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「「生理」と「セックス」を子供に正しく伝えるための本」を読んで

2024/03/07

ママ産婦人科医による
「生理」と「セックス」を子どもに正しく伝えるための本
– 2022/1/28 宮川 三代子 (著)

『「生理」と「セックス」を子供に正しく伝えるための本 著:宮川三代子』を読んでみた。
図書館で借りた本。

性教育に使えそうだなと思って、早速姪っ子に使った。姪っ子に伝えるために使ったのは一部だけで流し読みしながらだったので、改めてちゃんと読んでみた。
あれ?と思う点もあった。全体としては悪くないのだけど、いくつかの点は気を付けた方がいい気がする。


ということで、章ごとにみていく。


序章 お父さん、お母さん、おうちで性教育できていますか?
親側の心構えなどが書かれているのと、性器の洗い方が書かれている。

……でも、性器ってそんな念入りに洗う必要あるの? わざわざ詳しく書く事で、余計な力が入って傷つく可能性もあるのでは?何か異変があったら別だけど、普段はシャワーで流す程度でいい気がしてしまう。

3歳以降は親であってもプライベートゾーンには触ってはいけないと書いてはあるものの、『プライベートゾーン』が何かは書かれていないのが気になった。

それを書くならまず、『プライベートゾーン』の話から必要だけど、抜けている。

気になったのは、女の子の話についてだけ性別違和の話が入っていること。男の子の性別違和はどうなんだと言いたくなるし、書くならどちらにも書くか、どちらにも書かずに『性別違和』についてまとめて書くかのどちらかにしてほしい。

そして、個人的には『セイシル』のサイトはお勧めしない。須股を安全だと言ってしまうようなサイトは、子供の安全を考えているとは思えないからだ。

という感じで、序章から突っ込んでしまった。


第1章 子どもに男の子と女の子のカラダの仕組みについて教えよう
1.男の子のカラダの仕組みについて教えよう

おちんちんは褒めなくていい!!

と、盛大に突っ込みたい。序章も怪しさ満載だったが、『おちんちんに自信を持つことができ、自尊心が育ちます』とある。んな馬鹿な。
自尊心を持たせたいなら、男女問わず、その子自身を褒めればそれで済む。なぜ『おちんちん』に自我をもたせようとするのか謎だ。

その点を除けば、男の子のカラダについての説明なのでお勉強になる。


2.女の子のカラダの仕組みについて教えよう
性器の色は人それぞれと書いてあるのはよかったと思う。他にもセルフプレジャー(自慰)で気を付ける点などが書かれている。これは男の子も同じ。きれいな手で一人に慣れる場所で行う事。

あと、横から見た図。膀胱と子宮と卵巣と背骨の位置が分かる。そして、膀胱の上に子宮があるから、妊娠時や老化で子宮が下りてくると膀胱が押されて尿が出てしまうというのが分かる。たしか、子宮は筋肉で支えられているけど、年を取るとその筋肉が衰えるのだとか……。本には老化については書かれてない。これは私が別の場所で見た知識。年を取ると、女性は膀胱が押される。

後は、女の子は膣にモノが入ってしまうことがあるので注意と書いてある。男の子は肛門にモノが入ったりしないのだろうか? 膣の位置だと入りやすいという事だろうか? 興味本位でモノを入れてしまう幼児もいるので注意は必要。


3.赤ちゃんが産まれる仕組みについて教えよう
セックスで出来たと伝えていいかという具体的な話が書いてある。ごまかさずに伝えた方がいいと本にはある。
私もそう思うけど、これは年齢とその子の特性によると思うので一律でもない気がする。
姪っ子にははっきり伝えた。『膣』が分かりづらいので、『生理の血が出る穴』とか『お股の穴』と伝えた。言葉のチョイスも伝える大人のセンスが試される。

姪っ子は生理が来ているので、生理の血が出てくる穴と伝えた。そして、『子供はそうしちゃダメなんだよ』とも伝えた。中高生になってると、『子供はダメ』では通用しないだろうけど、小学生なので『ダメ』で通じるし、お尻の辺りは触ってはいけないと理解してるので、それで十分。

そして姪っ子も『汚いからしない』と言ってきた。うん。そうだよね。汚いよね。子供の感覚は正しくて好き。けど、ちょっと不安そうに『痛いの?』とも聞いてきたので、思わず『テクニック次第』と言ってしまった。ダメ回答。真似しないでください。後から『痛いときはやめる。抜くんだよ。それ以上はしない。傷ついているから』と伝えなおした。
テクニックって何だ。私の脳みそもアダルト作品に侵されている。自分に泣けてしまった。
本当は『汚い』というのもNGワードらしいけど、でも雑菌が多い場所で綺麗にしてから触れるので間違ってはいないような……。いや。子供に対していう時は『汚い』はネガティブイメージを植え付けるので言ってはいけないんだよな。分かってるけど、つい。難しいな。

