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「女の子はどう生きるか」を読んで

2024/02/27

女の子はどう生きるか: 教えて,上野先生!
– 2021/1/22 上野 千鶴子 (著)

「女の子はどう生きるか 教えて、上野先生! 著:上の千鶴子」を読んでみた。

これも「女も男も生きやすい国、スウェーデン」と同じく、中高生向け。
質問に答える形で書かれていて、読みやすい。数字が出てこないのでスウェーデンより頭に入りやすかった。

はじめの「あなたたちはどう生きるか」で本のタイトルの説明がある。
「君たちはどう生きるか」の内容が男の子へ向けたものだったので、女の子に向けたものを書いたと。なるほど……と思ってしまった。「君たちはどう生きるか」は気になっていたけど、読んでない。出てくる登場人物が男の子ばかりでいまいちピンとこなかったからだ。


1章『学校で、なぜ女子は男子の次?』
生徒会長の話が最初に出ている。……私の時は女子の生徒会長もいた。ただし、誰も立候補しない場合は男子がなった。理由は先生が男子を推薦するから。成績の良い女子より成績の良い男子を推す。断っても教師が推すので、嫌々生徒会長をやっていた男子を知っている。拒否権のない男子も可哀想だが、選択肢に入れてもらえない女子はすでに蚊帳の外にいるしかない状態。
成績で選ぶなら、男女問わず『一番の子』でいいのに。

名簿の一番は男子というのもある。……私の時は途中で混合になった。いつだったかな。中学だったろうか。最初は違和感があったけど、すぐに慣れた。男女が分かれるのは、身体測定時や体育の時ぐらいだった。今、姪っ子は保育園の時から男女混合名簿だ。時代は変わったと思っていたが、一部ではまだ男女別だと聞いて30年前か???という気持ちになる。ド田舎だと思っている自分たちがそうなのだから、『日本は混合名簿だ』という思い込みがあった。


2章『家の中でモヤモヤするのはなぜ?』
調理実習で「女の仕事なのに」という男子がいる。どうしたらいいかという質問で、家庭科が男女共修になったのは中学で1993年から……というのを初めて知った。私が中学の時はすでに男女共に家庭科と技術をやっていたので、それが当たり前かと思っていた。もう少し早く生まれていたら、男女別だったのか!という衝撃。
高校の「普通科=進学」「商業科=就職」「家政科=花嫁修業」というのを知った時も衝撃だったけど、意外と私の時代はギリギリ男女平等(には遠いけど、少しでも近づく)な教育になっていたようだ。すごい。変化を起こした大人たちありがとう。


と思ったら、「男女で進路が分けられるのは何故」という質問が。
だって、そう言う社会だから……子供の時代はまだ『マシ』で男女平等な気がしてるけど成長するほど男女差別の現実をひしひしと感じていた。高校で、すでに花嫁修業科があるのだから。私の時代は家政科から名前が変わっていた。これも平等を目指していたからかもしれない。でも、中身は変わらずほぼ『女子:男子=39:1』だったけど。今も男女比はさほど変わってない。

普通科と商業科の男女比率は半半ぐらい。でも、普通科の女子も進学先は大学ではない人が多かったような気が。さらに商業科の成績一位の男子は大学を勧められ、成績一位の女子は勧められないという現実も見た。

本の中では『女の子は馬鹿の方が可愛いとされているから』と書かれている。そうではあるが、今の時代、そこまででもないような。あと、『結婚したら勉強なんて意味がない』と思われているのも分かる。私は進学したけど、『学費にお金を使ったから結婚資金は援助しない』と親から言われた。女の子は結婚資金分しかないけど、男の子はちゃんと両方用意されてるのを知っている。別にいいんだけど、露骨すぎてさすがにショックだった。

翼はバサバサと折られまくっていく。その折れた翼で頑張って飛び上がろうとするガッツのある女性しか、上に行けないんだよね。そんな余力、私にはなかった。


『パートナーの呼び名・女が付く言葉』と、言葉についても書かれていた。
連れ合いって面倒な呼び方で、これ、男同士だと仲のいい友達でも使っている。……どういう意味で使ってるのかを察するのが大変。パートナーは悪くないのだろうけど、他人が言うには違う。ちょうどいい言葉がないと本にも書いてあった。
『御連れ合い様』『伴侶様』etc。言い方は多々あっても、しっくりくるものがない。


「扶養」についても書かれている。私も、これには疑問しかない。結婚しない理由は多々あるケド、結婚したら扶養に入らないといけないのかと思うとゾッとしたのを覚えている。今はもう、結婚なんてしないからいいやと思ってるけど、若い頃は『結婚した場合』のあれこれを考えてはゾッとする感じしか持てなかった。

