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「山の子テンちゃん」を読んで

2025/11/27

山の子テンちゃん: 空から落ちてきた小さないのち 単行本 – 2018/12/1 佐和 みずえ (著)
山の子テンちゃん 空から落ちてきた小さないのち

「山の子テンちゃん 空から落ちてきた小さないのち 文:佐和みずえ」を読んでみた。

天井から落ちてきたテンのあかちゃんを育てる話。

絵本かと思ったら、ちゃんと文字の本だった。大きめの文字に分かりやすい言葉……児童書って素敵。

ゴミ袋に放り込まれて捨てられそうになっていたテンちゃんをひづるさんが、拾い上げて育てる。最初は掌サイズでネズミと思われていたけれど、獣医さんによってテンだとわかる。毛皮にされて数が減ったテンの子をひづるさんは育てる。
野生の子は野生に返すと決めて育てるけれど……別れは突然にやってきて、テンちゃんは姿を消してしまう。

最後、サブタイトルが『ある日、とつぜん』だったので、死んでしまうのかなと思ってしまっていた。人に懐いてしまうと車に轢かれて死ぬ羽目になる可能性も高いから。うちの半野良ネコたちはそれで死んでいった。野生のものは人間に懐かせちゃダメだと思う。でも、そういうのは書いてない。

書いてあるのは『人間が野生動物たちの住処を奪っている』という事。野生動物たちを自分たちの都合で害獣だと言っているということ。そういう一面もあるけど、だから人と動物たちの間の場所……『里山』を作ってきていたけど、そこに人がいなくなって『人と動物の境界』が作れなくなったことが動物たちが街に出てくる大きな原因だと思う。あと、狩猟も減ってるから人間の怖さを動物たちは知らない。山の動物たちと人間って『人が動物を食う』ことで保ってきた部分もある気がするんだよな。……ただ、野生動物は寄生虫の危険もあるから、現代では手を出しにくい代物になってるというのもある。食肉用に家畜化された動物の安全性と美味しさが手軽に手に入るから、わざわざ野生の肉を食べる必要もない。という、価値観の変化みたいなものもある。(元々、野生の肉がそれほど食べられていたとも思えないけど)

野生動物と人間の関係性って一概には言えないんだよな。
この絵本では『人間って酷い。害を与えてくる動物たちにだって理由があるのに』という部分しか語ってないので、なんか……綺麗ごとすぎるなと思う。
でも、児童書だし小学校低学年くらいの子どもたちに訴えるにはその程度の話でも充分なのかもしれない。

ごちそうさまでした。


山の子テンちゃん