秘蜜 黒の誓い
2012/9/21 ひとしずくP (著), 鈴ノ助 (イラスト)
「秘密 黒の誓い 著:ひとしずくP イラスト:鈴之助」を読んでみた。
ボカロ曲の小説。
以前から見かけていたけど、図書館にあるとは思わなかった。読もうと思ってた本の隣にあったので手に取ってしまった。
頭の中が、曲で溢れてしまう。
ボカロキャラが沢山出てくるけど、正直、わざわざそこに合わせる必要ないよね……とも思ってしまった。というか、あのキャラってこんなイメージだっけ??と逆に疑問になってしまって、話がよくわからなくなる。
私もボカロに詳しいわけではないし、『名前を借りてるだけ』と思って読めば違和感もないのかもしれないけど。
物語は曲の通りだけど、正直、曲の通り過ぎてそこから外れるものがない。
あえて言うなら『天界の設定』が小説で詳しく語られてるけど、天界の物語?え?人間と天使の悲哀だけど、『人間界の話』ではなかったのか……と思ってしまった。
人間のミクと天使のリンの恋愛ものというのは、曲からも分かった。ミクには婚約者がいる事と、天使であるということが恋愛の障害になるということも。
でもまさか……メインが『リン』側で、ミク側の婚約者なんて名前も出てこない酷い扱いだとは思わなかった。花嫁に逃げられて、名前も出てこないってあんまりじゃない?
曲では『婚約者がミクを殺した』ような気がしてたけど、小説を読むとそうではなかった。
ミクを殺したのはリンに好意を持っていた上司のカイト……。え?そっち?と思った。
三角関係かと思えば、リンがミクよりもモテてる。
え?あれ?曲のイメージと何か違うぞ。
さらには曲ではさほど出てこなかったけど、意外と重要な役どころの『赤い髪の悪魔』と『リンの過去のパートナー。緑の瞳の天使』
ちょっと待って。聞いてないんだけど?というキャラが出てくるけど、結局それらは『謎』のまま終わる。
なぜ、二人の悲哀部分だけにしなかったのだろう。あれもこれも詰め込み過ぎていて、曲のイメージが本当に『いいとこどり』だったんだなというものに変わった。
天使と悪魔のアレコレとかどうでもいいんだ。人間と天使だけに焦点を絞って話を詰めて欲しかった。でも、作者がものすごく楽しんで書いているのは分かる。あとがきでも楽しかったとなってるし、小説本文もこれは楽しいだろうなぁ……というのが分かる作りになっている。作者が楽しい=読者も楽しいではないだけで。
しかも、ラストに『子供が出来ている』事になってるけど、これも安易だなと思う。
人間になるって結局、生殖機能を持つって事なんだなと思った。天使に生殖機能はない。だから、リンは男の姿の人間になりたかったのかなと。
所々あった誤字脱字も少し気になった。一番気になったのは『満点の夜空』。誤字なのか、意図的なのか判断がつかないけど、前後の文章からおそらく『満天の夜空』ではないのかなと。でも、それだと二重表現になるので『満天の夜』もしくは『満天の星』が正しい。
『いいとこどり』の曲だけでよかったかな。
小説にはいろんな意味でがっかりしてしまった。単に『天使の設定のアレコレ』と『天使たちのキャラ』が分かるだけ。
私は、曲は好きだったけど、別にそこまでのファンではなかったようだ。