10代の妊娠:
友だちもネットも教えてくれない性と妊娠のリアル
– 2021/12/22 にじいろ (著), 高橋幸子 (読み手)
「10代の妊娠 著：にじいろ 監修：髙橋幸子」を読んでみた。
１０代の妊娠に関するあれこれが質問や相談形式で書かれている。子供だけでなく大人も『子どもの現状』を知るためにも必要かなと思う。
私もだけど、「いつその知識を得た？？」と思うことは多いし、学校で教えられたわけではないという事は分かるけど……というものがほとんどで、『いつどうやって知ったのか』は覚えてない。なので、『知らなかった』とか『誤解していた事』というものを大人は覚えてないと思う。その『子供が知らなかった』『子供が誤解している事』も含めてこの本には現状での正しい情報が書いてある。
目次ごとに見ていく。
01妊娠したかも、どうしよう……
妊娠の質問に関する章。
まず、妊娠すると生理が止まるという事を知らない子どもがいる……という事に驚く。
それは学校で習わなかった……か？
ナプキンの使い方を習ったのは覚えてるし、おしべめしべの受精や、中絶映像などは覚えてるけど、妊娠で生理が止まるのは学校で習ったか自信がない。
膣に出さなければ、大丈夫というのはアダルト作品の影響だと思う。この間見たのは『膣に出しても洗えば大丈夫だと思っていた』というのも見かけた。
どちらも大丈夫ではない。
誰だ。『現実と空想の区別はつくと言ったやつ。出てこい』という気分になった。『現実』を知らない子どもが、空想と区別がつくわけない。
風邪をひいたりお腹を殴れば、妊娠が止まりますか？……おしんの時代か。←古い。
染色体異常の場合は流産の可能性はあるとなってた。私、悪い大人なので『母体が死亡した場合も止まりますよ』とひっそり囁く。
アプリの生理予定日を過ぎたら、妊娠していますか？……わぁお。時代だなぁ。私はやっと最近になって手帳に周期を書くようになったけど、数日のズレは普通にある。アプリに任せたら、私、ほぼ毎月妊娠の可能性になってしまいそうだ。人間の身体は機械じゃないので、予定日すぎても生理が来る可能性はあると本にはある。不安なら妊娠検査薬を使った方がいい。
妊娠しているか、ネットで調べても答えは出ない……というのも、時代ですな。ネットで調べたら、何でも出てくるとはいえ個人の体についてまでは出てこない。
生理が止まったら、検査薬使った方がいいとアドバイスがある。このアドバイスはこの先も出てくる。
・セックスしたら、妊娠の可能性はある。可能性ゼロにはならない。
・妊娠したら生理が止まる。（ただ、不正出血の場合もあるので異常な出血量などの場合は病院へ）
・妊娠したかもと思った場合は検査薬を使う。お勧めは二本入りで注意書きはよく読む事。
陰性でも生理が始まらない場合は、検査して一週間後にもう一度検査薬を使ってみる。
うちの母は一度流産したけど、出血量が異常で病院に行ったらしい。でも妊娠の兆候もない初期だったのでやはり最初は生理だと思っていた。という事もあるので、いつもと違う感じがするなら病院だと思う。
妊娠が分かったら病院に何を持っていくかまで書いてある。経験がないので、こういうの初めて知る。そして、内診は内容が分かっても嫌だなと思う。大人と言われる歳の私が思うのだから、十代はもっとそう思うだろうな。
02人生を守るための性の知識
親として子どもにどう教えたらいいのか。出来ないので、学校でやってくれ……と最初にあった。回答が『義務教育では性交・避妊・中絶を学ばない。今の日本では運しだいです』と。うん。知ってる。知ってる。私が子どもの頃（３０年前）とさほど変わらない性教育しか学ばないのは。
調べた時、唖然としてしまった。未だに『はどめ規定』が幅を利かせてる事に。さっさと消して、性交も避妊も中絶も教えてくれ。アダルト作品で学ぶよりは正しい知識の方がマシ。
ゴムをつければ妊娠しないと思っていた……という男子学生の疑問にも丁寧に答えてある。
『つけるタイミング』『コンドームの破損』『精液の漏れ』
射精前から精液は出てるの男自身も分かってないのだろうか。自身の身体なのに……。
コンドームは破れやすいので爪を切れ。破れやすいからと言って二枚重ねにしたら、摩擦で益々破れやすくなるのでやめろ。
肉眼で精液漏れは分からない。射精後は速やかにコンドームを縛って処理しろよと書いてある。なるほどなるほど。男性は自身の精液の居場所を把握できないという事が分かった。
安全日、危険日っていつ？という質問も……ファンタジーは捨てましょうねと思う。これも、アダルト作品の影響なのだろうか？
生理中は妊娠しないというのも間違い。生理後にすぐ排卵する場合もあるし、不正出血の可能性もある。
卵子の寿命は約1日だけど、精子は3～7日間生き延びる。というか、それだけ生き延びないと子宮から卵管を通って卵子までたどり着かないという話だったような。精子の寿命が長いのはそれだけ生き延びないと卵子に会えないから。卵子の寿命が短いのは移動しなくていいし、そもそも受精後の母体の負担の方が長くなるので卵子保存にエネルギーを使いたくないのでは？と思う。
