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「金閣寺」を読んで

2024/03/08

金閣寺 (新潮文庫)
– 2003/5/1 三島 由紀夫 (著)

金閣寺 (新潮文庫)

「金閣寺」を読み直してみた。
いつ読んだのか忘れたけど20ぐらいの時……だったかな。

当時は性的なものがちょこちょこ目立って、うーんと思ってしまった作品だった。テーマは「コンプレックス」なのだろうけど、性的な表現をどう捉えたらいいのだろうか……と思っていた。
読み直してもやっぱり性的なものは気になる。けど、テーマが深いような気がした。ただし、それを女性を使って表現するのはどうか……とは思うけど時代を考えると、そこまで気にするものではないのかもしれない。

『女と性行為をすることが男になる事』みたいなものは……時代背景を思えば、そうだなと思えるし、メインはそちらではないのでそれほど嫌悪感はない。まったくないわけではないけど。

『どんな女が吃音の者を相手にするか』で『弱者を構う事で、優越感を得たい』女性が吃音を構うとある。心理自体は男女問わずあるので『女性は』と付けるのはどうかと思う。
しかし、『女性は全て女神』と思っているわけではない事が分かるだけでも、マシだと思ってしまう。
某作品はここで『理想の女像』を作り上げて、ただ単に『性的に奔放』と思わせる書き方をしているのが気持ち悪かったんだな……と思い出す。

女にある意味での理想を押し付けつつも、しっかりと『男性を軽蔑する女性の姿』もあるのが良いなと思った。
昔よりも性的なものに耐性がついたというのもあるし、作品を拾えるだけの知識も得たから読み方が変わったのかもしれない。あとは、酷い作品を数作読んだので、『下限』が下がってしまったせいもあるかもしれない。


コンプレックスと恥と悪意と、理想。これらがいい感じに組み合わさっていて、読んでいて……疲れる。
哲学を追求したい人にはいいのかもしれないけど、私は単に物語を楽しみたいだけの人なので疲れる。時代のズレと言葉のズレを脳内変換して、哲学的な文章を安易な言葉で砕きながら読む。難しい文章をそのまま呑み込めるほど、私の頭は賢くはない。


『金閣寺』は簡単に言えば、世の中全部腐ってるけど、金閣寺だけは不変だから燃やしても、『美しいままの金閣は残る』という思想で燃やしたという話。←端折りすぎ。

女性と金閣寺が重なるのは面白いなと思った。いや。笑うところではないのかもしれないけど、冷静に考えると笑ってしまう。セックスしようとするたびに、女性と金閣寺が重なって、萎える←萎えるとは作品内では書いてない。「出来なかった」とある。
さらにそれを見て女性が主人公を侮蔑の目で見るのは、『男性らしさから外れた人間への侮蔑』だろうし、今でもそれは多々ある気がする。『男性らしさ』だけではなく『女性らしさ』も。

たしか、某作家の作品にも、できなかったというシーンがあったけど、その作品は女性が出来なかった男性を慰めてた。それは『理想の女性像』がそうだからなのかもしれない。


登場人物たちのエピソード全てがちゃんと主人公に響いていて、『金閣寺を燃やす』という目的にかなっている。

住職になれという母親。
光しか知らないように見えた友人『鶴川』の自殺疑惑
闇をより濃くする友人『柏木』
女を買っていた『老師』

軍人の子供を死産して、軍人も死んでしまった『生花の師匠』
この師匠さんは軍人さんが戦争に行く前にお乳を搾って飲ませていたのを主人公が目撃している。
このシーンも性的なものがある。でも、ある意味神聖な感じすらするので好き。こういう文章が読みたい。ただ、『女性への神聖さ』が極まっているのがこのシーンな気もするので、モヤモヤする部分もある。


最後はワクワクしながら読んでしまった。哲学的な文章も多くて読みづらいのだけど、それでもワクワクする。昔読んだけど、細部はすっかり忘れてるし、最後もすっかり忘れていた。

持ち物全て燃やそうと全部金閣寺に運び込んだのに、自分は最後の最後で逃げ出すのも、人間らしくて好き。

最後まで『人間』臭さが染みわたっていていいなと思えた。

キャラクターはテンプレートに当てはめるのではなくて、『人間らしいワンエピソードに込める』ようにした方がいいのかもしれない。マッチを一生懸命消していた学生さんとか……完全に脇役なのに、そのシーンがあるだけでどんな人物かが想像できてしまうのすごい。



とにかく、面白かったけど疲れたので……また読みたいとは思わない。けど、類似のもう少し軽い物語があったら読んでみたいとは思う。
ごちそうさまでした。本棚に本を仕舞うのです。

『金閣寺』