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漫画「聲の形」を読んで

2024/01/22

聲の形 コミック 全7巻完結セット (週刊少年マガジンKC) コミック – 2014/12/17


聲の形を図書館で借りてみた。
……エグイと思った。


子供が残酷なのはある意味では当然というか、しょうがないというか。
何とも言えないものがあるけれど、残酷な大人は質が悪い。けど、もっとたちが悪いのはそれを当然とみなしてる現実があるわけで。そんな現実のお話しだなぁと思って読んでしまった。


ファンタジー要素はほぼ皆無。故に胸糞悪い。


1巻でお腹いっぱいの気持ち悪さを味わった。2巻からはファンタジー(幻想)要素が入ってきて、ちょっとだけ心地よくなる。


キャラクターの名前はあまり覚えてない。
いじめっ子の男の子が主人公。いじめられた女の子がヒロイン。主人公に恋する暴力女。が、ほぼメインなのかなと思う。

そこに、主人公のお友達の面白キャラに、イケメンキャラ(?)
ぶりっ子学級委員長、スタイルのいい臆病な女の子
ヒロインの妹などなどが絡まってくる。

映画だけではいまいち分からなかったキャラクターたちが、漫画では深く描かれていて判りやすかった。


特にヒロイン……ほぼ喋らない。文字や手話のコミュニケーションなので、何を考えているのかさっぱり謎なキャラだった。
それが、漫画で思ってることとが描かれていて、なるほど……そう思っていたのかと。


特に聲の形第6巻のヒロインの手紙。
『私は今まで自分の聞き取っていることに自信が持てず、自分の感じ取っていることが真実の上になりたっていることなのか 判断できませんでした(略)』


この辺りは、はっとした。
なるほど、これがヒロインの『不安』の理由だったのかと。
さらには『笑顔』の理由もその先に書いてあった。

で、ああ。私もそう思っていたのかなと思った。
聞こえていても、『普通』を求めてしまう。

「感じ取っている事」というよりも『理解し、対応する事』というのは、年齢が上がるほど難しくなってしまう。ほんのわずかな差が『あいつウザい』になる。


それが学校独特の『異常な世界』だと気が付くのは、外に居るから思う事で
その中にいる『子供』はもちろん、先生たちもほとんどが外に出ずに『学校でのみ生きる』
だから、誰も『異常』だと指摘できないんだと思う。


1巻に出てくる『担任』は結構、酷い人で
暗に「耳が聞こえないからいじめられても仕方がない」といじめっ子主人公の前で言い放つ。
主人公はそれを良い風にとらえて、『いじめていい』と解釈する。

もしここで、全く外の世界の人間が「これはおかしい」と一言言える仕組み(社会)があれば、何かが変わってたかもしれないけれど、外の世界は存在しない。
学校は学校の中で完結する。


それと同じように、子供時代のキャラ達は『自分の中で完結』してしまっている。
いじめっ子主人公も、いじめられっ子ヒロインも暴力女も、皆、自分の世界で閉じてしまっている。


高校生になって主人公がヒロインに会うことで、少しずつ世界が広がる。が、担任は閉じた世界の学校に居るので、閉じた世界の中の住人としてその後も『嫌な奴』として出てきた。


全く話が変わるが、1巻を見ながら嫌な気持ちになったのは
この担任が私の高校時代の担任と被ったからだ。
『自己責任』『何かあっても俺は知らない』『俺に迷惑をかけるな』と言い放っていた担任は、警察に捕まった。

良い思い出はない。


話を戻して、主人公はヒロインに会いに行って変わっていく。主人公の性格はとてもわかりやすい。『面白い事大好き』なのだ。けれど、そのために人を傷つけたことに気が付いて、『自己否定』に走っていく。極端だとは思うケド、それがなければ物語が進まない。


ヒロインは手紙からも判るように、最初から『自己否定』人間だ。聞こえないことの引け目。普通でない事の引け目。それに伴う他者の協力を必要とする引け目。

それらが、自己否定に繋がっている。(ところで全く別の話になるかもしれないけれど、ヒロインの高校生活がほぼ出てこない。ヒロインの学校の友達というのも出てこない。この子の学校生活って?と思いながら読んでしまった)


暴力女さんが一番よく分からなかった。
好きなら、なぜ主人公をいじめていたの?それも、積極的に。これは男の子が好きな女の子をいじめるのと同じ心理?

それに全てが『ヒロインのせい』と言ってるけど……。
それは自己肯定感に基づいたものなのか?ただの『ヒロインへの嫌悪』なのか?
口が悪いのは家庭環境に基づいたもの?だったら、結構ひどい家庭な気がするけれど、そうじゃなくて成長過程で単に個人の好みとして獲得した言葉なの?

暴力女さんに共感できる点があまりなくて、何で怒ってるのか、何が不満なのかが、よく判らなかった。
特に観覧車の中…気に入らない事を言われたから、手を出すってお子様なの?

唯一『耳が聞こえないコの世話が大変だった』みたいな部分は共感できるけど、それ以外は……え?としか思えなかった。
好きって……とりあえず、『(主人公の想いに関係なく)独占したい』という話だったのかな。


他のキャラたちはそれぞれ、良い部分、悪い部分があって考えさせられるキャラたちが多かった。



映画と違って漫画は『文字を読むもの』だから、読みやすかった。
……映画はとりあえず、『音』しか聞いてないから途中で文字(字幕)が入ってると「あれ?」と思う。
映画は動いているから手話の動きとか再現できるんだろうなぁと思う。
逆に漫画は動きを絵で停止画として再現するしかない……どう動くんだろうなこの絵と、思うものが沢山あった。




そんなわけで、まとまらない感想。

聲の形 コミック 全7巻完結セット (週刊少年マガジンKC) コミック