『10代で知っておきたい「同意」の話 文:ジャスティン・ハンコック 絵:ヒューシャ・マクアリー 訳:芹澤恵+高里ひろ』を読んでみた。
図書館で借りた本。
タイトル通り、同意についてあれこれと書いてある。セックスの同意の話だと思っていたのに、もっと日常の事から書いてあった。
同意とそのための12のヒントの本。
はじめに 同意って何だろう?には
『読みたくないものは 読まなくたっていいの。わかった?』
と大きな文字で書いてある。
『読む』事にも同意を得ようとする本で、徹底的に『同意』について書いてある。
という事で、一章ずつ感想を書く。
その前に、セックスの同意・拒否・話し合う事などについても書いてるので苦手な人は要注意。
第一章 同意とあなた
ヒント1 まずはピザから
ピザを例に同意について書かれている。なじみがない人は別のものに置き換えていいともなっている。日本ならば、お寿司だろうか?いや。ラーメン?
ここには『選択』がいかに大切かが書かれている。日常は選択の連続。
ヒント2 行為主体性
主体性とは積極的かつ意図的に何かを行う事。自分の声を聴くことの大切さが書かれている。
第二章 同意と自分以外の人たち
ヒント3 ほかの人たちと一緒に何かをする時
お友達と一緒に何かをする時にも同意が必要という話。
ヒント4 ”お願い”の伝え方
相手の気持ちを考えて、お願いの内容ははっきりと伝える。自分のためのお願いを相手のためにしてあげてると押し付けないこと。そして、選択肢は3つ以上が好ましい。聞くのは一回だけで、一人で考える時間も与える事。
自分のためのお願いを相手のためにするというのは、よくあるんだよな……と思いながら読んだ。やってしまってから、落ち込むやつねと思いながら読んだ。
最後に『相手のノーに耳を傾ける』とある。それが出来ないのは【カッコ悪い事】
一万回頷きたい。 時々、やっちまうならまだしも、好きだという告白でこれをやってくる男が5・6人いた。うんざりした若き日々。告白されない歳になってほっとしている。
ヒント5 NOについて
さらにNOについて掘り下げて書いてある。
『覚えておいて ほしいこと。 相手が 「イエス」とも 「ノー」とも 言わない場合、 その人の答えは 「ノー」です。』
一ページ丸々使って上記の文字が書かれていた。さらに次は見開きで少し文章を変えて同じことが書かれていた。
これがどれだけ大切かわかってほしい。何も言わない時は『ノー』
恥ずかしさで何も言えないとか、勝手な解釈しないでほしい。だったら、怒りで何も言えなくなっていると解釈された方がましだし、たぶん、そっちの方が正解なことが多いと思う。
最初に、受け手側への注意を書いた後に、『ノー』を言うためのあれこれが書かれている。
『ノー』はきっぱりと、相手の言葉を受け止めてから返す。という基本から、あれこれ細かい注意事項も書かれている。
きぜんとした態度の示し方 1.相手の態度への指摘 2.何を感じたか 3.相手にどうしてほしい 4.3のようにしてもらえない場合、どうするか警告する。
どこかで見たような……と思ったけど、アンガーマネジメント(怒りのコントロール)の本で似たようなことが書いてあったような気がする。
伝え方の基本はそうなのだなと思う。
ヒント6 合意の考え方を挨拶に取り入れると
挨拶は握手からハグに変わっていくが、相手がそれを望んでいるか。同意が得らえれているかというような話。
ちょっと日本には合わないかなと思ったけど、形を変えたら取り入れることができるのかもしれない。
たとえば、ちょっとしたものをもらった時にお返しはいるかいらないか……とか。相手も自分も心地いいというのはなかなか難しいけど、伝えないと分からないよねというのは分かる。
ヒント7 セックスについて
