魔法の城 ペーパーバック – 1983/7/30
イーディス ネズビット (著), H.R.ミラー (イラスト),
Edith Nesbit (原名), 八木田 宜子 (翻訳)
本の表紙が出てこない……ということで、写真。
「魔法の城 作:E・ネズビット 訳:八木田宣子」を読んでみた。
うーん。三冊目にもなると疲れてしまった。物語は『魔法の指輪が願い事を聞いてくれる』というもの。
『魔法で願いを聞く』というパターンは一緒だけど、それが物言わぬ『指輪』に変わった。
そして、叶えられた願い事は厄介なことばかりを引き起こす。
砂の妖精は、一つの願いが終わるごとにまた次の魔法……だったけど、こちらは『指輪』が本当に願いを叶えてるのかという謎から、なぜ願いを叶えてくれるのか、いつまで魔法がかかるのか。何度使えるのか。と、全てが謎すぎて、何が謎だったかすらわからなくなってしまった。
砂の妖精と比べると、差別的なシーンも描写も少ないし、ファンタジー要素も強め。
魔法を他の人が信じてくれないという部分は変わらないけど、彫像が動きだしたり天使や神様が出てきたりと『何でもあり』みたいなものがぎゅっと詰まってる。
だから、ラストがやたら説明臭くなって終わるのにはちょっと拍子抜けした。さらにいえば、魔法を楽しんでいた子供たちはラストでは脇役に追いやられて、メインは『お城の持ち主とその恋人の恋愛話』に変わってしまったのも、どうなのかなと思ってしまった。
物語としては『語り手』がでしゃばりすぎてるのも気になった。
差別的なシーンが少ないとはいえ、男女差別はうっすら蔓延っている。百年前の価値観だからと思ってるけど引っかかってしまった。
女の子は船に乗らないとか。お人形で遊ぶとか……。その程度だけど。あと、重要な冒険には女の子はついて行かなかったりもする。いつも冒険するのは男の子。女の子は『巻き込まれ』な感じになっている。
あらすじ。
3人の子ども。ジェリーとジミーとキャスリーンはお城を探検して、王女の格好をしたメイベルに出会う。
メイベルが沢山の魔法道具の中から、『姿を消す指輪』の話をすると本当に姿が消えてしまう。あの話は「冗談だった」とメイベルは伝えるが、姿が見えないままで困ったことになる。しかし、その力でお金を儲けることにした。そして、次にはジェリーの姿も消えってしまって……。
最初は『姿が消える魔法』で困ることになるが、やがて他の願い事も叶うことに気が付いてしまう。
そして、ふとしたことから『ぼろ人形が動く魔法』がかかってしまい。人目につかないように人形たちをお城に案内することにする。
夜のお城ではお城の彫像が動くことに気が付き、彼らの仲間になって夜を楽しむ。
それに気が付いた、お城の持ち主と、その恋人はお城は指輪の魔法によってつくられたと知って、『全ての魔法を消す』ことになり全ては元に戻ってしまう。
というのが大雑把なあらすじ。
全てが元に戻ったので、人間として認識されて会社運営していたぼろ人形は『唐突に消えた』ことになってるのも面白い。
でも、もうお腹一杯なので『リアルな魔法』はいらないなと思う。あと、所々『知識が必要』な感じなのも「子どものための物語を作ろうとした結果」なのかなと考えてしまった。
百年前の上流・中流なら知っていてもおかしくないとか、知っていた方がいいことだったのかなと思う人物名などがチラホラ。(日本語訳だから説明が入っている)
面白さと押し付けがましさが同居してる感じがしてしまった。
子どもにお勧めは……しないかな。他にも素敵な児童書はあると思うので、わざわざこれを勧める必要性はない。
大人なら、百年前の価値観と『リアルな魔法』を楽しみたいならどうぞ~とお勧めしておく。ただ、古いので手に入れるのは大変そう。
お腹一杯なので、図書館に返すのです。