この後も妊娠出産について書かれている。
出産は命がけと書かれているのがよかった。主に出産について書かれている。


4.妊娠の仕組みをどう子どもに伝える?
よく見ると3と一緒のように見えるのに、3が女の子への声かけだったのに対して、4は男の子への声かけのように書かれている。
そして、『妊娠の仕組み』というよりも、受精の仕組み。

『排卵日だけ狙っても妊娠しにくいんだよ』とあるけど、その情報は子どもには要らない。本を読んで知るならまだしも、親がそれを子どもに言うのは『子作り頑張れよ』というようなものだと思うので、気持ち悪いなと思う。

子どもに教えるべきなのは、学生が子どもを作ると学校から追い出され、学業の道を閉ざされる可能性がある事。子育てにはお金が必要で、子供が成人するまで親の役目を果たす事。性交は小作りであり百パーセントの避妊はない事。妊娠出産は女性の体を極限まで痛めつける事になる。下手をすると死ぬ事もある結果になる事。……この辺りじゃなかろうか。

私は高校生・大学生ならば子供を預けて学ぶ道があっていいと思うけど、今の日本でその環境はない。言い方は悪いとは思いつつ、学校退学という分かりやすいデメリットは子供に伝わりやすいのではと思う。


5.子どもの10人に1人がLGBTQであることを伝えよう
いつもトランスジェンダーについては疑問なのだけど、どうして男の子は人形遊びが好きではいけないのだろうか。本の中にもお人形遊びが好きだから心配になったと書いてあったけど、本質はそこではないのではと思う。『レンジャーが好きで男の子の格好をした体が男の心が女の子』というものが存在しない時点で『心の性別』とは何かと思ってしまう。

もし、『心の性別』があるなら女装をせずとも『心は女』はありえるわけで。『男装好きな女性』がいるのだから。体だけを異性に変えて、異性装はしないというトランスジェンダーを聞いたことがない。聞かないだけで存在している?

この場合、診断が難しいというのは聞いたことがある。性同一性障害の診断には『その性別で社会適合できている』という判断が必要になるわけで、『男性のカラダで男性の服装で女性として認められたい』という人たちは性同一性障害の診断に当てはまらない。だから、存在しないのだというのは聞いたことがある。だとすると益々、トランスジェンダーとは何かと思ってしまう。

ただの『文化的性別』に当てはまる事が出来なかった人たちなのではないのだろうか。彼らは男性が人形遊びをすることを認められる社会でも、体を女性にしたいと思うのだろうか?

私はこれ、逆になってると思っている『人形遊びをしたいから、体を女性にしたい(自分は女性だと言いたい)』のであって、『体が女性だから人形遊びをしたい』ではないようなと、もやもやとする。


『人形遊びが出来なくても、女性の体になりたい』ならば、わかるが、この場合は一体なぜ『女性でなくてはいけないのか』が分からなくなる。要は段性器切除したい。という話だろうかとも思うが、トランスも『子供が欲しい。子供を得る事が出来ないのは差別だ』ということなので、おそらく『外性器の形とその機能の使用は別』として考えたらいいのかなと思う。こうなると、女性が男性器の形を付けて、『女性を自称する』という謎事態でもトランスと言うのか女性なのかという複雑なトランス問題がこの先出てこないのだろうかと思う。


と、いつもモヤっとするのでこの辺りはさらりとしか伝えない。

『男性でも女の子の制服を着たい人がいるんだよ』とか『男性同士、女性同士の恋人たちもいる』とか。

この章で気になるのは『性別っていうのは、そんなにはっきりと男女に分けられるものではないんだよ』という部分。
生物学的には基本的に(DNAで)『はっきりと分ける』事になっているし、戸籍上もそうなっている。なのに、『分けられるものではない』というのは無責任な話じゃなかろうかと思ってしまう。


第2章 生理について子どもに伝えよう
1.生理についてどんなタイミングで何を伝えればいい?
2.女性ホルモンって何だろう?
3.どうして生理痛がある人とない人がいるの?

