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絵本「いえるよ!NO」を読んで

2024/03/08

いえるよ! NO(ノー):わたしらしく生きるための大切なことば 単行本 – 2022/1/26
ジェニー・シモンズ (著), クリスティン・ソラ (イラスト),
上田勢子 (翻訳), 堀切リエ (翻訳)

いえるよ! NO(ノー):わたしらしく生きるための大切なことば

絵本「いえるよ!NO わたしらしく生きるための大切なことば 作:ジェニー・シモンズ 絵:クリスティン・ソラ 訳:上田勢子 堀切リエ」を読んで

性的同意のお話もあるけど、『NO』についてだけ書かれている。性的な話はほぼないので、子供にも見せやすい。ほとんど、日常のお話。


『NO』はパワーある言葉で、【自分の思うように生きていく力をくれる】

お友達に誘われてもそれをしたくなかったら『NO』と言おう。
誰かの悪いうわさにも「そんな話はしたくない」と距離を置いたり、誰かを仲間はずれにしようとしていたら「そんなのいや。みんなで遊ぼう」と言おう。
こんな感じに、いじめにも具体的な言葉を提示してある。

【わたしはいえるよ、NO!
わたしの見た目やはだの色、
わたしの家族や友だちを
見下されたり、わらわれたら。

わたしはいえるよ、NO!
しっかり、はっきり、いおう!
いじめに不安、差別に不公平、
NOがいえればこわくない!】

全体がこのテーマで書かれているのだと思う。真ん中辺りのページにキャッチフレーズのように書かれていた。

自分の「嫌だ」という気持ちを、かっこ悪い、相手に悪いなんて思わないでいい。
でも、宿題や手伝い、予防注射には嫌が言えない……という事まで書いてある。
嫌は言えなくても、「なぜそれが必要なのか」という説明を求める事は出来る。そして、大人には子供に対して説明責任があるとは思う。この辺りをすっ飛ばして、『嫌と言うな』と子供を管理してしまうので、だれも『NO』が言えなくなってるような気がする。

でも「NO」には練習が必要だよとも書かれている。言い方次第で、トラブルになる事もあるので、適切な言い方を学ぶ場所が必要。

海外の絵本なので、日本には合わないかもしれない。子供が楽しんで読むというよりも大人が子どもの為に選ぶ本だろうなと思う。つまり、大人側が性的同意や「NO」の大切さに気が付いているお家の子供がこれを読む。普通のおうちの子がこれを読んだら、大人は困ってしまうわけで。
大人側に「NO」を言う文化も言われる文化もないから。大人が子どもの『NO』を受け止めないとこの本に書いてあることは成立しない。

絵本だけど、大人が読めという絵本。分かりやすく書いてあるし、大人用にも「保護者の方へ」という大人向けの文面が最後にある。

この「NO」の日本語訳が本の中では「いや」「だめ」となっていたけど、「やめろ」が適切な言葉だと思う。

「いや」「だめ」は日本のAVを見ている海外の人からすると「気持ちいい」というアダルトな言葉になるらしい。気持ち悪い事に……海外から見るとそういう意味の言葉になっている。

「NO」の日本語訳は「やめろ」一択で。

姪っ子にも時間があったのでこの本を見せて軽く説明をした。姪っ子は3歳ぐらいの時に父親に抱っこされそうになった時に「ごめんしゃい」と言って離れたので、「君はNOが言える子なんだよ」と伝えておいた。
姪っ子の「ごめんしゃい」は本当にどこで覚えたのだろうと思うくらい見事な「NO」だった。言われた父親も唖然として「あ。はい」と言って触ろうとしていた手を離した。
子供であっても、「NO」と言われたら手を離す。これを大人がまず、理解する事。

姪っ子と話した最後に、「NO」の言いかえをいろいろ話した。

やめろ
何してんだ
ふざけんな

性暴力にはこの程度の言葉は必要だし、女の子は「いや」「だめ」ではなくて「やめろ」に言えた方がいいと思っている。口が悪いと言ってる場合ではなくて、自分の領域を侵してくる相手には強い警告の言葉が必要。

というのも、私自身が「やめろ」が言えない人間で嫌な目にたくさん会ってきたから。そして、私に嫌な事をやってくる人間は小心者で強い言葉で拒否したらやめていただろうと思うから。あと、女に幻想を抱いている男も多かった気がするので、「やめろ」の一言でおそらく幻滅していたのではないかと思う。

女への幻想を抱かせないためにも「やめろ」が必要。
「何してるんだ」と問う事で、自分の姿をはっきり口に出させるというのも効果的らしい。
それでも加害行為をしている自分の姿が見えない人には「ふざけんな」の一言でとどめを。

そして、そのためにも日常の中で「断る」という事が大切なのだと思う。普段からなんでも「OK」で受け入れてると断る事が出来なくなる。……でも、日本ってその傾向が強いのではないかとは思うけど。特に女性はさらにその傾向が強くなる気が。
なんでも受け入れていると、自分が本当は何を望んでいたのかが分からなくなるので、取捨選択の為にも「断る」という選択肢は必要。


子供時代は断れない事もあるのかもしれないけど、最初から「断る」ではなくても「これの必要性が分からない」という話し合いの方法もある。……「言わなくても分かるでしょ」と言い出す大人がいるから話し合いが成り立たないというのも分かるので、子供だと難しい場合もある。うーん。

大人が読んで。大人が理解して。

そうしないと子供に伝えられない。
という事で、この絵本も大人にお勧め。

『いえるよ! NO(ノー)』