10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」
単行本 – 2020/8/19 森山至貴 (著)
「あなたを閉じ込める「ずるい言葉」 著:森山至貴」を読んでみた。
まず『視点があちこちに散りすぎている』ような気がする。
『発言した人』も『言われて傷ついた人』もどちらも守ろうとして、話が散らかっている。
さらに『わかりやすく』頑張った結果なのかもしれないけど、「同じことを繰り返し過ぎていて意味が分からない」部分がある。その文章、もうちょっと簡潔に出来たのでは?と思ってしまう。
私も人の事言えないくらい『同じことを書いてるよ』というブログだけど。でも、ブログと書籍は違うので、スマートな表現の方が『伝わる』ような気がした。
最後に、これ『ずるい言葉』ではなくて、『ずるい本』のような気がする。ずるい言葉ごとに関連用語があるけど、それは何が関連してた?という用語もある。でも、もしかしてこちらがメインでLGBTについての話をしたいだけなのだろうかと思ってしまった。それならそれで、会話文に入れるぐらいはしたらいいのに……と思う。
この本、『わからなかった』という感想を見かけて、「どんな本」なのか気になって読んでみたけど、『わからない』という感想も正しいなと思う。
LGBTに興味があったり、社会問題に興味がある人じゃないと、出会いそうにない言葉も結構ある。【自分は普通】と思ってる人はこの言葉に出会わないので、「わからない」のはわかる。
逆に言えば、【人と違う】事に傷ついてる人はどこかでこれと似た言葉にたくさん出会っているのかなと思う。
章ごとの感想。
はじめに……では、差別についても書いていくとある。中学生ぐらいから読めるようにとしてあるけど、『まちがいをまちがいと見抜く知恵を手に入れるため』とあるのが引っかかる。『それは間違っている』と安易に糾弾する事は少し引き県。
第1章 ”上から目線”がカクレた言葉
「あなたのためを思って言っている」……最初から回りくどい。めげそうになってしまった。『昔は言ってた』という言葉の解説まで混ざってるせい。この後も、『文章の前後』まで含めて検討する回がいくつかあるけど、メインの文章にだけ絞ってほしいと思ってしまった。
あと「あなたのため」については、わざわざ言葉にしない無言の圧というものもある。特に親は子供のためという無言の圧をかけやすい立場にいる。「わかるでしょ(親の子どもを思う気持ちが)」にすり替えられることもあるなと思って読んでしまった。
『弱い立場に置かれた人たちが、道徳的に正しくない「汚い言葉」「手荒な方法」を使うことで世の中を良くしてきた』というような文章が22頁にあるけど、これ……確かにそういうこともあったけど、暴力を使うと『あいつらは正しくない集団だ』と認識されてしまうので不利。現代では『如何に非暴力で多くの人を取り込みながら、社会を変えるか』という運動にシフトしてるので、中学生向けで「道徳的に正しくない方法」でも大丈夫みたいな雑なことは言わない方が良いと思う。まして、教師と生徒という立場なら、下手をすると進学に響くのでやめた方が良い。
教師が「そんな言い方じゃダメ」だといってきたら、「どんな言葉だったら、先生に響きますか?」ってそのまま丸投げしたらいいと思うんだけどな。子どもだから『丸投げ』は出来ると思う。「髪の色と勉強の関係について千文字以内で説明お願いします」みたいな事、言ってみたかったな。(いや。子どもにはこれ、難しい。親なら言えそう)
生徒同士の話なら、「どんな言葉で先生を説得できるか、一緒に考えてくれる?」で。
私はこういう『お互いに心地よい会話にするには』みたいな本だと思ってた。「この本を見せて」とか皮肉で返す……みたいな話になってるのも、『わかり辛い』理由の一つ。中には『言わないようにしよう』というまさかの『言った側へのアドバイス』になっていたりする。どこに向けて書いてる?「言われた側が、どう返すか」っていう視点じゃなかったのだろうか?と思ってしまった。
第2章 ”自分の都合”がカクレた言葉
「もっと早く言ってくれたら」……それ、言ってもしょうがないやつだよな……と思ったら、これも『言った側へのアドバイス』で終わっていて、言われた側がどう返したらいいかは書かれてなかった。
第3章 ”わかってる”がカンチガイな言葉
ああ。あるあるーと思いながら眺めた3章。「友達にいるから」って結構厄介なんだよね。悪意はない。でも、わかってない……困る。
第4章 ”決めつけ”がカンチガイな言葉
「やってみれば、そのよさがわかるよ」……これ。あれですね。あれですよね。『子どもは産んでみたらいいよ』っていうのと同じやつ。と思いながら読んだら、大人向けには「結婚」という話が入ってた。女性限定にするには紙面が足りないから結婚なのかな。
結婚はまだ二人だけの問題だけど、妊娠は子どもまで巻き込む話なので、安易に『やってみたらいい』というのは無責任すぎるんだよな。……でも、散々言われた。
第5章 ”思いこみ”がカンチガイな言葉
「自分で言うのはよくて、人に言われるのはダメって変でしょ」
小学生か……と突っ込みたいけど、こういうタイプもいたなと思い出した。小学生の時に。
小学生くらいだとこの辺りまだ曖昧な時期もある。でも、『ダメ』って言っておかないと、ずっとやり続ける面倒な人になるんだよね。
第6章 ”偏見”がカクレた言葉
「悪気はないんだから許してあげなよ」
これもどこかで聞いたな。部屋に無断侵入してきた男がいた時に、男の親が「障害者なのですみません」って謝ってたら、うちの親が私に「許してやれ」って言ってきたあれに似てる。
