南ヴェトナム戦争従軍記 (ちくま文庫)
– 1990/2/1 岡村 昭彦 (著)
「南ヴェトナム戦争従軍記」 著:岡村昭彦 を読んでみた。
家にあった本はもっと古かったけど、それは見当たらなかったのでこのリンクで。
ベトナム戦争に従軍した事が書かれている……と思って読んだのだが、まずベトナム戦争の概要が全く見えない。失敗したかもしれないと思ってしまった。私の中のベトナム戦争はアメリカとロシアの代理戦争という程度しか知識がなく、何がどうなっていたのかの知識が一切ないので、説明もなしにいきなりクーデターが起こったり、弾圧が起こったりしていても何が何か理解が出来ない。
というわけで、概要をざっとでも頭に入ってないと、なぜこうなっているのかが分からない。
とにかく、『アメリカ軍に従軍したカメラマン』という事はわかるが、何故アメリカが闘っていて何がアメリカにとっての敵なのかが一切分からないまま戦争の真っただ中のカメラマンに付き合わされる。
エピソードとしてはそこまで破綻してないので読めるが、それも次のエピソードになるといきなり話が飛んでいて、何がどうしてこうなってるのかが、分からず置いてきぼりにされる。
最初は恋人とのノロケ話が多いので、おいおい……と思ってしまう。
それでも、戦争の残酷さというものは伝わってくる。
唐突に人が殺される。死が身近にある恐怖。
拷問され凌辱される女性たちの怒りと虚しさ。
唐突に子供を亡くす親の悲しみ。
人々の生活と政治の弾圧が書かれている。
そして、優しいと思っていた人たちが戦争の真っただ中の頃される恐怖でただの農民すらゲリラに見え、「殺そう」としてしまう。または、拷問して情報を得ようとする残酷さ。
人間性を破壊してしまうのが戦争なのだ……と書かれていたが、まさしくそれが書かれている。
この本、ウクライナの戦争前に選んで読もうとしていたところで、戦争が起きた。読みにくかったのと、図書館の本を優先して読んでいたので、時間がかかった。
けれど、ウクライナのニュースと重なる部分が多く書かれていて、この本に書かれている事の大半があの画面の向こうで行われているのかもしれないと思うと欝々とした気分にもなった。
戦争で失うのは命ではなくて、『人間性』
誰もが自由な発言を許され、誰も殺す必要も傷つける必要もなく、誰にも殺される恐怖がない平和が全て消え去る。
韓国の話も書かれていたけれども、唐突にエピソードが割り込んでくるので最初はよく分からなかった。たぶん、『取材した事を順番に書いた結果』なのかな……としか。所々説明不足なのが困る。
白黒の写真と合わせて取材の様子が雑に書かれているのは、カメラマンだから文章を書く人ではないという事なのかなと思う。それでも、読んでみて良かったと思えた。リアルな戦争の断片が分かる。
そうは言っても平和な現代日本にいる私にはうっすらとしか分からないのかもしれないケド、戦争だけは経験して理解するよりも想像で理解したい。
現実味がなくても、『戦争は嫌だ』と平和な世界で言いたい。