新世界より 文庫 全3巻完結セット
– 2011/1/14 貴志 祐介 (著)
「新世界より」を読んでみた。「悪の教典」と同じ作者。
リンクは上下巻のリンクがなかったのでセット本で。
「新世界より」はアニメを昔見たので、読んでみようかなと思った。正直、アニメのイメージがすでに消えかけていてキャラも世界観も思い出せなかった。頭に残っているのはボノボの説明シーンだけ。
ほぼ初見な気持ちで読みながら、部分的には読んで思い出したという部分もある。
でも、アニメだと音声なのでそれほど気にならなかっただろう『世界設定の用語』が、文字で読むと……何この難しい漢字と一瞬詰まった。「紙垂」「八丁標」「注連縄」
これが要所要所で出てくるので、頭をフル回転させて読み方を覚えた。それほど難しいわけではないが『紙垂―しで―』なんていうのは知っていないと覚えられそうにない言葉だなと思った。
はっちょうじめー八丁標
しめなわー注連縄
このあたりは何とかギリギリ読めるかな……。
独特の世界観だったのはアニメで知っていたけど、文字で見るとそれが漢字になる事で難易度が上がる。せめてもう少し、平仮名が欲しい。
他にも漢字が盛りだくさんで苦手な人は離脱しそう。私は苦手だけどアニメを見ていたので辛うじてしがみついた感じ。アニメを見てなかったら、めげそうだったかも。
そして、アニメは面白いと思ったのに小説はイマイチ乗れない。世界設定も物語もアニメは好みだったのに、小説だと何か違う気がした。アニメの記憶はほんのりとしか残ってないが、こんな話だったろうか?という気持ちになっていく。
小説だって、世界設定は好みだし、物語も悪くはない。しかし、キャラには違和感しかない。
この物語は、『主人公の早季』が過去を振り返る形で書いてある。……という事になっている。でも、「小説の形式で書いていく」となっているので、中身は『当時の心境のまま書き綴られている』ような事になっている。
しかし、所々で「現在の早季」が出てきて、「今はこれを知っているからこう書いてある」と注意書きが出てくる。そのせいか子供という設定なのにやたらと知識が深いし、子供らしからぬ考察が入りこむ。
なので、『今の早季の言葉』なのか『当時の言葉だったのか』がよく分からなくなる。
さらに、『仲良くなったお友達』が消えても気にしないという社会になっているが、そのせいなのか主要人物以外はキャラが薄いまま消えていく。同じグループの6人という設定のうち一人はほぼ描写もなく『誰?』と思う間もなく消えた。
残りは5人だが、男の子三人は「影が薄い」「知的」「わんぱく」というキャラ設定になっているというのが分かる。が、「影が薄い」キャラはとことん薄いので、時々出てくるたびにそう言えばいたな……という記憶しかない。さらに「知的」キャラも「わんぱく」キャラが途中で知的になってしまうので、もうどっちがどっちだか。
女の子は主人公ともう一人。その子は「女王様としての素質がある」となっていた……が、どこにそんな素質があるのだろうか?と思うほど平凡な女の子だと思う。女王様としての素質を感じるエピソードがない。
キャラの設定はおまけ程度で、それほど大きく区切られてはいない。
主人公は「優しいキャラ」になってるようなのだが、子供だからなのか差別世界だからなのかナチュラルに差別発言が飛び出す。
どちらにしても『キャラクター』に期待するのは無理な作品だった。
そんな感じなので『共感できるキャラがいない』
アニメでも薄っすら性表現があったので、性表現があるのは分かっていたがまさか「敵に捕らえられていても性行為を行おうとするシーン」があるとは思わなかった。ここで性行為に至ろうとする意味が分からない。疲れてるなら休むか、状況把握に徹した方がいいハズなのになぜわざわざそっちに行くのだろうか?
アニメがそこまできつく出来ないからというのは分かってるけど、小説の描写は思ったよりもキツかった。そしてここでも、『処女検査がある』というファンタジーが出てくる。この作品もエロファンタジーをもってくるのかと思ってしまった。
『洗脳社会』なのだから、処女検査よりも洗脳薬で聞きだす方が手っ取り早いし確実だと思うのだが、なぜ『処女膜が傷ついていないか検査する』なのだろうか。
この作品も『悪の教典』と同じく知識満載なのに、エロだけがっつりファンタジー盛り込みなのが気持ち悪い。
さらに子供同士の性描写が多すぎなのも気になる。それだけフリーなら『妊娠対策』は必須なはずなのに、ただ『禁止されている』という事しか書いてない。避妊薬は? 男女間でも手軽に性行為(手で慰める)のだから、それ以上の関係になるのもそれなりの数いそうだけど。避妊薬、その他避妊法の描写がない。なのに、性的接触推奨って気持ち悪い。
同性間だって性病のリスクはあるはずだけど、その辺りもスルーなのかな。
性に関してはとことん気持ち悪い作品。アニメで『同性間の性的接触推奨』というのは覚えていたけどまさか、ここまで酷いものだったとは。
物語に関しては、前半の冒険部分は全く覚えてなかった……という事が分かった。
おかげでハラハラしながら読む事が出来た。確かあのキャラとあのキャラとあのキャラ辺りが、消えるんじゃなかったかとおぼろげな記憶を思い出したところで、上巻最後は覚えのあるシーンが出てきた。細かい事は忘れたが、業魔の話は覚えている。
次は悪鬼だなと思って下巻を読む事にする。
確かアニメでは主要キャラがほとんど消え去ったような記憶がある。
でも、小説の最初の方に『当時の関係者何人かに当たって記憶を確かめてみた』とある。
覚という名前が出てきているので、主人公と覚が生き残るのは間違いがない。しかし、他の主要キャラ達は消えるのではなかったか。だとするなら『当時の関係者』というのはどの位置にいるのだろうか……と思った。その前に「多くの人が亡くなった」とあるのに、それでも『生き残っている関係者』はどれだけいるのだろうか。
謎ばかりの上巻だった。