警察に訴える気力がなかったから『許す』になっただけで、別に許したわけじゃないんだけど。でも、親が「許してやれ」って言ってきた方が私にはいろんな意味で衝撃だった。こういう時の対処法……『言われた側がどう返すか』はこの本には書かれてない。
第7章 ”時代のせい”がカンチガイな言葉
第8章 ”差別意識”がカクレた言葉
差別に興味があると、どこかで聞いたな……という言葉が沢山出てくる7・8章。
『差別がいいと思ってるわけではないよね』と返すのがいいとあるけど、そもそも『差別なんてないでしょ。今の時代に』と言われたら終わりなんだよね。見えてない人たちは本当に見えてなくて『今の日本に差別がない』という世界にいたりするから。こうなると具体的事例を出すという面倒なことになるけど、それに対しても『それは区別』『それの何が問題?』という話になるので、わからない人と話し合う不毛に陥るよりはそっと距離を取るのが正しい気がしてしまう。
「いまはそういう時代じゃない」で、家庭科は女性だけだった時代の教師が出てきて、びっくりしてしまう。私、40代で家庭科は男女共にやってたから。私より年上になると定年まであと……20年もないベテランになるんだけど。そんな教師に生徒がこんな事を言う?ちょっと、難しいのでは?と、やけに現実的な事を考えてしまった。今は先生の年齢関係なくフランクなのかな。
この本『どう返したらいいか』を伝えたいなら、そこは貫いてほしかったけど、『返し』ではなくて『差別』について考えてほしいだけの本なので、『これは言わない方が良い』と『ズルい言葉を言う側』へのアドバイスになってるの、本当に『ズルい』と思う。
『言われてモヤッとした側』に寄り添ってくれないので、『モヤっと』は残る。
そういう本だった。
『10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』
さらにめんどくさいことに、全ての言葉に『返し』をつけたくなった。本の通りのもあるかもしれないけど、私の考えた返しもある。文章はなるべく簡単に省略。
「あなたのためを思って言っている」→「私のためなら、私の意見を尊重して」
「そんな言い方、聞き入れてもらえない」→「どんな言い方だったら、聞いてくれる?」
「どちらの側にも問題あり」→「問題解決にはどうしたらいいと思う?」
「はっきり言わない事が悪い」「もっと早く言ってくれたら」→「言わせない人たちは悪くないの?」
「傷ついていないならいい」→「傷ついているかいないかではなくて、(行動・言葉など)が問題」
「いい意味でらしくない」→「その属性がそうだとは限らない」
「知りたくないから、黙っていてくれればよかった」「そういうことはそういう人たちで」「あれもこれもダメだと、何も言えない」→関わらない方がいいので、返しはなしで。
「友達にいるからわかる」→「どんなお友達?」
「身近にいないから分からない」→「身近にいても言えないだけですね」
「一方的に批判するからわかってもらえない」→「問題点の洗い出しと、伝え方を一緒に考えてくれますね」
「やってみれば良さがわかる」「そのうち気が変わる」→「そういう事もあるかもしれませんが、今はこの選択がベストです」
「傷ついたのも良い経験」→「私(その人)の経験を勝手に良いことにしないでください」
「自分で言うのは良くて、人に言われるのはダメって変」→「自虐は他人が言うと暴力になります」
「自分がされて嫌なことを、人にしなければいいんでしょ」→「5歳の弟も同じことを言ってました。相手を見て、嫌なことはしないんだよって教えたところです」
「一々取り合っていたら、相手と同じレベルになる」→「相手が私に関わらなければ、取り合いません。やめろが伝わらないって不思議ですね」
「そこまで傷つくこと?」→「痛みの度合いは人それぞれですよね」
「偏見ないから」→「偏見がないという事は偏見がどんなものかはわかっているという事ですね」
「悪気はないから許してあげなよ」→「許されると思っているって事は、それだけで悪意ありですよね」
「心の中で思ってるだけならいい」→「だったら、絶対に外に出しちゃダメですね」
「昔はそれが普通」→「普通(大多数側の価値観)は変わっていくものですよね」
「今はそういう時代ではない」→「あなたも今の時代を生きていますよね」
「普通の人間が生きづらい」→「あなたの『普通』は昔の価値観を引きずっている人の事ですよね」
「差別なんて絶対なくならない」「差別があるという間は差別がなくならない」→「カミュの異邦人を知ってます?あれには差別とは書いてなくて、不条理と書いてあります。差別のない時代も別の言葉がそこに当てはめられてます」(説明臭い)
「これは差別ではなく、区別」→「そこで分ける理由は何ですか? その区別を公平にするにはどうしたらいいと思いますか?」
よく見たら、『関わらない方がいい人たちの発言』も混ざってた。
前後の文脈を無視して書いてるので、このままの返しが当てはまらない事もあるだろうけど。あと、二人の関係性も絡んでくるので、関係性によっては関わらないも選択肢に入る。言葉を返すのは結構、難しいよね……。
基本姿勢は『問題解決にはどうしたらいいか』ただ、こういう会話って問題があって発言されるわけではなくて、テレビやネットをみた感想でぽつりみたいな感じだと、もっと難しくなる。自分の意見を言える関係性なら言ってもいいけど、言えない関係性だと黙るしかなくなる。返すことがベストではないし、『黙って別の行動で示す』ことができるなら、そうしていいかもしれない。