「ねむり」を読んでみた。
これもバースデイ・ガールと同じく2度目。内容も覚えてなかった。前回の感想はこちら
ネタバレ
眠れなくなった女性の話。最初は性別もよく分からなかった。
眠れなくなったのは二度めで、一度目は学生の時で昼間は膜が張ったようにぼんやりとしていた。しかし、二度めの今は昼間も意識がしっかりして、日常を送っている。そして、眠る事が出来ない夜の時間はブランデーを飲んで本を読む。
周囲の人々は誰一人として、不眠な生活を送っている事に気が付かない。家族への不満について考え、死について考え、様々な思考が彼女の頭をよぎっていく。最後は公園に車を止めてぼんやりしていると、何者かが車を揺する。そこで物語は終わる。
最後の『何かが間違っている』というのは、眠れないと思っていたこと自体が間違いで全て鮮明な夢なのではないかと思ってしまう。
その方が辻褄があう。『車が揺すられている』のではなくて、眠っている身体が揺すられてそんな夢を見ている。
そして昼間の事については『ただの繰り返しだ』と書かれている。『義務として買い物をし、セックスをした』
昼間はつまらないものが沢山繰り返されていて、夜中の読書が唯一の楽しみになっている。
唯一、昼間のプールはしっかりと泳ぎ切っていた。『何かを追い出してしまいたいかのように』
これはたぶん、昼間(主に家族の事)にかなり不満が溜まっていたという事なのではと思う。
だから、主人公は『主婦』だし、何も考えずに行える家事となっているのではないのだろうか。(……この時点で女性蔑視のような気がするが、深く考えるのは止めておく。)
彼女は現実を忘れたくて、『現実のような夢』を見続けた。どこからが現実でどこからが夢かわからなくなるほどには。
という話のような気がする。
主婦だから暇だろ……と言うような意味なのかと邪推さえしなければ、『現実のような夢』や『夢と現実の区別がつかない』という曖昧な空気感は好き。
ただ、この物語が印象に残るかと言われたら、残らない。おそらくまた、忘れる。
ねむり ハードカバー – 2010/11/30村上 春樹 (著), カット・メンシック (イラスト)