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「子どもの権利条約ハンドブック」を読んで

2024/03/09

子どもの権利条約ハンドブック
– 2016/2/5 木附 千晶 (著), 福田 雅章 (著),
DCI日本=子どもの権利のための国連NGO (監修)

子どもの権利条約ハンドブック

「子どもの権利条約ハンドブック 文:木附千晶 福田雅章」を読んで

子どもの権利条約の本。聞いたことはあるけど、詳しくは知らないし、よくわからなかったので、なるほどと思いながら読んだ。

はじめにで「こどもは大人の家来ではない」という話が書いてある。当たり前と言えば当たり前なのだけど、『親』の権力は強大すぎて親自身も気が付いていなさそうだなとは思う。

第1章 愛される権利
・呼びかけ、向き合ってもらう権利
・子ども期を豊かにすごし、大きくなる権利
・大人と同じように持っている権利

子ども視点の物語が権利の説明として書かれている。分かり難いと思う人はいるかもしれないと思った。

子どもの呼びかけには必ず向き合わないといけない……これ、年齢が低くなるほど「え。また?」とか「これくらい」と思ってしまいがちだけど、年齢が低いうちにしっかりと向き合っておかないと、年齢が上がると『大人は聞いてくれない』が固定化してしまって子供が大人の話を聞かない事になる。権利という話を抜いても、信頼の話として。

大人と同じように持っている権利は、性別で差別するなという話だった。そうは言っても、大人の固定観念を払しょくするのは難しい。結局、大人の価値観を子供も継いでしまうんだよな。


第2章 自分らしく豊かに大きくなる権利
・遊んだり、のんびりしたりする権利
・自分の力を伸ばす権利
・愛してくれる人と暮らす権利
・健康に暮らす権利
・身近な人に無視されたり、なぐられたりしない権利
・だれからも自分をつぶされない権利

子どもが大きくなるために必要なものは意外と多い。
愛してくれる人と暮らす権利は、虐待や親の病気などで一緒に暮らせない場合は里親などの制度でも愛される権利があるという話。健康と殴られたりしない権利は、虐待に関する話。自分をつぶされない権利は児童労働など子どもに良くない環境の話。

事細かに、でも必要な部分をピックアップして分かりやすく書いてある。
これ『子供の権利』となってるけど、基本的には『大人が持っている権利』で『子供だけが持っている権利』ではない。『大人が子どもに保証する義務を負う』という話。子供にはまだ力がないから。大人は『国にそれを保証しろ』と言える力がある。デモなどがそれなのだろうけど、私、今までそういうの教えられてこなかったな。

第3章 社会の中で大きくなる権利
・自分の考えを持つ権利
・秘密を持つ権利

考えを持つ権利は、大人と違う権を持っていいという話。秘密を持つ権利はプライバシーの話。
これ、子どもの考えは学校で同調圧力でつぶし、秘密は家庭でつぶして……ではないのだろうか。私がそうだったのだけど。手紙は平気で開けられる。(悪意はなく誰宛かを見ていない親だった)などもあるので……親が無頓着だと子供の権利なんて『ないもの』にされる。


第4章 特別な助けを求める権利
・障害を持った子どもの権利
・悪い事をしてしまった子どもの権利
・難民やマイノリティーの子どもの権利

困難を抱えた子どもたちには特別な配慮が必要……。どこまで支援しているかよく知らないけど、支援が必要な子供に支援する義務が大人側に発生する。


第5章 子どもの権利を生かすために
・助けを求める権利
・おとながやらなければならないこと
・国がやらなければならないこと
・国連がやらなければならないこと
・国連への報告審査制度と勧告

大人は子供の話をしっかり聞いて、国は大人たちが子どもの話を聞けるように支援が必要……と言う話。
よく読むと、私が子どもの頃には日本も子どもの権利条約を受け入れてたらしい。
聞いたことないぞと思ってしまった。さらに読むと勧告を無視して日本は子どもの権利を尊重してないとも書いてあった。なるほど。
体罰は禁止されたというニュースが以前あったけど『だったら、どう子どもに伝えるのか。しつけるのか』という部分は全く聞かなかったので、国連がうるさいから禁止という感じがすごいなと思う。


この本を読んでいる途中で埼玉の『虐待防止条例』の話が出てきた。子供を一人で留守番させるのは禁止という条例。この条例に反発の声が上がって取り下げられたけど、それは『禁止』が先にあって『子供を一人にしないための施策』がなかったせい。

スクールバスや人員・予算増大など国や自治体がやるべきことをやってから最後に『禁止』にしないと、『親(特に母親)だけが負荷を負う』ことになる。


ところで、創作・表現のゾーニングはどのあたりが『子どもの権利条約』にひっかかるのかなと思いながら最後の全文を読んでみた。
第13条
1 児童は、表現の自由についての権利を有する。(略)
2 1の権利の行使については一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a)他の者の権利又は信用の尊重
(b)国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護

……このあたりかなと思ったけど、『表現する側』ではなくて『見る側』としての話なので違うかも。

第17条 締約国は、大衆媒体(マス・メディア)の果たす重要な機能を認め、児童が国の内外の多様な情報源からの情報及び資料、特に児童の社会面、精神面及び道徳面の福祉並びに心身の健康の促進を目的とした情報及び資料を利用することができることを確保する。このため、締約国は、
e)第13条及び次条の規定に留意して、児童の福祉に有害な情報及び資料から児童を保護するための適当な指針を発展させることを奨励する。

これかな。『有害な情報及び資料から児童を保護するための適当な指針』が青少年保護育成条例にあたるのかな。


検索すれば『子どもの権利条約』は出てくる。

読み応えのある本だけど『情報』の本なのでそのうち変わる可能性はあるなと思う。でも、読めて良かった。

『子どもの権利条約ハンドブック』