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「わたしはマララ」を読んで

2024/06/09

わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女
– 2013/12/3 マララ・ユスフザイ (著), クリスティーナ・ラム (著), 金原瑞人 (翻訳),

わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女

「わたしはマララ 著:マララ・ユフスザイ クリスティーナ・ラム 訳:金原瑞人 西田佳子」を読んでみた。

マララ」の前に出版された一般向けの本。児童書より深く書いてあるのかなと思ったけど、期待したマララさんのエピソードは児童書よりもさらりと流されていて、宗教や紛争の話が増えていたような気がした。

……思ったのと違う。宗教と政治がメインなのはわかるし、児童書よりも複雑な話になっていて脳が追い付かなかった。あと少し残虐な部分が詳しくなってる感じもした。


でも、この背景があるからマララさんはマララさんになったんだよなとも思う。

第一部 タリバン以前
地震が来るまでの幸せな時間の話。

気になった文章。
『教師も生徒も、自分の意見を持ってはいけない。(略)偏見のない広い心や創造性よりも、命令に素直に従うことを重視するような学校に、うんざりしていたのだ。』68p

どこかで見たような学校の事を書いてある……ようなと思ってしまった。日本も大半が『命令に素直に従うことを重視する』ような気がする。その方が管理しやすいから。これはマララさんの父親が学校を作る時の話。で、父親は創造性を重視していたという事がわかる。……そうじゃないと、マララさんが自由に意見を言う子供に育たないよなと思った。

父親は宗教指導者の家の子どもとして生まれたけど、貧乏だったとある。権威はあるけどお金がない家だったらしい。なぜなのかは書かれていないけど、『パシュトゥン人はお客が来たら、もてなさないといけない』とあるので、知名度と権威のある家はお客のもてなしで貧乏になるのかなと思う。父親が学校づくりで四苦八苦の時も『客がたくさん来るから金が貯まらない』と共同経営者に文句を言われるとあったので、……人脈と権威がある人ほど金はない状態になりやすい文化なのかなと思う。


第二部 死の渓谷
タリバンが谷を占拠して、政府と衝突。国内難民になるまでの話。

複雑化しているので、理解が難しい。イスラム教も色々あるよ……というのはわかる。それが、政治と絡むので、ややこしい。タリバンと対立してるように見せかけて、単にアメリカからの支援欲しさ……みたいなのとか。外国との絡みまである。世界は複雑。

国内難民になった部分を読んでた時に、テレビで難民の話をやっていた。最初は『国内避難は難民ではない』と支援できなかったということだった。それをトップ(だったかな?)が『国内避難も困っていて支援が必要なら難民だ』と言って支援したということだった。

教育どころか住処まで奪われた経験がマララさんの原動力の一つなのかな。


第三部 三発の銃弾、三人の少女
本格的に、教育を訴える活動をして撃たれるまで。

撃たれるまでは本当に子供を襲うとは思われてなかったらしい。イスラム教では基本的に女子供に手出ししない……という決まりみたいなものがあるみたい。ただ、『基本的に』なので、例外はある。マララさんはその例外になったということらしい。

『「お父さん、パキスタンの政治家は、どうして国民のために働いてくれないの? 国民が安全に暮らせるようになってほしい、飢えることも停電で困ることもなく暮らせるようになってほしいって、どうして思ってくれないの?』266p
これ……すごいなと思う。政治家が『何をするべきなのか』がわかってないと、出てこないよね。私16でこの思考は持てなかった。「政治家は国民が決める」「政治家が決めたことに国民は従う」だと思ってた。……なんか、そんな風に習ったような気がするんだけど。違ったかな。


『「わたしは賞なんかほしくない。娘が元気でいればそれでいい。全世界をやるといわれても、娘のまつげ一本だって差しだすつもりはないわ」』283p
これはマララさんのお母さんの言葉。
これだけの思いでいたのに、撃たれるなんて……。その後もマララさんだけ先にイギリスに行ってしまって、他の家族のパスポート発行が遅すぎて母親が父親を急かして、やっと移動できたというエピソードも入ってる。母、強い。

第四部 生と死のはざまで
第五部 第二の人生

撃たれた後の話。治療のために海外に行ったけど、家族は後から来た……。その間、ずっとお金と父親が撃たれたんじゃないかと不安だったと書いてある。撃たれた時の記憶は消えて、友人の名前や単語などいくつかの記憶も曖昧状態になるくらいには酷い状態だったとある。

その生きるか死ぬかの状況でも政治が絡んでくる。政治がらみ怖すぎる。

『「お父さんは女性の権利を守るべきだっていうけど、家のことは全部お母さん任せでしょ。カップひとつ洗わないじゃない」』394p

男性の感覚は所詮こんなもの……。あれ、でも「マララ(児童書)」の本には、マララさんがこういったら父もするようになったと書いてあった気がするのに、この本だと『いままで同様、父はキッチンに入ろうとしない』になってる。ん?入らないままなの??


『ひとりの子ども、ひとりの教師、一冊の本、そして一本のペンが、世界を変えるのです』402p

短く分かりやすくテンポがいいフレーズ。10年前に耳にしていた言葉。印象的だったよな。と今も思う。
世界はどこまで変わったのだろう。

wikiで調べたらマララさんはパキスタンに帰ることができたらしい。でも、元通りではなかっただろうな……と思った。詳しく書いてないので、たぶん『見に行く』とか『友達に会いに行く』程度だったのかなとも思ってしまったけど……どうなのだろう。今はあまり話題に出てこないし、調べてもよくわからなかった。でも、何かの活動はしてるのだろうなと思う。

読んでよかった。
信仰の強さと、信念の強さがすごい人という事がわかった。同時に『普通の女性』という事も。普通であることも大切。
弟の存在もしっかり書かれていて、家族愛もすごいなと思った。

『わたしはマララ。わたしを取り巻く世界は変わったけれど、わたしは変わっていない。』407p

終わりの一文まで、素敵。


『わたしはマララ』