編集

「「死」の百科事典」を読んで

2024/03/10

「死」の百科事典 大型本 – 2014/4/24
デボラ・ノイス (著), 荒俣 宏 (監修), 千葉 茂樹 (翻訳)

「死」の百科事典

「「死」の百科事典 著:デボラ・ノイス 訳:千葉茂樹 監修:荒俣宏」を読んでみた。

死に関する言葉がたくさん並んでいる。見てるだけで楽しそう。
キリスト教・ヒンドゥー教・ユダヤ教などの宗教意外にも部族での習慣など幅広い『死』についての単語がこれでもかと詰め込まれてる。スピリチュアルやオカルト、ホラー映画などの単語も入っている。

アルファベット順なので、正直、読めない。分からない部分もある。翻訳もあるにはあるけど、おそらく概念的なものや価値観のようなものが入り交ざっている言葉もあるのか『同じ翻訳だけど、元の単語が違う』『一つの単語に複数の翻訳の言葉』もある。……翻訳するの難しかっただろうな。

ヨーロッパやキリスト系のものが多いけど、仏教の『涅槃(ねはん)』『お盆』などもあるので、なるほど……と思う。ただ、少し違うようなと感じる部分もあるので、私自身が理解してる単語と、単語として理解しようとしたものをこちらに逆輸入するとこんな説明になるという差のようなものかなとは思う。

存在していない価値観や、習得していない感覚の言語化が難しいってこういう事だろうな。
逆でキリスト教の『自殺は罪』みたいな概念を私が得ることは出来そうにないと常々思ってるけど、言語として理解しようとするのと身に着いた価値観や感覚として理解しているって全く別なのだろうな。




気になった単語の感想。

ゴス (GOTH) ローマ帝国の崩壊を助けたドイツ東部の民族、ゴート族に由来する。
ゴスロリのゴスが民族の名前なのは初めて知った。後から「野蛮」を意味するように変わったとなってる。小さいことだけど、なるほどと思う。大人たちから嫌われている文化だから『ゴス』だったらしい。


病人がいる間は鏡を隠して、向こうへ引き込まれるのをさける。……ホラーの定番『鏡の世界に引き込まれる』という設定はかなり古くからあるみたいだなと思った。
水も似たような感じだったけど、水の場合は死者の魂がそれを越えることができないという結界のような使い方。鏡は『隠して結界を閉じる』みたいな感じなのかなと思う。

罪食い
死者の体に乗せた食べ物を食べて、死者の現世での罪を軽くするというものらしい。キリスト教的なのかなと思う。生きてる間の罪が死後に影響するというのはよくわからない。仏教は基本的に『死ねば極楽浄土』みたいな感じのような気がする。地獄はあるけど、それは生きてる人を戒めるモノで、基本的には『死者の悪事は問わない』感覚のような気がする。そして、現代を生きてると『今生が地獄』な気がするので死後の世界なんぞ知ったこっちゃねぇよみたいな……ん?これは無宗教だからになるのだろうか?

自殺
自殺は戦争と殺人による死者を上回っているというの驚愕してしまう。
世界的にも自殺者の数は増えていて、15歳から44歳の死因上位3位に入るらしい。日本だけではないんだなと思う。

自殺した詩人と自然死した詩人の言葉を調べたという研究結果も興味深かった。
自殺した詩人は「わたし」や「わたしの」という一人称単数を使うことが多い。自然死した詩人は「わたしたち」など複数形を使う傾向。
自殺した詩人は「会話する」「共有する」「耳をかたむける」といったコミュニケーションにかかわることばを使わない傾向が高い。

一人きりの世界になった時、人は死を考えるということなのかもしれないし、それは都市化した社会の方が個人化が強まる傾向があるという事なのかもしれない。農村部は良くも悪くも一人で農作業なんてできないので『村人総出』の収穫など、共同体の繋がりが強くなる傾向があるので自殺は少ないのかなと思う。(ただし、その共同体から弾かれた時は自殺に真っすぐ繋がりそうだけど)

なるほどと思いながら読んでしまった。
私も『わたしたち』を使ってみようかな……個人の読書感想で「わたしたち」は使う場所がないな……。他で使う。



幽霊や解剖などの話や死体農場の話題もある。死体農場はテレビで見たけど、モザイクなので死体は見ることができなかった。テレビで死体は出せませんね。
一応、この本の中にはカラーで写真や絵図もある。死の本なので、死体や骨の絵や写真もあるけど、個人的にはそこまで衝撃的なものはないような気がする。ただ苦手な人は要注意かもしれない。私は慣れてるので、平気なだけかもしれない。こういう時『一般的な感覚』が分からないの困る。一枚だけ、青白い人体(死体の模型か何か?)の写真があるので、これは一般的にはアウトだろうか?とちょっと考えてしまった。苦手な人はだめな写真かもしれない。


死に関することなら一通りそろってるので、読みごたえがあった。
小説の資料として使いたくなったら、また借りてみたいと思う。

『「死」の百科事典』