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絵本「ぼく」を読んで

2025/01/16

闇は光の母 (3) ぼく – 2022/1/20 谷川 俊太郎 (著), 合田 里美 (イラスト)
ぼく (闇は光の母)

絵本「ぼく 作:谷川俊太郎 絵:合田里美」を読んでみた。

テレビで創作時の話をやっていた。イラストを何度も書き直したり、文章を直したりという変化も興味深かった。

『ぼくは しんだ じぶんで しんだ ひとりで しんだ』

最初からかなり衝撃的な言葉。
でも、誰にも死んだ人の気持ちはわからない。だから、この絵本でも「なぜだかわからない」事になっている。死んでしまった『ぼく』のきもちを書いてある絵本。
絵本自体は説教的ではない。詩的な言葉でふんわりしていて、結局わからないものだけが残る。

ちゃんと最後には相談窓口の連絡先も書いてある。
ただ、でもね……とは思ってしまう。この最後の一枚『編集部より』があることで、一気に説教臭く感じる。

絵本の文章も絵も素敵だ。死にたい気持ちを増幅させるわけでもないし、死んでしまった人を責めてもいない。もちろん、その周囲にいた人たちに対しても責めるものがない。フラットで空気のように軽く、でもすっと馴染むような言葉。ただ繰り返される『ぼくは しんだ』だけがずっしりと響いてくる。でも、その重さが『生きている読者の重さ』にも返って来るような気もする。

『死んだ』が重く感じるのは、生きているから。それは死の重さではなくて、生の重さのような気がする。死は軽い。『状態』でしかないし、『忘れ去っていくものになった』というだけでしかない。生きてる人間の方が重い。何かを残すのは死者ではなくて、生者。

だから、もう残すものがないと思った時に『死にたく』なるような気がする。

『なにも ほしくなくなって なぜか ここに いたくなくなって』
この文章ってそういう事のような気がする。もう、何も残さなくていい。

素敵な絵本だった。
感化されなすい状況の時には読まない方がいいかもしれない。そこだけ注意。


絵本『ぼく』