なのよね。許しても許しても、癒しにはならないし、前進にもならない。そういう話が書いてある。それでも『赦す』と思えるなら、許したらいいよっていうだけ。


十章 「考え」と「感情」と「行動」のつながり
チェックリストを引用する。
200-201p
『〈親との関係における私の「考え方」〉
1.親は私の行動しだいで幸せに感じたり感じなかったりする。
2.親は私の行動しだいで自分を誇らしく感じたり感じなかったりする。
3.親にとって私は人生のすべてだ。
4.親は私なしには生きられないと思う。
5.私は親なしには生きられないと思う。
6.もし私が本当のこと(略)を打ち明けたら、親はショックで倒れてしまうだろう。
7.もし親にたてついたら、私はもう永久に縁切りだと言われるだろう。
8.彼らがどれほど私を傷つけたかを話したら、私はきっと縁を切られてしまうだろう。
9.私は親の気持ちを傷つけそうなことは何ひとついったりしたりすべきではない。
10.親の気持ちは自分の気持ちよりも重要だ。
11.親と話しをすることなど意味がない。
12.親が変わってさえくれれば、私の気分は晴れる。
13.私は自分が悪い息子(娘)であることについて親に埋め合わせをしなくてはならない。
14.もし彼らがどれほど私を傷つけたかわからせることができたら、彼らも態度を変えるに違いない。
15.彼らがたとえどんなことをしたにしても、親なんだから敬意を払わなくてはならない。
16.私は親にコントロールなどされていない。私はいつも親とは闘っている。』200-201p

『〈親との関係で私が感じる『感情』〉
1.私は何事でも親の期待通りにできないと罪悪感を感じる。
7.私は親のために十分頑張っていないと罪悪感を感じる。
11.私は親に怒られると怖い。
16.私は親に反対して立ち上がるのは怖くてできない。
22.私は親が私の(夫、妻、恋人、友達)を好きでなかったら悲しい。
29.私は親が私を通して自分の人生を生きようとしたら腹が立つ。』205-207p

『〈親との関係における私の行動パターン〉
服従のパターン
1.私は自分がどう感じているかに関わりなく親の言うことに従うことがよくある。
5.私は親と一緒の時には表面的に合わせているだけで”ニセ者”になっていることがよくある。
10.私は親を喜ばせるために自分を犠牲にすることがよくある。
反逆のパターン
12.私は自分が正しいことを示すためにいつも親と口論する。
16.私の我慢は高限界を越え、親とは縁を切った。』209-211p

多すぎるので一部だけ抜粋してみた。チェックリストは頷けるものが多いけれど、それがわかったからと言って何かが変わるわけではない。そして、親と縁を切ったというのも親に振り回されているとなってる。……なんて言うか、親という『呪い』に近い気がしてしまう。

親によって刷り込みによって『考え方』が作られ、それによって『感情』が出てきて、そこから『行動』が起こるという話。これ、一掃するのは絶対無理だけど、気が付くことで変わることはあるのだと思う。でも、これに気が付かずに『常に他人(子供)のせい』に出来てしまうのが毒親なんだよな。毒親から逃れるためには自ら『毒親になる』という選択肢を大半の人は無意識で選ぶというのも覚えておきたい。

十一章 自分は何者か――本当の自分になる
自分の考えを持って、それを冷静に伝えつつ攻撃的になってはいけないという話。
『攻撃しない』事は難しいのと同時に、この章に書いてあるのはコミュニケーションで『NO』と言われた時にそこに怒りを込めずに返す方法だとも思う。コミュニケーションを学ぼう。

十二章 「怒り」と「悲しみ」
『怒り』と『悲しみ』の管理の話。まず、子供の時の責任は全て親。親に悪意があったかなかったか、理由があったかなかったかは一旦脇に置いて、『子供の時のことで傷ついた』ことは事実だと認める。
怒りと悲しみを感じて上手く管理することが大切。

『自分の責任を取る
1.親から独立したひとりの人間になること。
2.親との関係を正直に見つめること。
3.自分の子供時代について、目をそらさずに真実を見つめること。
4.子供時代に起きた出来事と、大人になってからの人生とのつながりについて、認める勇気を持つこと。
5.親に対して本当の感情を表現する勇気を持つこと。
6.現在親が生きていようが死んでいようが、彼らが自分の人生に及ぼしている支配力とはっきりと対決し、それを減少させること。
7.自分が人に対して残酷だったり、人を傷つけたり、人をこき下ろしたり、人の心を操ったりするような行動を取ることがある場合には、それを改めること。
8.親に負わされた傷を癒すため、適切にサポートし援助してくれる人たちを見つけること。
9.大人としての自分の力と自信を取り戻すこと。
』239-241p

このステップが必要……らしい。長い。無理。

十三章 独立への道
親と”対決”するために必要な手順の話。
親と対決する目的
『■親と正面から向き合い、はっきりと話をすること
■そのことへの恐怖心をこれを最初で最後のこととして勇気を出して乗り越えること
■親に真実を語ること
■親と今後どのような形の関係を維持することが可能かを判断すること』243p

