鬼よぶわらべ歌 (鬼遊び) 単行本 – 2019/4/22 廣嶋玲子 (著), おとないちあき (イラスト)
「鬼遊び 鬼よぶわらべ歌 作:廣嶋玲子 絵:おとないちあき」を読んでみた。
鬼遊び、春バージョン。
夏と同じく、歌から始まって、歌で終わる。
歌の最後は次の季節に繋がるような感じで終わっているのもいい。
雰囲気がすごくいい……。
表紙は緑で楽しげにも見えるのもいい。よく見ると狐の面が怪しいけど、周囲の色合いが明るくて禍々しい者には見えない。
・花輪あみ
町から田舎に療養に来た女の子……という設定に一瞬混乱する。ガラスのはめ込んでない窓。どういう家を設定してこうなってるのかがさっぱりわからない。療養に来てるはずなのに、『ガラスのない窓のある家』に住んでいる??と不思議に思ったけど、その辺りは前回と同じくスルーすることにした。物語の筋には関係がないから。
町から来た女の子が、村で『入ってはいけない林』の中に入って花輪を作ってしまう物語。
こういう約束事を破るのは、男の子というパターンが多いけどこの物語では『町から来てるので田舎を馬鹿にしてる女の子』という設定で約束事を破らせてる。こういうのもいいなと思う。この物語は最後は『鬼にさらわれるのだろう』という匂わせで終わっている。
・鬼ごっこ
足が速すぎて、遊びに加われない男の子が『鬼でもいいから鬼ごっこをしたい』と呟いたことで、鬼と鬼ごっこをする羽目になる。
足をケガして逃げきれなくなった男の子は目の不自由な老婆に相談して……助かる。
ふとした言葉が鬼を引き寄せる物語。よくある物語だけど、『鬼』も最後は幸せになるのは珍しいなと思った。
・おままごと
一年に一度だけ家の扉があく。その家に入ってみたかった女の子が好奇心から入り込んで、中でおままごとをすることになる。家にはおままごとをしてほしい事情があって……。
素敵なホラーで好き。子どもに見えるけど実は……というのもゾッとする。
・潮干狩り
大潮の前には貝をとってはいけないという決まりを破った男の子たちの物語。悪童たちは寸でのところで助けられる。
王道の『約束事を破ると悪いことが起こる』というパターン。安定の怖さ。
・草相撲
とあることから、男女分かれて喧嘩になってしまう。巫女も「怒りや憎しみは鬼の大好物だから、やめろ」と止めるが、どちらもやめようとせず相撲で決着をつけることになる。
優しい子が鬼と約束を結んでしまい、大変なことが起こる。『怒りや憎しみは鬼の大好物』という巫女の言葉が物語の最後までいきわたっていて、子どもたちは大反省するオチになっている。
特定の誰かというより、『全体の空気が悪いものを引き寄せる』というのも、あまりない形だなと思った。
・だるまさんが転んだ
『お守り』を忘れて山に入った男の子は山から帰る途中で鬼に出会って、追いかけられる。鬼は見ていない時にだけ動いてくるという事がわかって、一計を案じる。
『お守り』が鬼除けだったのだろうなという事はわかるけど、悪意があってそうしたわけではないのでかなり不条理な話だなと思う。
最後まで楽しく読めた。ドキドキワクワクヒヤヒヤ。夏の夜の一冊にちょうどいい。
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