ふしぎな図書館 (講談社文庫)
– 2008/1/16 村上 春樹 (著), 佐々木 マキ (著)
「ふしぎな図書館 著:村上春樹 絵:佐々木マキ」を読んでみた。
村上春樹作品を再び。
ウンザリしているのだけど、何か『マシ』なものはないのだろうかと思って借りた。
これは借りる予定ではなくて、他の本を借りたついでに児童書のような可愛らしいイラストに引かれて手に取ってしまった。
図書館で調べものをしようとしたら、食べられそうになって図書館から逃げ出した……という話。
何とも陳腐な説明になってしまった。けど、ざっくり説明するならそんな話。
そこに村上春樹らしい『夢』が絡まっている。
村上春樹作品にはウンザリしているが、『夢』がキーワードのようだなという事は理解した。『現実とも空想ともつかない世界のはざま』が村上春樹作品には必ずと言っていいほど差し込まれる。それは『夢』だと書かれている事もあれば、現実のように書かれながら読者に理解を任せるように書かれている事もある。
ともかく、物語の全てを『現実』と思って読むと意味が分からない点が多い。しかし、『夢』だと思って読むと何があろうとアリで物語ががっちりとはまる。
そしてこの『夢』には説明はいらない。作者がそう書きたいから書いた……という理屈しか、そこにはない。もしくは『読者に理解できない作者の世界』で閉じているので、理解しようがない。
この点が理解できるのは村上春樹と同じ空想を持つ人たちぐらいなのだろうか? 『夢』という事までは分かるが、それを面白いと思える感性も、理解できる空想も残念ながら私は持ち合わせていない。
それでも、『夢』でありながらこの「ふしぎな図書館」は面白いと思えた。というのも、わかりやすいストーリーと魅力的なキャラクターと冒険にがっちりと心を掴まれたから。
ただ、ラストはやはり村上春樹らしく世界が閉じてしまっている。理解できた!と思った喜びもつかの間、やはり子供向けではなくて大人向けなのだなと思った。
子供らしく考えるなら『寂しい』という主人公に共感したらいいだけなのだが、私は冒険とラストの『母親の死』が上手く結びつかずなぜ『母親は死ななければならないのか』を考えてしまった。それがまだ、『図書館の続き』なのか、『逃げた罰』なのか、そもそも『母親の死が夢』なのか。
さらに考えるなら、『母親の死』が先でそれを忘れて図書館で迷って出てきたが、やはり『母親は死んでいた』という事なのか。つまり、物語全てが『夢』という可能性もありえるわけで。
村上春樹作品が合わない理由は、性表現が強いと言う事もあるが、『何が夢で、何が現実なのかはっきりしない』ため私の妄想が広がりすぎるのもあるのかもしれない。ある程度、はっきりした『枠』の中に納まっている方がいい。
この作品に性表現はないですがグロテスクな表現はあるので、子供向けではない気がするのです。読むときは注意。