やっとセックスの話にたどり着いた。そして、このヒントのページはやたらと長い。それだけ、伝えることが多いという事だろうけど。
最初はセックスにまつわる『フツウ』について三つ書いてある。
・一定の年齢になるとセックスに興味を持つ
・セックスは定められた一連の行為を順番に行う
・自分にふさわしい相手に出合ったら言葉は要らない
全て根拠がないので、信じないでという話から。
こんな表を作ってみる。縦の欄には体のパーツ、横の欄には触るときに使えるパーツ。これらを組み合わせて、何をしていいのか確かめていく。という話が『選択肢を作るには』という文脈で書かれていた。
面白い。その表は面白いので、創作で使いたい。表が本に載っているわけではなくて、そういう案というだけだけど、実際に作ってみようかなと思った。
・二人でしてみたいことの提案
・”普通”を試してみて、やめたり変えたりしてみる。
・焦らず少しずつ。
・流れに任せてみることも。
・自分がしたいこと、されたいことの話し合い。
・セックス時のお喋りはどれくらいか
・断り方を決めておく。
セックスの話し合いはこんな風にするといいよという事が書かれていたが、この中で一番大切なのは『断り方』だと思う。無言でベッドから降りるのもありだけど、特殊なことをやっていて動けない時は『言葉』を決めておくのも必須。
とにかく、『緊急停止』の方法は絶対必要。そして、停止されたからと言って不機嫌にならないようにしなければいけない。
途中、ちょっと具体的提案が載っているページがあるので、苦手な人は閲覧注意。でも最初に『注意書き』が必ず書かれているので、読み飛ばしがしやすい仕様になっている。
『なぜなら、眠っていたら同意できないからです』
という見開きページがあった。この直前のページに戻ると、眠ってしまったらやめましょうとある。
ちょうど、ネット小説でラブラブな恋人同士が、一方が寝てる間に……というのを読んでもやもやしていたので、すっきりした。あれは相思相愛じゃなくて、相手の主体性を踏みにじっている行為でいいんだなと思えた。
やめる時
・相手が楽しくなさそうだったり、気持ちが入っていない
・コンドームが破れたり、外れた
・セックスが苦痛になっている
ムードをぶち壊しにしてもやめるとある。すっきりしていていい。
「やめて」「いや」「待って」は一度言えばじゅうぶん。相手にそう言われたら、きっぱりやめましょう。
私が出会った男たちはやめそうにないな……と思ってしまった。なぜなら、それらがセックス中に当たり前に言う言葉だと思っていそうだから。思考が狂ってる人たちはいる。セックスの前段階の『付き合うかどうかの告白』のNOでさえ、理解が出来ていないのだから。
これらすべて、性的な話をする時にも『同意』が必要だよと書いてある。性的なメールや会話も性行為の一種だから。この本、イギリスの本だけど、それ、すごくいい。
ヒント8 途中で立ち止まるためには
こうでなくっちゃ論に振り回されずに、『したくないことはしない』と決める事。
お酒やドラックを摂取した状態では同意が取れない。同意なしで何かが起きた場合、支援を求める。
また逆に、自分がだれかを傷つけた場合は、二度とこうしないためにはどうしたらいいかを考える。
セックスの話とそうではないものが混ざっているような感じで、最初はよくわからなかった。
ヒント9 グループでの同意
みんなで目指す目標には価値がある。時には、自分の選択を妥協することになっても。
ヒント3の部分と重なっているような気がする。
第三章 同意と世界
ヒント10 ジェンダー
ジェンダーの力の差について書かれている。要は男女差別の話。
男性が性的に奔放だと地位が上がるのに、女性は下がる。女性の方が性被害者が多いというようなことが書かれている。
ここで、『差別』について出てくるのか……と思ってしまった。
ヒント11 「主義」のせいで同意がむずかしくなるのはなぜ?
