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「海の短編集」を読んで

2024/02/20

海の短篇集 (角川文庫) 文庫 – 1997/2/1原田 宗典 (著)


海の短編集を読んでみた。
12個の短編。短いので、サクサク読める。
ほとんどが日本ではないどこかの話なので、すごく不思議な感覚になる。


日本ではないけど、主人公は日本人なので周囲の言葉は「片言の日本語」だったり、「全く分からない言葉」だったりする。
広がっている世界は日本にいたらおそらく体験することはないだろう世界だけれども、「地球のどこかにはある」という世界。
それでいて、お話しは完全に非現実で、幻想的なネタが詰め込まれている。


一番気になったのは、「黒魔術」と言う話。
お店の人が「高い」と言って示した値段に「買えない」と答えたはずなのに、呼び止められもせず、放置されて苛立った主人公が、値引き交渉をして買おうとする。
結局元の値段に近くなったところで、ホテルに付いた時間に戻る。

「誰かの妬みをかうようなことは止めておけと言ったろう?」

とタクシーの運転手の言葉を残して、主人公はパスポートもカバンもない状態でホテル前に放置される。


放置されて苛立ったのは、たぶん「俺は日本人で金を持っている」というプライドだったんじゃないかな。
と思うとこれって、なんかすごく皮肉めいた話だなと思った。


でも、一番好きなのは「美しすぎる風景」という話。
行くなと言われたのに、「美しい風景」という噂の真偽を知りたくて、行ってしまう。
そして、美しい風景の中に飛び込んでいく。と言う話。
ある意味オカルトだけれども、私が好きなのはこーいう話だなと思う。


他にもいろいろと、面白かったり綺麗だったり、不思議な話満載で、短いけれども、満足なのでした。


『海の短篇集』