こわれた腕環: ゲド戦記 2 (岩波少年文庫 589 ゲド戦記 2) 単行本 – 2009/1/16
アーシュラ・K. ル=グウィン (著), ゲイル・ギャラティ (イラスト),
「こわれた腕環 ゲド戦記Ⅱ 作:ル・グウィン 訳:清水真砂子」を読んでみた。
ゲド戦記二冊目。一冊目でだいたい把握したので、そのつもりで読もうとしたら2冊目はもう少し複雑だった。テーマもだけど、内容も。
簡単になったのは『地図(物語の舞台)』かな。たくさんの島は出てこない。墓所と迷宮ぐらい。
物語は『墓所の大巫女であるアルハ』を軸に語られていく。生まれた時から『アルハ』として生きることを決められていて、その世界しかしらないアルハがそこに疑問を持ち外の世界に出ていくまでの物語。
ゲドはどこに消えたのかと言えば、墓どろぼうとしてやってくる。正確には『エレス・アクベの腕環の欠片』を求めて墓に入り込み、アルハから酷い扱いを受けつつも信用を勝ち得てアルハを外に逃がす。
目次ごとに語る。
プロローグ。
子供を連れていかれることに対しての親たちの諦めシーンから始まっている。
1 喰らわれし者
5歳のテナーがアルハになる儀式が行われる。
2 石垣
12歳になって、同じく巫女の修行中のペンセと修行をさぼるが罰を受けるのはペンセだけ。大巫女のアルハには罰がないことをアルハは嘆く。
こういうの物語の典型なのかなとふと思った。実際は『そういう環境下で育って人間はそれを当たり前と思う』ので、こういう嘆きを持つのは難しそう……でも、物語としてはこのシーンがあることで『まっとうな人間』らしさの演出にはなるんだよな。
3 囚われの者たち
大巫女になったアルハは地下へと入ることになる。そこで囚人の処刑を任される。
4 夢と物語
囚人たちの悪夢に悩まされたアルハ。ペンセが信仰を持っていないことを知り、地下の事を知り、他の大巫女たちから過去のアルハの事を聞く。
5 地下のあかり
6 捕らわれた男
ゲドが地下に入り込んだことに気が付いたアルハは色々考えた挙句、ゲドを捕らえることに成功する。
7 大宝庫
8 名まえ
ゲドを生かしていることを大王の大巫女であるコシルにばれてしまう。アルハはコシルが入ってこない大宝庫へとゲドを隠す。ゲドはアルハの本当の名前を呼び、アルハは本当の名前である『テナー』を思い出す。
ゲドが地下で死にかけていたり、迷っていたりと、かなり怪しい状態。アルハはアルハで年若いために野心があり年上のコシルには敵わない。地位としてはアルハが上という立場の差があっても覆せない。……権力争いの様相まで呈してきて、話が混沌としてきたなと思った。
9 エレス・アクベの腕環
エレス・アクベの腕環の話を聞き、アルハは墓所を出ることを決める。
10 闇の怒り
付き人やコシルの妨害を受けながらも地下を脱出する2人。二人がでた途端に地下は崩壊してしまう。それを見つめながら、二人は先を急ぐ。
こういう崩壊シーンも映像の方が迫力あるんだろうなぁ。読んでいてもハラハラドキドキする。地下を進む間も闇という恐れや不安、怯えが次々と襲ってくるけれど、これは心情なので文章の方が読みごたえがある。
11 西方の山
12 航海
墓所を出たアルハはどうしたらいいのかに迷う。その迷いをゲドが払いながら、海へと出てハブナーヘと降り立つ。
地下を出て一安心……ではなくて、地下を出てもアルハは不安にさいなまれているし、どうしたらいいのかがわからないことに不安を抱いている。外に出たのはいいけど、テナーにとっては『戻る場所の喪失』なので、不安で当たり前なのよね。だから、ゆらゆら揺れてるのはわかる。そして、ゲドは頼りないくせに、テナーを外に引っ張り出した極悪人に見えてしまう。
そういえば、『西のはて~』も2冊目は女性主人公で女性の物語だったなと思った。
ゲド戦記は闇が『不安・怯え・恐怖』という分かりやすいモチーフで読みやすいなと思う。細かく読むと、他の巫女たちは貧しい子供たちなの? 外の奴隷は何? 女性だけの場所に『アルハの付き人』は男なのになぜそこにいられるの?と細かい不思議はあるけど。気にするのはやめる。
児童書らしくわかりやすく教訓的だけど、いまいち……と思ってしまっている。期待値下げる。下げるんだ。
『こわれた腕環』