青空文庫 『ドグラ・マグラ』
ドグラ・マグラを読んでみた。
青空文庫を印刷した。……文字を小さくしすぎて、目が死にかけた。
気がおかしくなる物語……ということだったが、読んでみると『入れ子』の構造が複雑に絡み合っていて、気がおかしくなりそうだった。
物語の筋を頭で整理して、時系列に並べ直して、人間関係や関係性を頭に入れて……入れ子が複雑で情報の整理が大変。
あらすじを追ってみる。
主人公は記憶をなくして目が覚める。物語は、『記憶を取り戻す』事を目的に進む。
話が進むと、主人公は『ある殺人事件の犯人』という疑惑が持ち上がる。
主人公は母親と婚約者を殺して気がふれた人物であるということがわかる。
物語は『記憶を取り戻す』という事よりも、『なぜ母と婚約者を殺したのか』に変わる。
それらは大学教授が事件について調べた書類を元に語られる。
……この辺りで、私はめげそうになった。
『書類に書いてある事件の話』が何度も繰り返される。
さらには話は「なぜ人を殺すことになったか=精神遺伝のせい」という理論が展開される。
そこから「精神遺伝はなぜ起きたか」という話へと移行する。
主人公の存在は物語の枠になりはて、物語の主題が「事件」へと移ったように感じた。
さらに、二人の教授の対決という、主人公置いてけぼりな方向に話が向かう。主人公の存在が消えかけたところで、再び主人公の視点が戻ってくる。
しかしここからまた、話が二転三転する。
『全ては夢幻なのではないか』
ここまで長々と読んできたものが、夢物語疑惑になる。
しかし、どこまでが夢でなにが現実なのかは曖昧。
最後には、『全ては再び繰り返されるのではないか』という疑惑の中で、主人公は意識を失う。
目が覚めてから、色々と議論を得て、結局
『自分は思い出せない毎日を繰り返しているのでは?』という疑問で終わり、最初と同じシーンが最後に繰り返される。
何が事実だったのかが、さっぱり分からない。
長々と物語を読んで、物語の事実は『記憶を失った主人公が目覚めて、再び気を失った』というこれだけである。
主人公の記憶と言われているものは、どこからどこまでが事実なのかが分からない。
疑惑だけが沢山膨らんで、『おそらく、事実であろう』事は多々として提示されるが、全て『事実である』という確証は示されない。さらにそこに、推測と物語独自の理論が絡んで、何を差し出されているのか……何を読んでいるのか分からない。
長々と読んで、情報を頭で整理しながら読んでいたのに、最後の最後にはひっくり返される。まだ単純に『すべて夢でした』と言われた方が分かりやすいが、これは『夢でした』とは示さない。
『事実かもしれないし、事実ではないかもしれない』
曖昧模糊としたひっくり返しで、『すべて事実として読んでもいい』が『全ては嘘かもしれない』どちらでも読めてしまうというのがまた、嫌らしいなと思った。
気がおかしくなる物語……というのはある意味では頷けるが、その前に大半の読者は、物語を追えなくて脱落しそうだなとも思った。
かくいう私も、途中を流し読みした脱落者。
中国の物語の部分、言葉が硬くて意味が分からなくて読むのを諦めた。その後の説明部分で物語の概要を読み取った。
再び読みたいかと言われたら、もう、ごちそうさまです。と言いたい物語。そっと、本棚の片隅に仕舞い込みたい本。