生理について書かれている。私も知らなかったことが書いてあったのでお勉強になった。
見た目をからかわれて無理なダイエットで生理が止まるという話もあった。生理が止まるかどうかは脇においても『見た目をからかう』のはアウトだ。女の子でも男の子相手であってもどちらも。

生理痛のあれこれは、年を取ってからの方が重いのはなぜ?と思っていた疑問が解けた。
おなかの中に血が漏れて子宮内膜症になると生理痛が重くなるとある。コレだ。子宮内膜症になっているかどうかは分からないけど、仕組みはこれなのだと思う。というか、生理の血はお腹にたまるのか……女ってだけで本当にめんどくさい体だなと思ってしまう。

男の精子は体に吸収されるとなっているのに、女の血は体に吸収されないって不公平じゃないのか??とつまらない怒りを持ってしまった。


第3章 子どもの生理を楽にするにはどうすればいい?
1.まず、自分の生理を知ろう
2.生理中の過ごし方、どう工夫すればいい?
3.生理痛が起こってしまったときの対処法
4.生理前のイライラ・不調にはどう対処する?
5.その生理痛、放っておいて大丈夫?
6.月経困難症を治すには?


生理痛の話。
残りの生理回数を計算するというのがあって、計算してみた。あと少し。残り四分の一ほど。頑張った今までに泣けてくる。と思ったけど、私、20代は栄養不足で生理が止まってることの方が多かったんだと思い出した。もともと不順なので、気にしてなかったけど半年に一度とか二・三か月に一度だった。で、生理痛が重かった。

30代に栄養不足が解消されたら、毎月来るようになって……面倒。だけど、生理痛は若干収まった。栄養不足も生理痛が重くなる原因なのだろうか?


第4章 イザ! というときのために親が子どものために知っておくべきこと
1.性的同意について知ろう
イザ!というときではない。これが、一番大切。セックスと同時に教える必要があると思う。
そしてここ、紅茶の話で書かれているけど……日本人はそんな紅茶好きじゃないだろと突っ込みたい。これはイギリス人が紅茶好きで『常にお茶に誘われる』から例に出されているだけなんだけどな。

日本だと、コーヒーの方がまだなじみがあるのではないかと思う。大人なら『飲みに行くか』というような感じとか。子供に教えるには『遊ぼう』と誘われた時の話に置き換えるとか。日本に置き換えてと思ってしまう。

この話はさらっとした感じなので、ほかの本で勉強しなおしたほうがいい。
私が勧めるのは「10代で知っておきたい「同意」の話」「『同意』って何?」

どちらも海外の本を翻訳したものなので、『日本バージョン』が出てこないかなと思う。

2.避妊について知っておくべきこと
コンドームの付け方、外し方は必読かもしれない。ネットで調べても出てくると思うけど、使用期限をチェックして、爪を切って、端に寄せて取り出して、ゴムの向きを確認して、押さえながら外す。という流れが書いてある。本にはもう少し詳しく書いてある。

『膣外射精は避妊とは言えない』とも書いてある。『5回に1回の割合で妊娠する』とも。
須股がそれですね。というか、須股だとうっかり入る可能性もあるわけで。
なぜちゃんとこれが書かれているのに、セイシルをお勧めしてるのか謎だ。

他にも避妊方法は色々ある。コンドームだけに頼るのは危険だけど、確実な方法になるほどお財布と医療アクセスが難しそうと思ってしまう。


3.若年妊娠にはリスクがあることを伝えよう
子宮も骨盤も10代はまだ妊娠出産には小さいという事が書かれている。そして、生まれたとしても、生まれてすぐの遺棄や虐待・育児放棄が多いのも10代だと書いてある。産めたとしても、育てられるかは別なのである。

4.中絶について知っておくべきこと
5.不妊について知っておくべきこと

中絶の費用がちゃんと書いてある。妊娠中記の中絶で40~50万円。それが用意できないお子様はやはりセックスするべきではない。
セックス費用として考えるにはちょうどいいのではと思ってしまった。

不妊については、子どもに教えるのは『30歳を過ぎると子供ができにくくなる』という話だけでいいような気がする。あとの情報は子供が欲しいと思った時でも、子どもについて考えた時でも本人が情報を仕入れたらいい。子供に伝えるのは『身体や生理で異変があったら、病院へ』だけでいいような。

という感じの本だった。


そして、全般的に思うのだけど、男が先なのが嫌。章や小見出しタイトルも男が先なのは、なんで??生理の本でしょ。女が先でもいいじゃんかと思った。
全体的にはいい事が書かれているけど、細かい点が気になる本だった。他の本や情報と併用して使う方がいい気がするのです。

『「生理」と「セックス」を子どもに正しく伝えるための本』