脚本家が教える読書感想文教室 – 2020/7/2 篠原明夫 (著)
「脚本家が教える 読書感想文教室 著:篠原明夫」を読んで
この本……大人(親)に都合がいいように使われるだけでは?と思ってしまった。
はじめにの『読書感想文は自分のためになるから書く』というのはわかる。
・思ってること、知ってほしいことが相手に伝わる
・相手の心を動かす
・相手に行動を起こさせる
というのが文章の役目で読書感想文はその練習。
この辺りは今読んでる他の文章系の本と共通しているけど、問題はその後。
本の選び方
・自分の好きなことが書かれている本
・登場人物と自分に同じところがある本
・登場人物と自分をくらべられる本
これらが読書感想文が書きやすいとなっている。
あのね。それ、『祖父母が孫の為に選ぶ時』には役立つかもしれないけど、親が子どものために本を選ぶときという意味なら、子どもの事を理解してない親自身の姿を反省しろよなと言いたくなってしまった。
この辺りですでに嫌な予感がして、改めて目次をみてみると『大人向けガイド』として三章は大人用になっていた。
ヤバい本だ。こんなのを買って、子供に『読書感想文を書け』と言い出す親を増やしそう。
それでも頑張って読んでみる。
最初は『フレームに分けて書く』という感想文の書き方が載っている。
本を読んだ理由、あらすじ、よかった点、よかった理由、これからどうしたいか……というお行儀の良い大人向けのテーマが並ぶ。
まず『かけない子』には3つほどで終わらせた方が良いような気が……こんなたくさんテーマを出されたら、小学生の私は原稿用紙を破り捨てたくなるなと思いながら読んだ。
2章めは文字数ごとに分けて、例文とそれに対する直しポイントが書いてある。
突っ込みたい。『子どもの書く文章はそう言うもの』だとしても、あまりにも酷い。
どの例題もだけど『自分の経験』『本を選んだ理由』『あらすじ』『よかった・感動した点』『その理由』『これからどうしたいか』というようなテーマが放り込まれてる。
こういうテーマごとに書くよと書いてあるからまだ読めるけど、作文の最初に『自分の経験』があると、何の話だ?って思うんだけど。それも『失敗した話』を書けとなってる。
これ、何度読んでも意味が分からない。『失敗した経験』である必要性は『本を読んでその部分が変わった』と大人にわからせるためで、別に子供はそんなものを書きたいわけではない。
もう、この点が『大人のための読書感想文』だと思う。
しかも『失敗談』の話が浮いている。
失敗談を入れるなら、『本を読んだ理由』『あらすじ』『感動した点と理由』に続いて、『失敗談と、この本を読んでそれが変わったところ(これから)』ではないだろうか。構成、おかしいんだけど……大丈夫かこの本。『大人受け』を狙い過ぎて、『書くもの』がズレてる。
ざっくり書くと。
「私は自転車で転んだ。雪道でも滑った。(←自分の経験)
『○○』という本を読んだ。理由は冒険する物語を読みたかったからです。(←読んだ本の事)
~あらすじ(略)~
この雪道を滑り降りるシーンがよかった。(←感想と理由)
次からは雪道でも転ばないようにしたいです。(←こうなりたいことを失敗とくっ付ける)」
こんな感じの例文が続く。こんな感想文、何が楽しいんだ?
失敗談を無理やり教訓にして『大人受け』狙うなよな。
例文はすべて実在しない本の感想で、2つほど戦争の話が混ざっている。
どちらも『戦争をしないためにはこうしたらいい』と書くことになっている。これ吐きそう。『戦争をしないためには』ではなくて、もっと簡単に『今の平和が続きますように』でいいと思うのよ。小学生なら。
もっと考えて『戦争が起こるのは外交が失敗したからです。外交ができるように頑張りたいです』と言い出す小学生がいてもいいけど、「みんなが幸せになれば」や「みんなが人を喜ばせることを考えたら」などの、大人受けの言葉を子供に書かせるのは気持ち悪いので例文から外してほしい。
他にも「大人受け」の言葉が満載で、ポイントが一切頭に入らない。
でも気持ちの言葉や言い換えの言葉のページは役立つと思う。私も使いたい。
3章は大人(親)の質問に答える形で書かれてる。
「まだ、書いてないの?」
「ちがうでしょ」
「ママが直してあげる」
これらは言ってはいけない3大NG……。
これらを言う親しか、こんな本買わないだろ。と思ってしまった。
さらに大人にしてほしいことの中に「大人は感想文の本を読まない」とあるけど……そりゃ、子どもに感想文を書かせようとする親は読んじゃダメだろうな。(口出しするから、読むなという事らしい)
本の選び方も、「簡単な本」も「むずかしい本」もやめた方が良いとある。これ、本を読まない大人が子供の感想文のためだけに本を選ぼうとするから、こんな注意書きがわざわざ必要なんだろうな。
他の質問も、毒親の見本市のようだなと思ってしまった。
「ほめ方のヒント」まで書いてある。……そうだよねぇ。感想文を子供に書かせようとする親はまず「子どもを褒めることすらできない」から、子供も感想文を書かないんだよね(棒読み
最終ページは読書感想文講座の体験談。この本、リアルで教室をやってるまとめ本ってことか。
そして、感想に書いてあるのは「親の感想」
どの方向を向いているのか分かりやすいな。
この本を読んで、子どもに読書感想文を書かせたい親には
「子どもに読書感想文を一つ書かせたいなら、自分は10作文書け。大人だから、書けるだろ」
と言いたい。なぜ、この本は「大人(親)が読書感想文を書いてみるべき」と書かないんだ。まず、そこからだろう。もちろん、その感想文は「子どもに見せる」もの。子供向けに書かなくてもいいけど、「自分の言葉で本の感想を書く」という事がどういうことなのかを、自分で書くことで伝えられると思う。
ついでに、感想文は簡単ではない。それも「いいことだけ」を書こうとすると難易度が高すぎる。私が書いているこのブログの感想記事も半分以上は「つまらん」「わからん」「なんでこうなんだ」という喚きでしかない。
ごく稀に『すごく好きいいい』という半狂乱の感想になるだけ。
感想ってそういうもの。
あと、この本には絵本の感想は書かないとあったけど……うん。大人向きならそうなる。
私はブログに書いてるだけなので、絵本の感想も全部書く。そして、それが楽しい。
わからないも、つまらないも、なんでこうなんだという疑問も『何でも書いてもいい』読書感想文になるといいけど……学校の宿題だと無理なのかな。
いっそ、『読書紹介文』に変えよう。他の人にお勧めするために書く文章なんだから。……小学生にそんな難易度高い文章求めんでくれと、私が小学生だったら思うかも。
毒親の思考がわかっただけの本だった。
『読書感想文教室』