「5番レーン 作:ウン・ソホル 絵:ノ・インギョン 訳:すんみ」を読んでみた。
韓国の小学校を舞台に水泳に励む子供たちの物語。
小学6年生という微妙な年齢の子たちの日常が透明で綺麗に描かれている。
……ただ、日本とはシステムが違うような気がする。学校の水泳部がプロで、放課後の水泳教室はアマチュアという区分けがあるらしい。小学生でもう『プロ』と『それ以外』に分けられてるのは怖い。日本だと大会に出る=実力ありで将来有望みたいなイメージな気がするんだけど。アマチュアの大会って何??というところから、理解が追い付かなくなってしまった。
子どもたちの感覚や日常は何となくわかるけど、『プロへの意気込み』のような部分は全くわからない。これは『上流階級の子どもたち』として読むべきなのかとも考えてしまった。
物語自体は子供たちの心の揺れを描き、子供たちに何を伝えたいのかははっきりしている。ただ、物語の舞台が非現実的すぎて『異世界』に見える部分もある。
さらに言えば、日本では水泳の授業があるので泳ぐだけならば、大半の子どもたちが経験していると思う。良くも悪くも……。悪い経験しかない子どもたちにとってはさらに『異世界観』が増しそうだなと思ってしまった。私もそちら側だ。水の中が心地いいと思ったことはないし、泳げないことで怒鳴られて育ってきた。そもそも、『やりたくもない水泳をやらされた』子ども時代だったので、どんなにきれいな水への描写があってもざらりとした感覚がぬぐえない。
ただ、これらは私の経験と物語が合わなかっただけなので、物語が悪かったわけではない。
物語はナルがチョヒに負けるシーンから始まる。チョヒの水着のせいだと悩み、ナルはチョヒの水着を盗む……そして。
というのが大筋。そこにナルの幼馴染スンナムや水泳部の仲間たち。新しく転校してきたテヤンが物語を彩っていく。いろいろな思惑が交錯していく様が美しい。
良質で繊細な物語であり、子供たちに必要なメッセージが詰まった作品であることに変わりはない。児童書でお勧めは何かと聞かれたら、『5番レーン』をあげる。
ただ、これは『大人が子供に読ませたい物語』であって、『子どもが読みたいと思える物語』ではない気がするので、大人にお勧めはするけど子供には勧めない。
大人が読む児童書としてお勧めの作品。
ごちそうさまでした。
『5番レーン』