人種・階級・同性愛・トランスジェンダー・健常者には社会においての選択の自由度が違うという事から始まる。
『同意についての会話は、個人的な話だという事です』という部分が、分からなくて何度も読み直してしまった。
そこで、私の『個人的な話』という意味の理解が間違っているのかもしれないと思った。
個人個人の経験や立場によって、選べる選択肢が少なくなる人たちはいるが、『それは社会にある主義のため』というのがこのヒントの主題のはず。
だからここでの『個人的な話だ』というのは、『その人が経験してきたことも考えて、選択肢を選びやすくしていく』ことが必要という意味なのかなと思った。
でも、日本で聞く『個人的なこと』は『個人の事だから他人には関係ない』という感じに結びついているような気がするので、この翻訳は合わないのでは。それとも、こんな勘違いをするのは、私だけなのだろうか。「個人的な事だから、聞いてはいけない」みたいな断絶を感じてしまった。『他人に気軽には話さない』というのと、『個人に合わせた質問と言葉にする』という意味でいいのかなと思う。
ヒント12 同意でお互いの自由を認め合う
お互いの選択を認め合うという話。そのためには少しだけ相手の立場を考える。
ちょっとしたワーク。
・社会的性別・見た目・年齢・仕事・人種・障碍の有無・階級・信仰の有無・お金をどれくらい持っている
・性的志向・友人関係・趣味 ・5つの単語で表すなら。
6人のキャラクターを考えて、一番主体性を持っているのは誰なのかを考える。
相手の立場に立って物事を考える。
それが、『同意』には必要。
セックスに対する同意だけではなくて、そのために何が足りないか、どうしたらいいかが網羅的に書かれていて、よかった。
――別場所で書いた簡単な感想。上記とほぼ同じです――
セックスの時の同意の話だろうな……と思って選んだ本だったのに、半分くらいは日常の話だった。『ピザの選び方』『挨拶の仕方』
翻訳本なので挨拶の仕方にいろいろあって、握手をして親しくなるとハグになるというのは日本ではなさそうだけど。
でも、考え方としてはなるほどと思った。すべての選択において『相手の同意を得る』という事が基本という話。
家族でも友人でも、一度同意を得たものであっても。
一緒に出掛けるなら、どこにいくか、何を食べるか、同意を基に選ぶ。大変だけど、そうすることで得られる充実感があるよねという事が書かれていた。
同意って『相手の意思を確かめる』じゃなかったんだと思った。
『相手の意見を尊重する』という事。ただ、これを『自分の意見をないがしろにする』という意味ではないという事もしっかりと書かれている。自分と相手の意見を尊重し合うためには折り合える案が出せるかアイディア勝負な点はあるとはいえ、いくつかの案もちゃんと書かれている。
日常の『同意』を押さえてから、『性交(セックス)の同意』に入っているのが、いい。セックスに関する項目も注意点があれこれ書いてある。
あと、「いやは嫌」という基本もしっかり書いてある。しかも、大きな字で分かりやすく。
「嫌(NO)ではないからと言って、良い(YES)ではない」
これもちゃんと書かれてる。うん。マジでそれ。頭を使ってあれこれ言って、やんわり断ってもわかってもらえないから、きっぱり言っても通じない。あきれて黙ったら、勝手にyes判定して一人で妄想に浸ってたバカ……こほん。愚か者もいたな。
わたしに告白する前にこの本読んで出直してくれと思った本。
あ。こう書くと、ただの自慢っぽい。でもこの『告白された』というのは、相手の妄想が勝手に暴走した結果であって、私に告白してきたやつは一人もいない。断ってる言葉が聞けない時点で、相手が欲しいのは恋人ではなくて、『自分の言うことを聞いてくれる奴隷』
話がずれた。
本の中にはちゃんと『同意を得るには何が必要か』も書かれていて、差別(社会的弱者)で声を上げることができない人もいることが書かれている。セックスの話に限らないの素敵すぎる。
ただ、この本の難点は海外のものだからなのか、色がビビットで私の趣味ではない。あと、文字が小さいのと、言葉のテンションが高い。紙が分厚いのも気になっている。
もうちょっと薄くて、落ち着いた言葉で書かれている本がよみたいなと思った。
でも内容はすごくいい。