妹が平気で「扶養の範囲でないと働けないから」というのを聞いて、この子はそれに違和感を持たないんだなと思った。

何で一人前の大人が、他人の大人の庇護下に入らないといけないわけ?とずっと思っていた。働けるかどうかはさておき、『結婚したから、所得を抑えよう』というのは気持ち悪い。でも、企業側も扶養を当てにして主婦を優先的に雇うんだよな。若い独身女がパートをしようと思うと、それはそれで大変で無理だった。時短低賃金は主婦の仕事とくっきり分かれている。仕事と家庭での役割がある程度セットで考えられているのも問題だと思う。

労働市場の裏側が透けて見える『扶養』の制度の話が書かれていた。


離婚後の養育費……の話。
スウェーデンで子育てしている母親が息子に「彼女が安全日と言っても、信用しちゃダメよ」と伝えているとあった。スウェーデンでは養育費は国が徴収して子供がいる親へと渡す仕組みなので、養育費支払いを逃れる術がないから。
『一回ののぞまない妊娠で、18年間重荷を背負わなくてはならない、となれば、一回一回のセックスに慎重になりますね』と素敵な言葉が添えられている。

日本は逃げ得男が沢山いる甘い国。


親の介護は娘がすると思っている母親の話。
うちの親がまさしくそれで、実家に戻ってきた途端に運転をさせようとした。ずっとペーパーの私がまともな運転が出来るわけもなく事故りそうになった私の運転の助手席で顔をこわばらせてダメだと諦めてくれた。
運転したくないから都会に出ていたんだよ。人を遠慮なく殺していいなら運転してもいいけど、ダメと言うルールになってるので私は運転に向かない。
私は親の介護をする気はない。施設に放り込めるならそうしたいけど、日本の制度は『家で面倒見ろ』という素敵制度になってるので、無理だろうな。本には、いろんな制度を活用してほどほどに面倒を見ましょうとなってるけど……それが無理だろうなという事は祖母を見ていると分かる。制度がどんどん厳しくなっていて、よほどの事がないと施設に入れる事が出来ない。老人があふれていて、施設はどこもいっぱい……。

未来はそれほど明るくはない。国は金だけとっていって、国の制度を使いたい時は渋るし広報も小さい。
だから、選挙に行こうねという話なのだろうけど、選挙は身近ではない。都会と田舎の感覚はかなり違うんだよな…という感覚しかない。


3章『リア充になるってけっこうたいへん?!』

恋愛や結婚について書かれている。
彼氏が嫌と言っているのにしてくるという質問に対しては、性的同意について書かれている。「同意を得なければ、触ってはいけない」それ、私が十代に知りたかった事。
性暴力は身近な人間が性情報の無知に付け込んで行ってくる。まさしくそれ……。性教育、若い時に欲しかった。今はもう……接触禁止で、男は蹴っていいと学んだ。

『性的な関係は男女対等ではないのでは?』という質問。男は気持ちいいものと思ってるけど、女は苦痛の方が大きい。それに耐えて行うものと思っている女性が多い……みたいな事も書いてある。ただここで、困るのは『女性はみんな苦痛を感じている』というのも違うんだよなというところ。うーん。言葉って難しい。かと言って、『濡れているから感じてるだろ』と思う愚かな男には『女は苦痛』と伝えた方がわかりやすいと言うのも分かる。

【セックスは子供を作る行為だと頭に叩き込んでください】

それなんだよね。だから小説のレイティングでR15にがっつり性描写があると吐き気がする。嫌と言いながら性行為に及ぶ恋人同士シーンがR15であると……うわぁ。キモイとしか思えない。


『JKバイトをやってみてもいいのか?』という質問にはAV女優の勧誘の仕方を例に何を引き換えにお金を得ているかが書かれている。【自分に対するリスペクトを持てなくなる】という対価は高いよねという感じで、暗にやめた方がいいと勧めている。


4章『社会を変えるには?』
政治や就職でのセクハラなどについて書かれている。
『フェミ二ズムやジェンダーが目指すものは何ですか?』の質問に【弱者が強者になりたい思想ではなく、弱者が弱者のまま尊重される思想だ、とわたしは言ってきました】と書いてある。女性とか男性とか関係ないのはいいなと思う。

『女性を増やすとどんないいことがあるのですか?』という質問には、イノベーション(革新)が起きると書いてある。男女は全く違う文化や価値観を持っているから、それがぶつかる事で新しいものが生まれる。そう考えるとワクワクした。


最後に『二〇一九(平成三一)年度東京大学学部入学式祝辞』が載っている。
話題になっていた時に、たぶんネットで読んだ気がする。でも、何度読んでも素敵すぎる。大学で学ぶ意味まで書いてある。これ中高生の時に読んでいたらもっと勉強して東大目指したかったかもとすら思ってしまう。いや。無理だろうけど……環境が女に学は要らないというものだったし。


全部素敵すぎる。子供向けにはちょうどいい感じ。

『女の子はどう生きるか: 教えて,上野先生!』