狂信―ブランチ・ダビディアンの悲劇 人はなぜ“メシア”を求めるのか
– 1993/11/1 ティム マディガン (著),Tim Madigan (原名), 浅川 寿子 (翻訳)
「狂信 [ブランチ・ダビディアン]の悲劇 著:ティム・マディガン 訳:浅川寿子」を読んでみた。
図書館で借りた本。
集団焼身自殺をしたカルトの話。オウム信者がこれを読んで目が覚めたとAmazonレビューにあるという話が気になったので、借りてみた。
ブランチ・ダビディアンという新興宗教のリーダー デビッド・コレシュ(元ヴァーノン・ハウエル)の話がメインだが、信者家族の話も差し込まれる。時系列が行ったり来たりする点がわかり辛い。
個人的に分かりやすくするために時系列で書いてみる。
※ページ数は大体その辺りに書いてある目安です。
ハウエルは教会が好きで熱心に説教を聞いていた子供(4・5歳ごろ)だった。P37
やがてギターに出会いロックを弾くようになった。13歳ごろには聖書を暗記して説教をするようになった。P43
1982年説教壇を神父から奪って説教を続けたために、破門にされた。p48
その少し前(1980)に『ブランチ・ダビディアン』のリーダーであった老婦人に出会っていたために、そちらへとハウエルは行った。
その老婦人と愛し合いリーダーの座がハウエルへと移された形になる。p60
1986年老婦人死亡、ハウエル追放。
1987年、老婦人の息子とリーダ争いをして殺人未遂の罪で裁判になったが無罪とされた。p64
1988年、大学での伝道&その他の国でも伝道をする。p69
1993年2月28日、ATFと衝突。同年4月19日集団焼身自殺。
5章は〈人民寺院〉の悲劇について書かれている。時代が少し遡り1970年代
1978年に新興宗教〈人民寺院〉の教祖ジム・ジョーンズたちと信者がジョーンズタウンにて集団自殺
【反教団運動のもう一つの標的、文鮮明の統一教会は、人民寺院とは何の関係もないと宣言した。】p99
こんな所で統一教会が出てくるとは……と思ってしまった。この宗教もかなり古いのですね。
5章は人民寺院とダビディアンが似ていると書かれている。
86~93年の間だろうと思われる事が7・8章には載っている。
信者を集めて金を搾り取り、熱心な信者を『ブランチ・ダビディアン』のあるウェーコに集めていた。
というのが、大体の概要。ハウエルはコレシュと改名。
ハウエルは音楽好きで凝った音響装置を集めた。そこにかなりのお金をかけていた。
さらに女性たちとセックスできるのはコレシュだけで、12歳の少女ともやっていると吹聴していた。母親が娘を差し出し、娘の前で母親とセックスするといった行為も行われていた。
8章……かなりきつかった。その後もチラチラとそんな話が出てくるけど、自分の妻を差し出す夫とか意味が分かんないよ!としか思えない。
「動物が怖がるとき、心臓がどんなに早く打つか知っているだろう? 初体験の女の子の心臓はいつでもそんな風だ」とコレシュは言った。p199
この『初体験の女の子』は13歳の子の話をしている。クズすぎる。
性的な話は色々きつい。さらにきついのは、性行為時に未成年で子供を産まされた信者が『選ばれてよかった』と思っているところ。マインドコントロール、完璧すぎると思ってしまった。
ダビディアンでの衛生状態もよくなく、シラミが持ち込まれ長く悩まされた信者もいると書いてある。襲撃時は排泄物もあふれていた状態だった。
信者たちに射撃訓練や、武器を携帯させて見張りもさせていた。
11章以降は終わりへのカウントダウン。
ダビディアンでの武器の収集をATFが知って、捜査が始まり、衝突へとカウントダウンされていく。だが、衝突後は籠城して一旦平穏な時間が過ぎて51日目の4月19日に再び衝突が起きて集団自殺へと繋がる。
子供達も例外なく火に焼かれ、死んでいる。一部の信者が助け出されたという事らしい。
コレシュがメディアに流した説教というものも最後の方に載っている。キリスト教に馴染みがないからなのか……訳が分からない。疑問を投げかけては、答えが無く次の話に移っている。残るのは疑問だけ。
でもこれ、文字で読んでいるから『意味が分からない』のであって、本人が語っている言葉だったら、惹かれたりするのかなとは思う。文字はワンテンポ置いて考えてしまうし、読み返せるけど、言葉(声)だけだと『何だか分かんないケド、それが正しい気がする』という感覚は私も味わった事があるので。
後記には、分かっているだけの死者の年齢や名前などが載っている。
そこに、4歳未満の子供の名前を見ると……この子たちコレシュの……と思ってしまう。もしかしたら、新しい信者の子かもしれないけど。でもやっぱり何となく思っちゃうわけで。
コレシュは妻も子供も沢山持ってたらしいけど、子供は届けを出すと不審がられると思って出してないらしい。
異教のリーダーたちが追い求めるのは自分の権力の強化、富、肉体的快楽、それだけです。p10
この一言が分かりやすかった。この本は権力・富・肉体的快楽の話がぎゅっと詰められていた。オウムも同じ構造だったのだろうな。
色んな意味で濃厚な一冊だった。