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「つけびの村」を読んで

2024/02/20

つけびの村  噂が5人を殺したのか? 単行本
– 2019/9/25 高橋ユキ(タカハシユキ) (著)

図書館で借りた「つけびの村 噂が5人を殺したのか?」を読んでみた。

中身は事件のルポだけど、読みすすめるごとに『何の事件だった?』と忘れそうになる。
限界集落で起きた殺人事件。


興味があって、事件当時はネットで調べられるだけ調べたので、覚えている。

「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」

この言葉も覚えている。結局その後は調べることもなく、何が事実だったのか分からず仕舞いだった。


本も出たのは知っていたけれども、図書館の本はずっと貸し出し中。コロナに突入しても貸し出し中のマークが消えてなかった。
最近やっと、図書館に行って借りる事が出来た。



で、読めば読むだけ事件の真相は……闇の中だった。
うわさの不気味さは、身近にもあるのでよく分かるが、『うわさ』の不気味さだけで本が構成されているように感じてしまった。

表で仲良くしている子が、裏では悪口を言う……というのはよくある事だけれども、村人の誰もが『裏の顔』を持っているように感じる。
けど、「よそ者」であるライターにどこまでその顔を見せたのかは謎である。

表に出てくるのは結局、綺麗な『裏に見せかけた表』なのかもしれない。
いろいろな『うわさ話』が書かれているが、事実確認は無理だし、結局『うわさ』としか書きようがない。


ラストに事件の真相として村人が話すのは、『氏神様の祟り』という……田舎ならばありそうな話に着地する。引っ張るので、何だろうとワクワクしてしまったが、著者の『拍子抜けした』という感想と同じく、私も拍子抜けした。

これが小説ならば、それを信じ切っている村人たちがさらに『よからぬうわさ』に火をつける…なんて事になりそうだが、事件ルポでこれは、拍子抜け以外の感想は持てない。
ここで著者は、『神社(氏神)に関する事を調べる』という方向に舵を切っているが、そこで判るのは『地方の祭り事は衰退している』という事である。
書かれなくても知っている。ただでさえ衰退している地方の祭りは、いつ消えてもおかしくはない。


これは、『地方のあれこれ』について書いたことだったろうか?と、読みながら思ってしまった。地方の今を知るには最良の本かもしれない。限界集落ではなくても、程度の差はあれ、こんなものだと思って間違いはないと思う。


最後は判決について、書いてあった。
妄想性障害は認められず、死刑求刑。


それを読みながら、全く別の事件の判決を思い出した。
警察官から銃を奪ったという事件。警察官と警備員の二人がなくなって、犯人も撃たれて体が不自由になっている。
発達障害の影響があるという点は認められたが、減刑には値しないとして無期が言い渡された。(この事件は控訴されているのでまだ、決定していない)

本の最後に書いてあったのは
『”有名事件”であるか否か、ということと、被害者の人数が、判断に大きく作用しているのでは?と思われされる判決が多々、見受けられる』
ということ。いくつかの事件を上げて、有名事件で無罪判決が下る事はほぼない。とまとめてあった。


大きく報道されるかどうかで、判決が決まる。遺族の意向ではなくて、世間の意向が判決を決めている。事実かどうかはさておき、人間はそんなものと思えば
『限界集落のうわさ』も、どこまでが「うわさ」なのかと首を傾げる。


最後は犯人の妄想性障害は進み、現実の認識が出来ていないとなっていた。
人を殺した罪悪感で精神に異常をきたしたのならば、まだしも、最初からそうだったのでは救いがない。でも、どこまでが妄想かは、誰にも分からない。


最後まで、誰にも事実も真実も分からない。


でも、『事件』の真相は意外とそんなものなのかもしれない……
あるのは『人を殺した(人が死んだ)』という事実だけ。

『つけびの村  噂が5人を殺したのか?』