あとは生理中のセックスはおすすめできません。と本にもあった。
感染症リスクや子宮内膜症になりやすくなる。ですよね。子宮内膜症は最近知ったけど、感染症リスクは分かる。私も生理中は風邪をひきやすいし、下手をすると生理中の風邪が生理が終わっても続くという地獄を何度か見た。なので、今は生理中は無理しない事にしている。お腹痛くないし大丈夫～と思ってたけど、お腹痛くならない代わりに風邪をひくようになった私の身体。
面白い項目があった。↓
避妊の都市伝説 ｐ51
・２回目以降の射精は精子が減っているから妊娠しない。
・炭酸飲料やビデで膣を洗い流せば妊娠しない。
・セックスの後に逆立ちすれば妊娠しない。
・セックスの後にお腹を殴れば妊娠しない。
本の解説優しいな。わざわざ『都市伝説』にしてある。これ全部アダルト作品の影響だよね。全部『嘘』なので、これを事実だと思うなと書いてある。妊娠する可能性は常にある。
ピルは体に悪い？……え。私が信じてるようなことを、今の子も信じてるの？と思ってしまった。私も親が体に合わなかったと言っていたのを聞いてたので、ピルはよくないのかなとずっと思っていた。でも薬や医療はどんどん進化してるので、今はそうでもないらしい。
付き合っていたら、セックスしてもOK?……。
性教育――――。こんな子たちの為に性教育が必要。いつまで、付き合っていたらセックスしていいだろうとか、セックスしなきゃいけないという世界なのよ。セックスしたけりゃ、同意を得る。セックスしたいと言え。そして、それは『断っていい』と知る。それがお互いに分かっていてやっと『対等な立場での同意』になる。
子どもと大人の恋愛は……ありえるわけないだろの一択。
どうしても本当に相手が好きなら、『成人まで待つ』という選択肢しかない。
レイプ被害や同性婚についても書かれていた。……幅広いと思ってしまった。
03「産まない」という選択
中絶について書かれている。
中絶は『女性の権利』であり、妊娠した本人が決める事。他人が責めるなという事が書かれてる。
私はずっと母から、『うちの姉（私の伯母）は中絶したのよ。信じられない。可哀そう』という話を聞いてきたので、中絶＝悪だと思っていてレイプされても子供は産まなきゃと思っていた。……今なら、中絶一択でもいいかもしれないと思う。出産の負荷より中絶の負荷の方が低いならそっちを選ぶ。
そして、今の子たちには誰かの思想ではなく自分の意志で決めてほしいと思う。
お金の話も出ていて、初期は10～15万、中期の中絶は出産と同じで40～60万。学生が払える額ではないと思う。中期になると一時金が出て39～42万の支給があるとはいえ、場合によっては20万の出費はあるわけで。
セックスする前にお金の話をしっかりしておくと良いし、その話が出来ない男とはセックスしないのもいいと思う。はぐらかしてくる男もね。
日本の中絶法はまだリスクが高いというのも書いてある。でもこの辺りは、徐々に変わる可能性はありそうだなと思う。亀並みの歩みだけど。
中絶すると妊娠できない体になるというデマについても書かれてた。
上記に書いた伯母もそうだけど、従姉妹たちも中絶後にも妊娠している。中絶しても妊娠はする。中絶後は心身ともにケアが必要な状態なので、ゆっくり話を聞いてあげて責めないでねという周囲の人の関わり方も書いてあるの良いなと思う。
04「産んで育てる」という選択
産んで育てる場合の話が書かれている。
学校も仕事もやめなくて大丈夫……とあるけど、学校はともかく、仕事は非正規は不利な状態になる可能性が高いと本にもある。労働についての本なので詳しくは書いてないけど、非正規も産休育休が取れるのは一部の企業だけでほとんどの企業は非正規は取れないとある。
現実はそんなもの。正社員でもブラック企業ならとれるかどうか。労働形態次第ではクビになる可能性もある。
でも、この本は１０代つまり学生に向けて書かれているのでお仕事の話はさらっとなってる。学校ならやめなくていいからねと力説してあるので、学校はまず大丈夫と思う。
支援金の話や認知の話、産後ウツの話まで、子育てを一人でしないで誰かに助けを求める方法が書かれていた。
05「産んでたくす」という選択
特別養子縁組、里親、乳児院などいろんな選択肢がある話。
いろんな選択肢の中から、選んでいい。
知ってる事も知らない事もたくさん書いてある。特に妊娠に関する誤解は……突っ込みどころ多すぎるけど、アダルト作品はそうだしそう思った気持ちはわかる。
そして、大人もその誤解をしてる人間が多い。
愛してるなら付き合ってるなら、セックスする……というのが、そのいい例だと思うので、まずはそこから間違ってると知って、『性的同意』を得てねと思う。
10代でなくても、読むと良い本。
基本的な妊娠、出産までのあれこれが書かれている。
『大人が学べ』に必要な本。