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「マララ」を読んで

2024/06/04

マララ 教育のために立ち上がり、世界を変えた少女  – 2014/10/29
マララ ユスフザイ (著), パトリシア マコーミック (著), 道傳 愛子 (翻訳)

マララ 教育のために立ち上がり、世界を変えた少女

「マララ 教育のために立ち上がり、世界を変えた少女 著:マララ・ユフスザイ パトリシア・マコーミック 訳:道傳愛子」を読んで

児童書なので文字が大きい……と思ったけど、文字数は多めだしページぎっちりな感じなので読むスピードは上がらなかった。

内容は女の子の教育を訴えるマララさんの手記。2014年って、10年も前なのか……と思ってしまった。ついこの間のような感覚になっているのは私が年をとってるせい。こうやって時間の感覚がどんどん鈍くなるんだろうな。

読みたいと思っていた本がやっと読めて満足。

マララさんが子供だったので当時、私も正直『どこをどうしてこんな風に育つんだろう。親の洗脳?』と思ってしまっていた。確かに親の考えは重要なのだけど、親の洗脳と思ってしまった事は反省した。親は娘の活動は反対したくないけど、控えたい感じだったんだなという事がわかった。でも実際にしたことは危険もしっかり伝えた上で、娘の判断を尊重して応援するという……むちゃくちゃ素敵な親だった。……じゃないと、こんな子供にならないよね。
親の不安が手に取るようにわかってしまうのは、私が年をとってしまったせいもあるんだろうな。

本は時間軸に沿って書かれてるので、わかりやすい。

第一部 タリバンがやってくる前
子供時代の自由な感じが書かれている。自由とはいえ、不穏な空気はあるけどまだ子供にまで見える形では存在してない。地震が起きた後から子供にも見える形で不穏な空気が入り込んでくる。
どこかで読んだような気がした。『逆襲する宗教』にも軽くイスラム教の流れが書いてあったのを思い出した。他の本と情報が繋がると嬉しくなってしまう。

タリバンは最初、地震被害の復旧に尽力して入り込んだという部分も読んだ気がする。
タリバンだけではなくて、宗教はそうやって人の間に入り込むことはよくあるというのを、他で読んだこともある。だから、災害が起きた後は要注意。

第二部 渓谷をおおう影
政府軍との衝突の話。爆撃の音を聞きながら暮らすなど、誰の目にもわかる『危険』な日常が書かれてる。でも、しばらくすると『慣れる』ともある。これ、ウクライナの話にもあったような気がする。最初は爆撃の音が怖かったけど、徐々に慣れてしまう。怖いことは怖いのだけど、怖がっていられないという感じになるらしい。

第三部 声をあげはじめる
マララさんが、声をあげはじめたきっかけは『誰もやる人がいなかったから』という事らしい。タリバン批判をする人たちはターゲットにされて殺される事が起きたから。本当はもう少し大きな子に声をかけていたけど、だれも『インターネットにタリバン支配の日常を書く』という事をしたがらなかった。ということで、マララさんが自ら立候補したという流れになるほど……と思った。

第四部 タリバンの標的
脅迫状が来て、打たれるまでの話。襲撃直前の記憶はないらしいので、聞いた話が書かれているらしい。それにしても、マララさんって負けず嫌いなのか。テストの点数が一番でなければ気が済まないって。すごい。

第五部 新たな生活、故郷を遠く離れて
打たれた後、イギリスで暮らすという話。
この事件は覚えてる。子供でも容赦ないタリバンとは言われていたので、イスラム教はそういうものなのかなと思ってた。でも、イスラム教でも子供を罰するのは良く思われてないらしいということがこの本で分かった。
過激でショッキングな方が、『主流』なのかなと思ってしまうの危険。とくに宗教は宗派がわかれるのだから、その人にとって『都合がいい教えだけをピックアップする』とか『都合よく湾曲する』みたいなことが行われる。思い込まないように気を付けようと思った。


本に書いてあったのはこの後、またあちこち飛び回るみたいなものだった。
『女の子も男の子も全ての人が学校に行けますように』

こう言い切れるのすごいなぁ。
でも、なるほど……と思ってしまったのは、信仰心がとても強いなという事。
事あるごとに『神様』に願ったり、感謝したりして『対話』してる言葉が出てくる。こういうのなんていうか『さすが』と思ってしまった。その『神様』がいるから乗り越えられるし、背負うことも出来るみたいな部分もありそう。まぁ。それが信仰なのだけど。

別に『子供時代を犠牲にした』とか、『親の洗脳』なんかではなくて『環境』なんだなと改めて思う。
マララさんは親に恵まれているという部分は大きいけど、それでも『他の子たちの状況を疑問に思えるか』『その子たちのために何かしたいと思えるか』という部分は個人の資質が大きいように思う。
『自己責任』で切り捨てるような人もいるし、そもそも『あの人たちにはあの人たちの人生があって自分には無関係』と思ってしまうのが大半の人の感覚のような気がする。
そう思わずに『自分に出来ることは』と考えることができるのは教育と環境と個人の資質がそろわないと出来ない。

読んでよかった。

子供向けに文章がかなり簡単になっていたり、説明も分かりやすくなってるのかなと思う。次は一般書籍(大人向け)の「わたしはマララ」を読んでみようと思う。大人向けの方が詳しく書かれていることを期待して。


『マララ』