対決の前にクリアにすること
『1.その結果予想される親の「拒絶」、「事実の否定」、「怒り」、その他のネガティブな反応によってもたらされるであろう不快な結末に、対処できるだけの強さが自分にあると感じられる。
2.ひとりだけで孤立しておらず、理解してくれる友人やカウンセラーなど多くの人たちから十分な励ましがある。
3.「手紙書き」と「ロール・プレイ」による練習も十分してあり、「自己防衛にならない話し方」も十分練習してある。
4.子供時代の自分の身に起きた不幸な出来事について、自分には責任がないことがはっきりと確信できている。
』246-247p

手紙に書くこと(練習として何度も書く。あなた=親)
『1.あなたが私にしたこと
2.その時の私の気持ち
3.そのことが私の人生に与えた影響
4.現在のあなたに望むこと』249p

話し合いの場合。(練習も含めて)
『1.(略)全部言い終えるまで聞いてほしい。
2.(略)途中でさえぎったり言い返したりしないでほしい。
3.私がすべて言い終えたら、その後は(略)あなたの言い分を言ってくれてかまわない。
4.以上のことに同意しますか?』251p

親からの反論予想や、周囲からの反論がある可能性も書かれてる。これでもかと、『対決』に関する情報を盛り込んであるので13章だけでお腹一杯。

そして、ここまで背負わなくてもいいけど人との話し合いにはある程度こういう要素はあるなと思う。『私が話し終わるまで何も言わないで』というようなセリフは海外ドラマでも時々見かける。たぶん、コミュニケーションの基本のひとつのような気がする。

それでも、伝わらない場合は、自分の健康を害するほどの関りしかしてこない親ならば縁を切るという覚悟が必要ともある。
親との縁ってそう簡単じゃないから、皆苦しいんだよね。
自助グループやカウンセラーとあるけど、日本でそんな簡単にみつかるものなのかな……とも思う。こういうの日本だと見つけるのすら大変そうだけど。


十四章 セラピーの実際
十二、十三章のまとめのような章。フロイト系の精神科医は近親相姦(的行為)に懐疑的なのでお勧めしないとある。あれ、これ、どこかで見たような……と思ってしまった。「子どもたちは、いま」で、トリイが対談相手の斎藤さんに警戒したって言ってた理由ってたしか『フロイト系の精神科医』だったからな気がする。フロイト系と言われてもよくわからなかったけど、性虐待に関する話は否定派なのがフロイト……と考えたらいいのかな。少なくともそう思われていたってことで。精神科医ならだれでもいいわけではない。

怒りと悲しみの扱いと、手紙とロールプレイの話。そこに「ノー」という練習と子供に戻ってから、大人に戻る練習というのがある。
大人が『傷ついた子供』に戻る時間は大切だと思う。私も以前、そういうロープレをする講習に参加したけれど、実は『そういう講習』とは思ってなかったので、まったく子供に戻れなかった。こういうのは事前説明がないと難しい。大人がいきなり子供になれるわけない。

でも、そういう物だとわかっていたら、また別だったかもしれないなとは思う。

十五章 「毒になる親」にならないために
自分で毒親の鎖を断ち切るという話。
毒親にならないために子供は持たないというのも正しい気がするんだけど……なんで、その選択肢はないのだろう(そういう趣旨の本ではないから)


エピローグ
『愛情とは、単に感情を意味するだけではない。それは態度でもあり、行動の仕方でもある。(略)「毒になる親」の言っている”愛情”とは、あたたかい心をはぐくみ、子供を優しく安心させてくれる態度や行動のことではほとんどないのである。』310-311p
愛情なんていう曖昧な言葉にしてしまうから、そうなるしかない。だって『子供が生きている』のは少なくとも傍にいる大人のおかげで、子供が生きている=愛情があるからだ。とも言える。愛はいらない。知識を親に与えてほしいし、子供にもちゃんと与えてほしい。それだけで変わるものが多いと思う。


訳者あとがき
『経済成長に国をあげて狂奔してきた結果が、温かい愛情を与えられずに育てられた子供にあらわれているのだ。』314p
これもなんていうか……突飛だなと思う。温かい愛情なんて今までどこにもなかったと思う。ただ運よく『生き延びた子供』がいただけ。そもそも『子供が死ぬ』のは当たり前で、今みたいに『生まれた子供がほとんど成人を迎える事がない』時代とは比べようがない。けど、『子供が生き延びた分、生き延びた子供に手間暇をかけなくてはいけない』という事になってるのが現代。

そして、改めて読んでも日本だと『カウンセラー』探しの難易度が高すぎる気がする。都会じゃないと無理。ド田舎でどうやってそんな特殊な人を探せばいいのか見当もつかないし、見つかったとしても交通費だけでも馬鹿にならない。時代は進まないなぁと思ってしまった。

読み直してよかった。
でも、現代には現代にあった本があるような気がする。そしてこの本は『毒親に育てられた子供が成人してから読む本』で、『毒親に育てられている子ども』が読む本ではない事も気を付けたい。
この本は社会状況を除外して『親子の関係』だけを語ってるけど、現代の虐待は『親』『子供』『社会』の三つの立場から語る必要があると思う。
人にお勧めする時は『凍りついた瞳 2020』も一緒にどうぞと言いたい。日本の現状も合わせて理解していくといいのかも。


『毒になる親』